No.019『スポーツもの』について
○初めに
前回のカテゴリー調査で【恋愛もの】について語った時、【スポーツもの】にも触れていたので、今回は【スポーツもの】についての記事を書こうと考えている。
【スポーツもの】
主に「スポーツ」を題材にした作品のこと。
「スポーツ漫画」や「スポ根(スポーツ根性もの)」、スポーツにまつわる「部活もの」や「青春もの」も全て含めて【スポーツもの】と呼ぶカテゴリーに属する。
1)『スポーツ』の意味
2)作品の特徴
3)問題点
1)『スポーツ』の意味
当たり前の単語の意味なのだが、ここでちゃんと改めて理解して整理することは重要なことである。
『スポーツ』(競技/運動)
意味:運動競技のこと。人が考えたルールに沿って行う、
肉体を使った競技。
楽しみを求めたり、勝敗を競ったりする目的で行われる
身体運動の総称。
陸上競技・水上競技・球技・格闘技などのフィジカルな
競技がイメージされることが多い。それぞれの競技は、
特有の技術や施設、用具、ルール、マナーなどを必要と
する。
*「スポーツ」の種類*
『野球』『サッカー』『テニス』『バスケットボール』『ゴルフ』『柔道』『空手』『水泳』『体操』『サーフィン』『スケートボード』『バレーボール』『アーチェリー』『和弓』『射撃』
『自転車競技』『ボクシング』『テコンドー』『陸上競技』『レスリング』『卓球』『ダンス』『ホッケー』『トライアスロン』『フェンシング』『バトミントン』『ラグビー』『バレー』
『馬術』『カヌー』『ハンドボール』『スキー』『スノーボード』『フィギュアスケート』『ボブスレー』『アイスホッケー』『カーリング』『スピードスケート』『ホッケー』『水球』『相撲』
など
2)作品の特徴
1:競技の数だけ作品がある
「スポーツもの」の一番の特徴は、競技の数だけ、作品を作ることができることである。
野球にサッカー、テニスと言ったように、一つの競技で1作品作ることができると考えるだけでも、50種類以上の作品を作ることができる。
また、男性と女性と言う分類をするだけで、その数は増える。
このように「スポーツもの」は、競技の数だけ作品を作ることができる強みを持っている。
2:作りやすさ
「スポーツもの」は、物語の構成が完成しており、比較的に作りやすい作品である。
物語理論のプロット構成と各競技のプロとアマ(高校生以下)の大会についての情報を調べることで、その競技を始めて、大会に出場して、優勝することを目指す。と言ったような内容で物語を描くことができる。
つまり、始まりから終わりまでの流れが完成していることが特徴なのである。
主人公が、題材としているスポーツ/競技を始めると、その競技に対して、試合や強豪校などの一連の流れが作中のネタとして調べれば簡単に入手できる。
あとは、実名を避けて、名前を多少変えることで使用ができる。
また、大きく別れるのが、プロかアマチュア(高校生以下)と言う括りである。
大半の「スポーツもの」の作品は、日本の学校の部活動(運動部)を描いた学生たちの青春作品として、ただ単にスポーツに邁進するだけではなく、学生としての生活や、恋愛、友情、葛藤、成長などを描くことが多い。
主な読者層が子どもや20代前半ぐらいまでの若い世代のため、アマチュア(高校生以下)を対象にした内容になっている。
物語開始時は学生であっても、主人公が成長しプロになるまでを描いた作品も多いが、基本的に、最後はプロになって終わる作品が多い。
主人公が「プロ」の世界で活躍する内容は、基本的に、専門知識が求められる。また、プロならではの内容が深い作品になる傾向が高い。
主に、オリンピックや世界大会に出場する内容になる。
例えば、「野球」の場合、主人公の年齢によって、2つのパターンに大きく分かれる。
a)高校生(甲子園)
b)プロ選手
a)において、学生時代の青春ものや部活動系において、
一番作りやすく、作品数が多い。
b)は、専門知識が求められるが、多少調べれば手に入る内容の
ためこちらも作りやすい分類になり、王道になるだろう。
物語のプロットとしては、
起:学校の部活動で、題材としたスポーツの部活に入部する。
承:多くの練習と部員とのトラブル、練習試合を通じて成長する。
転:大会に出場。
結:優勝する。もしくは、敗退する。
と言う結末が基本である。
この基本構成に対して、大半の作品に違いがなく、それぞれの作品に個性や違いを生み出すため要素は【題材】になるスポーツ/競技が大きく関わり、違いが生まれる。
「野球」や「サッカー」、「テニス」などの競技によって作中の登場人物の外見やその競技に対する姿勢や価値観などに違いがあり、その違いが作品の個性や面白さ、独自性を生み出すことができる。
しかし、弱点として、一度扱われた競技の作品は制作することが難しく、似たような作品になってしまう。
これは、物語の構成上、その競技を始めて、大会に出場する流れが同じため、変化が乏しくなることが原因だからである。
