聞き上手

半世紀も生きていると
いくどと無く貴重な学びの機会に恵まれる。

社会に出て最初の上司となったA氏は
とにかくよく聞く人だった。

どんな小さな事でも耳にするや否や
それはどういうこと？
と聞いてくる。
政治経済は勿論、女性の化粧品にまで
その興味は及ぶ。

私はそれがいつも不思議でならなかった。

何故なら
彼が誰よりも博識であることを
知っていたからだ。

時には絶対に知っているであろう話題でも
人の披露する知識を
ただうんうんと頷きながら
それで？
と聞いている。

あまりにも聞いてばかりいるので
ある日思いきって聞いてみた。

すると

知識はね、披露した方はそれ以上の
知識は得られないんだよ。相手が
知らない、と思うから人は自分の知識を
披露するわけだろ。だから人の知識を
得ようと思ったら、自分の知識は取りあえず
置いとく方が良いんだよ

人生ひよっこの私にとっては
とにかく感動というか
心に響く言葉だった。

ともすれば
知識が全てという思い込みから
披露することばかりに
熱中していた気がする。

そうすると
相手の貴重な知識を得る機会を
自分から奪っていたかもしれない。

聞き上手は

最高の知識人

なのかもしれない。