見出し画像

アルタスギャラリー グループ展 鑑賞

本日よりグループ展が開催されているアルタスギャラリーにお邪魔した。展示会の初日に来れたのは最近では珍しい。
展示会の名前は失礼だがここでは省略させていただく。最後、ギャラリーの住所等と共に書くのでそれで勘弁していただきたい。
長いのです。タイトルが。申し訳ない。
今回は三人展である。
順に感想を書かせていただく。
まずギャラリーに入って真ん中に屹立しているのは山羊のような生き物である。黒田恵枝さんの作品である。黒田さんは前回こちらで行われた「妖展」にも参加されていた。ぬいぐるみのような継ぎの当たった体のこの世ならざるような生物を立体で作られる。ぬいぐるみのようであるがぎゅっと綿が詰め込まれているために密度は凄い。今回の真ん中に屹立している山羊も空間の真ん中にあるためにまるでギャラリーを牛耳っているかのような印象を受けた。何やら踊っているようなポーズで飄々としているように見えて表情はなんとも形容し難い。笑っているのか怒っているのか判然としない。そしてその色々な布をあてがった体を目を奪われがちだが、動物特有の脚でバランスよく立っているのが見事であるのに注目してもらいたい。作品自体のバランスもさることながら、ポーズ自体もしっかり重心を見て取れるので安心感がある。そしてその背後の壁にネズミが這っている。当然これも作品である。ネズミは3匹おり、それぞれがマスクをしている。まるでこのご時世に何かを言おうとしているようだ。
その3匹の中で私が気に入ったのが白鼠だ。赤い目をしていていかにも実験用マウスである。そんな実験に使われる哀れなマウスがマスクをしている。これはなんの因果かと思う。ユーモアを感じた。
そしてそんな3匹のネズミの上部には蜘蛛のような足を持つ動物。これは「妖展」でも展示されていた作品である。マスクをしたネズミの上部に展示され、また違う意味を与えられたようだ。
そしてギャラリーの奥にはキラキラと銀色の作品が並ぶ。内藤清加さんの日本画である。キラキラとした銀色は雲母だろうか。実際に見ると描画部分が立体的に盛り上がっている。何かを使っているのかとも思ったら、運良くご挨拶できた作家ご本人によると岩絵具の塗り重ねによる盛り上がりだという。細かい描写で盛り上がっていて、例えると和菓子の落雁のようである。個人的に犬の絵に心惹かれた。口を開いている作品と閉じている作品の対。
一眼見てから好きになりました。
作品の前で笑顔になりました。
内藤さんによると神社の狛犬から着想を得たという。狛犬は護る犬だが、この作品の犬は守ってあげたくなる犬だ。
奥から横の壁にかけてL字に内藤さんの作品は展示されている。先程の黒田さんの山羊の作品が空間の主とすると内藤さんの作品は窓に見える。窓の外が銀色に輝く世界だ。外の世界も不思議空間が広がっていると思うとワクワクする。
そして最後は齋藤聖菜さんの作品だ。アクリルで描かれた作品に廃材で作られた額が嵌められている。
額とは本来作品の良さを引き立てる役割のものであると思う。しかし齋藤さんの作品においてその説明は当てはまらない。額も含めて作品だからだ。
「そんなに言い切らんでも」と思われるかもしれないが、そう思わずにはいられない部分が多くある。
まず廃材を使った自作であると言うこと。さらに作品の背景などの色を額にはみ出させて塗っていること。これは明らかに意図的であるのだが、計算を感じないのでいやらしさを感じない。
そして私が凄いと思ったのは作品の厚さに合わせて額の厚さを調整して厚みを一緒にしていることだ。そのおかげで一体感がある。額と作品が別物ではないのだ。
作品自体はしっかり描いてる部分と曖昧に留めている部分とのバランスが絶妙である。一見イラストとも取れる画風ではあるけれども作品全体から醸す雰囲気は美術に近いと思う。それも額による仕事が大きいのではないか。
そしてその三名の一見バラバラの作風がアルタスギャラリーという空間の中で見事に一つにまとまっている。
このまとまりが素敵な空気を作り出している。程よい居心地の良さと緊張感をもたらしている。
初日に来て良かった。
こうして皆さんに私の感想を伝えることができ、尚且つ私はまた見に行けるのだ。
一回見た後にもう一度見るとまた発見があるのだ。
できる限り初日に行く。美術鑑賞家はそれに限る。

"They where made up handreds and hundreds of pure, shining crystals, like fragments of spun sugar."

2021.9.13〜9.26
11:19〜19:00
月、火曜日休み
観覧無料

Artas Gallery
博多区店屋町4-8蝶和ビル205

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?