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ファミリーマップ/おおぎやなぎちか

おおぎやなぎちかさんの創作を読んだのは2冊目です。
以前に読んだ「俳句ステップ」の感想は、こちらから

おおぎやなぎさんは、いわゆる児童文学作家というジャンルに分けられるのかもしれませんが、決して「子どものための本」というわけではありません。

主人公陸は中学生の男の子。幼い頃に母親を亡くし、ずっと父と二人暮らしだったのですが、ある日、父親から再婚の話を聞かされます。しかも、相手の女性は出産間近でした。
突然、訪れる新しい家族。その戸惑いと違和感が、中学生である陸の目線で淡々と語られていきます。

そして、この物語の中で何と言っても一番魅力的な登場人物は、母親代わりに陸の面倒を見てきてくれた「よっちゃん」でしょう。
初めに、この物語の主人公を「陸」と書きましたが、ある意味、陸の目を通した描かれた「よっちゃん」が主人公ではないかとも思うのです。「よっちゃん」は、身体は男性だけど心は女性で、陸のパパを大好きなのです。

ぜひこの本を読んでいただきたいので、あまり詳しい内容は省きますが、家族とは何なのか、血縁とは何なのか、昔話や言い伝えの中に残る概念や考え方と自分の生き方との違和感など、考えさせられることがてんこ盛りです。
初めに単なる「子どものための本」ではないと書いたのは、そういう意味です。

陸の友達の夢芽を通して、いじめの問題も挙げられています。
でも、人間関係やいじめなどの複雑な問題を、決して暗くはなく、淡々と、そして優しさと希望を持って描いているところが、魅力的です。そこが児童文学たる所以なのかも。

それから、草花に詳しいよっちゃんが、「仏の座とヒメオドリコソウの違い」「ヒメジョオンとハルジョオンの違い」などを教えてくれる場面などは、俳人としての作者の片鱗も窺えて、嬉しくなってしまいました。

最後に、「よっちゃん」を一番魅力的な人物と書きましたが、ここまでよっちゃんに愛され、またこんなに素敵なファミリーマップの中心にいるのは、陸のパパだったんだよなあと改めて思い直し、パパの魅力にも言及しておきます 笑。

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