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NHK杯フィギュア2023を観戦して ~ スポーツにおけるルールとは

先の週末に開催されたフィギュアスケートの試合、グランプリシリーズの最終戦となるNHK杯をテレビで観ました。
子どもの頃から、かれこれ40年以上フィギュアを見続けていますが、最近バンクーバーからソチのあたりに似た「いやーな感じ」を強く受けます。
今大会はそんな「もやもや感」が顕著でした。
私は、専門家ではなく、ただの「長年の素人ファン」でしかありませんが、思うところを残しておきたいと思ったので、キーボードに向かっています。

今回の「もやもや感」の要素は次のようなものです。

1.GPSの中で、突然、回転不足の判定が異常に厳しくなったこと
(演技直後の会場の盛り上がりと、採点結果が出た時のキスクラ及び観客の戸惑いのギャップが大きかった)
2.技術と芸術が融合したスポーツという、フィギュアスケートの美質をきちんと踏まえない採点になっていたこと
(「氷上に図形を描く」というこの競技の本質が見失われがち。今シーズンに入って気になる点の一つとして、分かりやすく受けのいい演技が高評価を得ているきらいがある)
3.ジャンプを重視する採点システムの弊害が目立ったこと
(ジャンプの質を細かく判定するのと同様に、ステップやスピン、コレオももっときめ細かく、また点数配分も上げてジャッジすることが、フィギュアという競技の特性にあっている)

2つ目と3つ目は、かなりの部分が現行の採点システムの問題なので、ことが大きく、すぐにどうこうできるものではありませんが、最初の観点は問題提起する意味があると思っています。

ということで、今回、最も訴えたかったこと。
回転不足判定の異常な厳しさについて、ちょっと詳しく書きます。

※これについては、宇野昌磨選手が言及したことが、結構大きくニュースになっていましたが、メディアが記事に付す見出しが過度にセンセーショナルでげんなりしました。見当外れな批判や誤解も生んでいます。
彼はジャッジも他の選手も批判してはいません。
今大会で回転不足の判断が厳しかったことを指摘し、このような判断基準が今後も続くようなら、自分は現役を続けることは難しいと感じさせられた、試合に出る意味を揺るがされるような試合になった、という趣旨の発言をしただけです。
宇野選手の発言は、以下の記事で、実際の言葉に忠実に紹介されています。


参考記事(書いてくれた記者さんの温かさ誠実さよ…)


続けます。

回転不足やエッジエラーの判定は、一つの大会内での平等性と、1シーズン通して(少なくともグランプリシリーズ6戦を通して)の公平性が担保されていなければ、テクニカルパネル(技術審判)の匙加減一つで大きく結果が左右されるという事態になりかねません。
ここが、今回、最も引っかかる点です。

今回のNHK杯については、大会の規模や位置づけが同じである、グランプリシリーズの他の大会と、回転不足判定の件数を比較した一覧表をネットにあげている方がいらっしゃいます。
それによると、一番件数が少ないフランス大会で
 qマークがついたのが 2件(うち、転倒以外のものが2件)
 urだったのが      2件(うち、転倒以外のものが0件)
比較的件数多めの中国大会で
 qマークがついたのが13件(うち、転倒以外のものが13件)
 urだったのが      5件(うち、転倒以外のものが4件)
今回のNHK杯はダントツに多く
 qマークがついたのが18件(うち、転倒以外のものが18件)
 urだったのが     15件(うち、転倒以外のものが8件)

さらに、NHK杯では、男女シングルの出場者全24名のうち、回転不足やらエッジエラーを全く取られなかった選手は一人しかいなかったとのこと。

各大会によって、出場選手も違えば演技の出来も違うので、単純に比較できないのは当然ですが、それでも、6戦ある中で一つの大会に回転不足がちの選手が集中することは考えにくいです。
見ていたファン(現地観戦組もテレビ観戦組も)は勿論、テレビの解説陣も複数回ジャッジの厳しさに言及していましたし、海外でも同様の意見が多数出ています。このNHK杯のジャッジが他の大会に比べて厳しかったことは、間違いないと言えるでしょう。

ジャンプを完全に回転してクリーンに跳ぶ選手と、そうでない選手に採点で差をつけるのは当然という考えも見かけます。しかし現行ルール上4分の一未満の回転不足は減点なしとなっているのです。そのルール以上に厳しくqマークを付けた(ようにみえる)のはおかしいのであって、加点の幅で差をつけるのが妥当でしょう。

採点が緩すぎるのは勿論よくないと思いますが、厳しすぎれば確実に選手が委縮しますし、観ている方も「また減点されるかも」と疑心暗鬼にかられ、演技を純粋に楽しめなくなります。
これは即ち、フィギュア人気の低下や競技人口の減少につながり、多方面で人心に荒廃をもたらす、看過できない問題です。

スポーツはルールなくしては成り立たないものです。だからこそ、ルールの運用にブレがあったら、そのスポーツ競技の価値は揺らぎます。
また、ルールを変える際には、十分な協議と関係者への周知を経てシーズンの頭から導入し、その影響を検証して、改善すべき点があれば改善するのがが当然です。

フィギュアスケート関係者の皆さま、今回の突然のジャッジ厳格化が大きな波紋を呼んでいることを、どうか、きちんと受け止めてください。

そして、少なからず心を傷つけられ意欲をそがれたであろう選手の皆さま、
フィギュアスケートを愛するファンの目は節穴じゃあありません。
多くのファンは(少なからぬ関係者も)、ちゃんと見ていますよ。
あなたの挑戦、努力、気概を、いつも応援しています!





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