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北京留学日記 其の九

授業の一環で北京郊外にある『敬老院』を見学に行きました。
日本でいうところの老人ホームです。
私立の院で比較的裕福な人たちが暮らしていました。
部屋や活動は日本のものと似たようなものでした。
一通り見学を終え、中庭で院長のお話を伺っていると、職員の方が車いすに乗った女性を連れてこられました。中国残留孤児の日本人の方でした。
私たちの中に日本人がいると知って連れてこられたのです。
彼女は中国人の養父母に育てられ、結婚もして、旦那さんと一緒に入所してこられたのです。とても仲の良いご夫婦だったそうですが、数年前旦那さんが亡くなって、そのショックから奥さまは記憶が後退し子供時代にまで遡ってしまったのだそうです。中国語も忘れてしまい、言葉の通じないところで一人ぼっちになってしまったという感じでした。
日本語でお話をし、日本の童謡などを一緒に歌いました。
そこへ敬老院の中を一人で見学していたスイス人留学生が戻ってきました。
その途端、彼女は彼を指さして、「ソ連兵が来た!」と言って、怯え始めパニックに陥りました。彼は背が高く金髪碧眼だったので、子供返りしている彼女にはそう見えたのでしょう。
戦争の罪深さを感じさせられ、なんともやり切れない気持ちになりました。



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