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腹が立つ

こんな話を聞いた。
数年前、東京の朝の通勤電車で具合が悪くなって倒れた人がいた。
その時「非常ボタンを押すな!仕事に遅れる!」という声が上がって
結局そのまま次の停車駅まで倒れたままだったというのだ。
 
その話を聞いた時唖然とし、その後猛然と腹が立ってきた。
何を言っているのだ?命より重たい仕事があるのか?
回りの人達は何をしていたのだ?
何もしなかったのなら同罪ではないか?
 
イメージされたのは倒れている人を遠巻きに
(実際のところ距離的には近かっただろうが)
気にして見ている人々。
驚きと戸惑いと重い沈黙。
冷静に考えると駅と駅の間で停車して事情を伝えたところで、
すぐに何か処置が出来るわけではない。
次の駅に連絡して待機してもらっておくことくらいだろう。

だが、冷静に考えたところで感情は収まらない。
腹を立てたままこのことをMタローにぶつけたら、
『東京だからという訳ではないと思うよ。
どこででも起きうることじゃないかな。
でももしその時の声が続けて
「今ここでボタンを押しても状況確認に時間が取られるばかりですぐに対処できるわけではない。このまま次の駅まで待って駅ですぐに伝えた方がいい!」
と言ったらよかったのにね」と返ってきた。
 
実際そうだったとしたら?
周囲の人がそれを聞いて、それも一理あるかもと半分納得し、
急病人に寄り添い励まし続けていたら?
あるいは誰かが車内から119番通報していたとしたら?
「電車内で急病人が出たが非常ボタンは押されず次の駅まで倒れたままだった」としても状況はかなり異なる。
 
実際の場がどのようなものだったかは分からない。
分からないが最初のイメージが浮かんだのは
私に「大都会の人は心が冷たくなっている」という
固定観念があるからだろう。
固定化は偏見や誤解を生む。
 
ところで怒りが湧いた時の表現に
『腹が立つ』と『頭にきた』というものがあるが、
前者は体内で湧き上がってくるもの、後者は頭で感じるものとなる。
最近は後者を使う人が多いそうで、
それは身体性が軽んじられる頭重心の社会の影響ではないか?
と言った人がいた。
なるほどな、と思った。
みなさんの怒りはどこから生じますか?