自作小説〜冥界の女神様だって恋がしたい〜

「お姉さんっ!僕と……結婚して下さい!!」
一目惚れだった。
僕は 牧瀬 羚(まきせ れい)今年高校二年生の男子だ
我ながら信じ難い話だが僕の初恋の相手は「女神様」だった。それは美しさの比喩や何でもない正真正銘ホンモノの女神様だ。

それは7年前ーー
家族と出かけた夏休みの旅行先の海で溺れかけて臨死体験をした事がきっかけだった。
家族によると僕はどれだけ声をかけても目を覚まさず、三日間病院のベットで眠っていたらしい。
だが僕は眠っているはずの三日間…いや体感にすれば一週間もしくはそれ以上の記憶があるのだ。

溺れながら意識を朦朧としていると、いつの間にか僕は人工的な洞窟の中の様な場所にいた。

「ここは…どこ?」
そこは静かで燃える松明の音と明かりだけが存在していた。
不思議な事に特に怪我もなく、具合が悪い所もない僕は幼いながらも勇気を出して洞窟の奥に向かった。
点々と灯る松明と道が永遠に続くかの様な長い洞窟だった。どうだろう、もう一日くらいは歩きっぱなしな気がした。
不思議と足の疲れも疲労も感じない。なんなら喉の渇きや空腹すら感じないのだ。

「僕は一体どうなっちゃったんだろう」
なんて呑気な事を言ってる間に開けた場所に出た。そこはまるで何かを祀る祭壇のようだ。洞窟には似つかわしくない絢爛豪華な宝石が散りばめられている。今まで見た事も無い景色に目を奪われていると、
「あなた、ここに何用?」
声に視線を向けるといつの間にか祭壇の中央に一人の女性が立っていた。
「ねぇ、あなた。死んだ訳じゃ無さそうね。」
「ここに何しに来たの?」
声の主である女性はとても美しかった。
異性への興味、まだ恋愛感情というものに乏しかった自分ですらその美しさに目を奪われた。
透き通るような白い肌。
黒く流れるような長い髪。
そして何よりも深紅の美しい瞳
彼女の存在は絢爛豪華な祭壇の何よりも僕の目を奪った。

これが僕と女神様の初めての出会いである。

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