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夢間欧
2023年1月21日 16:28
洗濯槽からは、水があふれていた。ということは、頭は完全に水に漬かっとる。「山岸先輩」 イッチが声をかけて、パジャマを穿いた両脚に抱きついて引っ張った。ぐしょ濡れになった上半身が洗濯槽から出る。イッチが手を放すと、身体は力なく床に横たわり、変態オヤジの顔があらわになった。 その顔色は真っ青で、目はカッと見開かれ、口が苦しげにゆがんでいた。「びょ、病院に電話。一一九番、早く」「待
2023年1月19日 17:18
じゃあ死体はよろしくと言って、タマちゃんがベンツに乗って帰った。 腰を一二〇度に折ってそれを見送っていたアホが、車が見えなくなると、「オーナーの気が早いのにも困るね。どう考えても、きみのデビューはまだ早いでしょ。実際、じいさん一人殺しちゃったしね」「え? あれ、わしのせい?」「力任せに揉んで、心臓に負担をかけたんじゃない? まあ別に気にしなくていいよ。これもまた勉強さ」「そん
2023年1月16日 06:12
ベタベタな詐欺や。 こんなもん、警察に言うたらしまいや。せやけど、こっちの警察はアテにならん。弁護士を呼ぶ金もない。身寄りも知り合いもない。わしらの立場を考えると、どうやら泣き寝入りっちゅうことになりそうや。あー、アホらし。 おんなじ結論に達したんか、イッチが覚悟を決めたように、潔く土下座した。「許してください。お金はないです」「金がなかったら、誠意を見せてもらおう」「皿洗い
2023年1月15日 19:01
満天の星が、こないに悲しく見えたんは初めてやった。「どないしよ」「すぐに雇ってくれるところなんてないよねえ。バイトもしたことがないから、なんの技術もないし」「わしとの野宿考えとんのか。お断わりやで」「野宿はやめよう。せめて、屋根のあるところ」「セリイを捜すどころやのうなったな」「……彼女、大丈夫かな」「今ごろ襲われてるで、きっと」 歩きながらしゃべっとっても、なん