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ドキドキして返信「初心者です。お手柔らかにお願いします」

千夏は数日前に、お茶した会社の後輩の言葉を思い出していた。

入社2年目で20代前半、キャピキャピだ。

「今はみんなアプリで出会っていますよ。これ本当です。先輩はやってなかったんですか」

私たちの若い頃は、まだ合コン全盛時代だった。

ナンパされに、友人と2人で銀座・コリドー街をフラフラしたこともある。

「健全に出会っていた」と主張したい。

ただ、ひとつ、後輩のある言葉に思わずピクリと反応してしまった。

「既婚者用の出会い系アプリもありますよ。昼間から集まって合コンしたりもしています」

「マジ!?」

大きな声を出したので、後ろにいたカップルが振り向いていた。

妊娠、出産、子育てにまい進した6年の間に、世の中は大きく変わってしまったらしい。

後輩と別れた後、早速、「既婚者 合コン」で検索する。

いくつか、ヒットした。

まっ、試しに一番上に出てきたアプリにでも登録してみるか。

本人証明で免許証の提出があるみたいだが、名前や住所は黒塗りでいいらしい。

サクッと登録を済ませ、再び仕事に向かった。

夜、寝る前にこっそりアプリを開いてみて、ビックリした。

50人以上からメッセージが届いていたのだ。

自分にもまだまだ需要はある。

少し自信が持てた気がした。

メッセージの中に、一人、同じ年の会社員がいた。

返信してみる。

「はじめまして。初心者です。お手柔らかにお願いします」

何だか、ドキドキした。

このときめきは、夫と出会った合コン以来だ。

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