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島田雅彦「パンとサーカス」を読了

政治的関心を失った民衆には、食料(パン)と見世物(サーカス)を与えておけば支配は容易い。
戦争、犯罪、天災、疫病――どれもがサーカスとなる。
不正隠蔽の犠牲となった父親の復讐を果たすため、CIAエージェントになった男は、
日・米両政府の表と裏を巧みに欺き、いつしか日本国民の仇をとる。
ヤクザの二代目、右翼のフィクサー、内部告発者、ホームレス詩人……
世直しか、テロリズムか? 諦めの横溢する日本で、いざ、サーカスの幕が上がる!

「私の暴走にどうかお付き合いください」 ――島田雅彦

日米同盟という名の永続占領から自由日本を開放する
革命戦士たちの叙事詩 ――前川喜平

本書の出版元、講談社の「講談社BOOK俱楽部」より

500ページ超という、辞書並みの厚さの小説ですが、著者の発想力に惹き込まれて読了、一本の大作映画を観たような読み応えです。
素人の私が読後感や分析をくだくだしく述べるよりも、読んでいただく方が早いと感じました。
今の日本に、漠然とでも違和感や危機感を持っている方には勿論痛い程響くでしょうし、中国や北朝鮮が攻めてきたら米軍が助けてくれると思いたい方には、別の意味で一読をオススメします。

恥も外聞もない阿諛追従とか
むき出しの権力欲、金銭欲とか
無為を棚上げにした諦念と思考停止とか
嘆かわしい風潮が蔓延し、閉塞感で息苦しい社会に
風穴を開ける「メシア(救世主)」は既にいるのかもしれません。
そして私自身に出来ることとは?

重い問いかけを残す一冊でした。

最後に、「希望の一枚」を。
寒さがまだまだ厳しい中、早春の訪れを告げる河津桜です。

2023年2月上旬 咲き始めの河津桜





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