希望荘/宮部みゆき
探偵杉村三郎シリーズ第4弾。
とは言っても、私の知る杉村三郎は小泉孝太郎演じる「名もなき毒」「ペテロの葬列」のドラマ2本を通してのみ。2つの小説も第1弾の「誰か」も未読です💦
「ペテロの葬列」での孝太郎君(三郎)のあまりに気の毒な運命(❓)を見て、この後どうなるのだろうかと思って、思わず本を購入してしまったのですが、そのまま積読状態でした。
最近、いろいろとやる気が失せていて、ネットフリックスやらNHKオンデマンドやらを渡り歩く毎日。
さすがに、「このまんまじゃ呆けるぞ💦」と反省し、映像から活字への脱却を試み始めたところです。
お手頃な活字文化ということで、まずはこの本を読了。
とは言っても、杉村三郎は完全に小泉孝太郎君に脳内変換しております😅
この本に収められているのは、「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身」の短編4つ。杉村三郎が、〈今多コンツェルン〉を離れ、探偵事務所を始めることになった経緯などが、4つの短編を通して描かれています。
ただ、この杉村三郎という人物、探偵としてはそれほど有能というわけではありません。ミステリー仕立てにはなっていますが、三郎がドラマチックに謎解きをして、事件を解決する・・・というよりは、事件に関わった人物たちがそれぞれに自己解決をしていて、それを杉村はある意味、傍観しているだけと言ってもいいかもしれません。
それでも、なぜか、三郎の周りにはいろいろな事件が集まってきます。まあ、それは小説なのだから当然ではありますが😅
それを作者は今多コンツェルン〈あおぞら〉編集部時代の女編集長のせりふとして「杉村さんは、事件を引き寄せる体質なのよ」と表現しています。
三郎のちょっと優柔不断な雰囲気もあって、「そうそうその通り!」と激しく同意してしまう私。
でも、三郎のこの雰囲気、嫌いじゃないんですよね💕
とびきり優秀というわけでも、駄目人間というわけでもない。
いたって普通なんだけど、他人から見れば結構恵まれた環境にいる。でも、本人はそれなりの劣等感もあるわけで・・・。
それぞれの事件も、世間的に騒がれたものではないけれど、当事者にとってはかなり重い内容です。
それなりの解決はしているけれど、すっきりとした終わり方ではない。かと言って読後に嫌な気持ちが残るわけではない。
もちろん、とてつもなく嫌な人間が出て来るものもありますが、それは優しき人たちの回想として語られるので、救われるんですよね。ちょっと物悲しく、温かな優しい気持ちが残る読後感です。
杉村三郎シリーズの特徴かもしれません。
第5弾の「昨日がなけれは明日もない」も読んでみようかな、と思っています。
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