例えば、「野球」を題材にした場合、「野球」と言う競技において、高校野球が中心になる。
主人公が高校の野球部に入部して、練習し、甲子園に出場すると言う流れは、日本の野球と言う競技においての通過儀礼である。
そのため、内容に変化を生み出すことはできない。
そこで、多くの作家たちは、年齢や性別、選手や監督などに着目し、変化を与えて作品を作り上げている。
年齢の場合、高校生か、プロの成人野球選手にするかと言う違いがある。
性別の場合、男性か女性か、または、男女混合かと言う違いがある。
また、主人公を選手から選手たちに指示を出す「監督」を主役にすると言ったやり方もある。
そして、最終的には、他の題材と組み合わせると言うやり方もある。
例えば、『イナズマイレブン』と言う作品は、サッカーと超能力を組み合わせた作品である。
このように、多くの方法を駆使して、作品に違いを生み出してはいるが、最終的に物語の結末や基本構成は変わってはいない。
3:「女性受け」の爆発力
「スポーツもの」において、キャラクターデザインの良し悪しが作品の人気に大きく影響を与える。
例えば、『テニスの王子様』『黒子のバスケ』などのような作品において、主人公やライバルなどをイケメン男子で描くことによって、女性人気を得ることができる。
この女性人気は、作品の売り上げに大きな影響を与える。
逆に、キャラクターデザインが悪いと、人気のスポーツを題材にしても売れない。
そのため、多くのアニメ作品で男性キャラクターをイケメンにデザインして制作している作品が大量に量産されたが、その大半の作品は、失敗に終わっている。
また、男性受けを狙って、女子スポーツで描いた場合でもキャラクターデザインは重要となるが、女性より売り上げは得られない傾向にある。
3)問題点
○「先駆者がいるスポーツ/競技」
野球やサッカーなどの人気のスポーツは、大半の作家が既に描いている。
そのため、先駆者に大成功作品があると、まず間違いなく比較対象にされてしまう宿命を背負うことになる。
先駆者との違いや区別ができるだけの発想とアイディアが求められる。
○「マニアックなスポーツ/競技」の定め
マニアックなスポーツを題材とした作品は、非常に少ない。
その理由は、知名度の低さと、その競技の競技人口の少なさが原因である。
例えば、『サーフィン』や『カヌー』などの競技は、水辺が必要となり、学校と言う場所では、まずできない競技である。つまり、その地域や土地、気候などの環境的な問題が作用するため、その競技を行える環境がないといけなくなる。
また、例えば、「馬術」において、馬を使う競技の為、馬を飼育している場所が限られてしまう。
そのため、東京や大阪などの都会においては、匂いやフンなどの動物ならではの問題点があるため、馬を置いて置けるような土地/場所が求められる。
田舎なら土地があるから置いて置くことはできるが、人口が少ないため、そこまでの取り組みや競技そのものに興味を持つ若い世代は少ない。
このような場所や競技の特徴などでマニアックな競技が多く存在する。
他にも、競技そのものが地味だったりすることも要因である。
例えば、「弓道」を扱った作品は、比較的に近年になって制作されている。
弓に対して興味はあるが、実際の競技そのものが地味過ぎて盛り上がりに欠けるため、多くの作家が手を出してこなかった。
また、制作された作品もやはり、地味な作風になってしまい、京都アニメーションが制作した『ツルネー風舞高校弓道部』と言う作品ぐらいしか知名度はない。しかもその知名度も有名なアニメ会社が制作したと言うアニメ会社の名前だけで、地位を築いているようなものとなっている。
つまり、マニアックな競技は、競技そのものが地味であったり、そもそもその競技に触れることができる場所や条件が厳しいことが原因だと言うことだ。
興味と関心がなければ、アニメや漫画を制作しても売れないため、この要因は、やはり大きい。
○「尺稼ぎ」
『スポーツもの』の大半は、漫画原作のものが多い。共通して、連載中にアニメ化されるため、アニメ放送中に原作に追いつくことが多くある。
このため、アニメ制作サイドでは、引き延ばしのために、ありとあらゆる手段を行う。
回想シーンをいれたり、観客やその試合を見ている他の部員やコーチの意見を言わせたり、解説コーナーを入れたりするなど、多くの尺稼ぎ方法を行って来た。
しかし、尺稼ぎのために余計なシーンを入れると、作品の流れや面白さが半減したり、途切れたりする問題が多く発生して来る。
例えば、『巨人の星』において、一球投げるだけで1話が終わるケースもある。
この問題において、テレビアニメ化する場合、ある程度の尺を決めてアニメ化する方法が有効であることが、一部の作品(『黒子のバスケ』『ハイキュー!!』)によって、証明された。
