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冬の柿

熟しかけた柿が届きました。

今年は「じさを荘」の柿が実ったそうです。以前はいったい何が入っているのだろう?という大きな箱に数個でしたが、今回は6個。ピッタリ収まっていて、形も均等でした。

「今年のはけっこう多くなったので、選別したんです。ええ。美味しいと思いますよ。20個くらいなったんで、ぼくも食べさせてもらいました。とくに何もしてないのに2年に一回くらい実がなるってすごいですねえ」
と川原さん。


実家を「家族葬ハウス」として利用してもらっている「あゆみセレモニー」の社長さんだ。
彼の会社のInstagramをときおり覗くのですが、祭壇の花がカラフルできれいなんですね。
わたしにはふだん花をめでる趣味嗜好はないのですが、それでも花を見ていると、そういえば阿倍野の珈琲店「力雀」にはいつも季節の花が飾ってあったなあと。
お葬式の花は、むかしは白と黄色の菊が決まりでしたが、近年のきれいな花は見ていて、なごむというか。
写真に添えられたこんな文章にも目がとまりました。

〈家族だけで勤行をなさりお母様の旅立ちを見送りました。
御年105歳
長い年輪は苦労の数だけ優しさを培いました。働き者で家族の内なる柱となり沢山の愛情を捧げて下さったそうです。
お嫁さんがお義母様の旅支度を納める為にお着物から頭陀袋を作りお柩に。
『これだけは持たせてあげたかった』
と大切そうにお持ちになった、お嫁さんの想いはお義母様への感謝で溢れていました。〉

柿を送って来られる小まめにおどろかされるいっぽう、箱の底を手探りしても、一筆箋などは出てこない。無骨というか。川原さんにしてはめずらしい長文です。

illustration/KUM

別のある日には、晴れた大空の写真が載っていました。いつもは祭壇と使用した霊柩車の写真があるところに??と文面をみると、生まれたばかりのお子さんを見送られたご家族を担当されたそうです。花祭壇ではなく、シンプルに棺に花を入れる式だったらしいですが、準備された切り花(以前、あれって残った花とか?と聞いたら、そうじゃないです。ぜんぶ新しいお花を切るんです。だから祭壇のないお式だと利益はうすくなるんですけどね。でも、きれいな花でお送りしたいじゃないですか。と話されていた)は本当にきれいなもので、葬儀屋さんの特色というか、心意気はこういうところにあらわれるなあ。

先日、知人の二人目のお子さんが生後3日でなくなられたそうで。父親の彼のかなしみは深く、しかし「奥さんを気づかってあげてください」という言葉をまわりから寄せられ、それが重なるにつれ「男の自分は、父親としてかなしんでいたらいけないのか」そんな気持ちになってバクハツしそうになって、とクチにしていて、かける言葉がなかったなあ。ふだんあまり、無口にちかい男性だけに。
その話を聞いたのは仕事の打ち合わせが終わった帰り道で、最寄りの駅の百貨店で香典返しを選びに行くという。香典返し、ということは、しっかりと式をしたんだなあ。



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