もの・ことの値段
デパートを歩いていたら
アートギャッベの展示即売会に行き合った。
色彩豊かな図柄に心惹かれて
買う気もなく見て回る。
手間をかけて人の手が作り出した
日用品・工芸品にはほとほと弱い。
実用的でありながら芸術的でもあるなと思う。
織物は絵としても本当に素敵なものがある。
ギャッベはイランの遊牧民の女性が
羊の毛を草木染めした糸を用いて
みっちりと密度高く手織りしたもの。
縦糸に一本一本糸を括り付けて織り上げていく。
黄色、赤、青、など
実に鮮やかで様々なニュアンスのある色で
大自然の風景や身近なものを描いている。
図案はなく頭の中のイメージのみで
描いていくのだそう。
ふと、吊ってあった
1枚の大きなギャッベに目を奪われる。
3畳分ぐらいの大きさか、
黄色と茶色のグラデーションで
遠く重なる丘が表現され、
その丘のところどころに
木々や山羊が織り込まれていた。
高そうだな、と思いつつ興味本位で値札を確認。
500,000円ちょっと。
・・・・・。
でも待てよ、
羊を飼い、毛を刈り、糸を紡いで、
様々な草木で染料を作り、
それぞれの色に糸を染め、
1目1目結んでこの大きさに織り上げていく。
それらの全てが手作業。
織る工程だけでも気が遠くなりそうなのに
その前にも手のかかる工程が幾つもある。
そして遥々とここまでやってきた。
よく分からないけど、
もしかしたらこの値段でも安い、
のかも知れない。
作り手の方々は適正な収入を
得られているだろうか?
あるいは自然と共に季節に沿って人生を送る
この人達はそんなに多くのお金を
求めてなどいないのかもしれない。