つまり、尺として、2クール程度の内容をアニメ化し、ある程度原作のストックが溜まって来た時に、続きとして、また2クール分アニメ化する。
こうすることで、余計な尺稼ぎをしなくて済むし、「スポーツもの」の弱点である作画問題においても、充分な作画期間を設けることができる。
しかし、途切れ途切れになるため、ヒットしている時に放送できないことはデメリットだと言える。
○「架空の競技」
メジャーな競技の大半は既に漫画やアニメなどが制作されていることは、先ほどでも語った。しかし、マイナースポーツを描くことは非常に難しくリスクが多いため、売り上げを得るために、メジャーな競技に、何かしらの工夫をこらして作られる作品が多くある。
例えば、『スケートリーディング☆スターズ』と言う作品がある。
スケートリーディングとは、架空のフィギュアスケート団体競技で、1チーム5人が一斉に滑り、技術点と芸術点の合計で勝敗を競う架空の競技である。
作品としての問題点は山のようにあるが、『フィギュアスケート』と『新体操』を組み合わせた内容である。
このように、他の競技や題材などを組み合わせることで独自の世界観を作り上げている。
しかし、このような作品はあまり世間では受け入れられない傾向が高い。
*使用例*
『プリティーリズム』シリーズ:フィギュアスケートとアイドル。
『競女!!!!!!!!』
『SK∞ エスケーエイト』
○「制作側の競技の理解度」
「スポーツもの」の作品を制作する場合、その競技においての理解度が求められる。
ルールや雑学など多くの情報を監督や脚本家、演出家は知らなければならない。
しかし、ここ数年の「スポーツもの」は、この競技に対する理解度が非常に低いことが多い。
例えば、『フットサルボーイズ!!!!!』の場合、室内サッカーなのだからバスケットボールのコートぐらいの広さしかないはずなのに、本家のサッカーコート並の広さで描かれている。
これは完全に制作会社と監督、演出家のミスである。
他にも『トライナイツ』と言う高校ラグビーを題材とするオリジナルアニメが存在するが、ラグビー協会が制作協力しているにも関わらず、高校生までは「ヘッドギア」を着用することが必須になっているのにも関わらず、着用していないと言う問題が発生している。
勿論、このような作品のヒットはせず、筆者のように調べない限り存在そのものすら知らない人が多いと言える。
*作品例*
「野球」:『巨人の星』『メジャー』『キャプテン』
「サッカー」:『キャプテン翼』『イナズマイレブン』
「バスケットボール」:『スラムダンク』『黒子のバスケ』
「テニス」:『エースをねらえ!』『テニスの王子様』
「バレーボール」:『アタックNo.1』『サインはV』
『ハイキュー!!』
「ラグビー」:『スクールウォーズ』『アイシールド21』
「ボクシング」:『あしたのジョー』『リングにかけろ』
『はじめの一歩』
「アメリカンフットボール」:『アイシールド21』
「アイスホッケー」:『スピナマラダ!』『GO AHEAD』
「ハンドボール」:『送球ボーイズ』
「プロレス」:『タイガーマスク』
「水泳」:『free』
「フィギュアスケート」:『ユーリonICE』『ユート』
『銀盤カレイドスコープ』
「ビーチバレー」:『はるかなレシーブ』
「卓球」:『行け!稲中卓球部』『ピンポン』
「バドミントン」:『スマッシュ!』『はねバド!』
「ゴルフ」:『プロゴルファー猿』『ホールインワン』
「剣道」:『六三四の剣』『バンブーブレード』
「ボクシング」:『あしたのジョー』『はじめの一歩』
『リングにかけろ』
「柔道」:『YAWARA!』『帯をギュッとね!』
「空手」:『空手バカ一代』
「相撲」:『火ノ丸相撲』、『のたり松太郎』
「薙刀」:『あさひなぐ』
「フェンシング」:『銀白のパラディン』『DUEL!』
「中国武術」:『拳児』
「体操」:『ガンバ!Fly high』
「自転車」:『弱虫ペダル』『シャカリキ!』『OverDrive』
「競輪」:『ギャンブルレーサー』『Odds』『競艇』
『モンキーターン』
「競馬」:『みどりのマキバオー』『ウマ娘』
「スポーツクライミング」:『いわかける!』
「サバイバルゲーム」:『ステラ女学院高等科C3部』
「チアリーディング」:『アニマエール!』
「釣り」:『釣りキチ三平』『釣りバカ日誌』
*まとめ*
このように、「スポーツもの」は非常に作りやすい作品であるが、一度でもその競技の王道と言えるような作品が存在すると、非常に作りづらくなる作品だと言える。
しかし、最初から最後までの大体の内容が決まっていて、作者の才能とアイディア次第でいくらでも化けるだけの力があることも事実だと言える。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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