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【短編】おせちサミット~王国まで建設した物、食材達の話し合いは如何に~

 これはとある世界の話。突如、一部の物、食材達に意志が宿った。意志の宿った物や食材達は向上心があり、生産する事に研究熱心だった。とある米は舌ざわりや、柔らかめ、硬め、甘み…完璧な米を研究し続けている。とある、魚は脂、詰まった身など完璧な魚を研究し環境を整え生産して…。

 そんな物や食材達には、本日開催される大掛かりなサミットを控えていた。

 「ニュースの緊急速報です。間もなく重箱国でサミットが開催されるとの情報です!重箱国のニュースキャスターさん~!」

 緊急速報のテロップが流れると、重箱が屋根のビルやマンションが立て続けに建設している国の映像が画面に映し出される。小さな重箱の顔をした女性はマイクを握りイヤホンに手を当てていた。中継が繋がっていると知るとカメラに目線を合わせる。

 「はい!私、重箱国に住むチーサナ・ジュウバッ子が緊急生放送でお伝えします!本日は重箱国で開催される魚介部門の”おせち”サミットです!日本ノ国で大人気な"おせち"ですが今年はどのように…あっ!あそこにいるのは!伊達巻王国のダテマキーヌ女王!」

 ダテマキーヌは茶色のドレスで黄色いクルクルの髪を揺らしながら、民衆に囲まれた長いレッドカーペットの上を茶色のヒールで歩く。

 「伊達巻は日本ノ国でも人気な食材ですっ!!ダテマキーヌ様…美しい!」

 凛とした顔に、高いヒールでも堂々と歩く姿はまさに国のトップに相応しい立ち振る舞いを見せる。

 「おーーーっっと!!続いてはかまぼこ王国のカマッボコ王です!」

 髪は紅く、顔が白い背丈の低いカマッボコ王は袴の姿でノソノソとゆっくり下駄でレッドカーペットの上を歩く。

 「民衆の方々が騒がしくなってきました!あっ!あちらにいるのは…数の子帝のカズノウコ皇帝!続いては海老帝のエビー女帝と鯛国のタ・イ王!」

 黄色の粒を繋げた長い髪を一本に縛り、東南ノ国の衣装で歩くカズノウコ皇帝。透き通る赤色の触覚に紅色のかんざしを挿し、中ノ国の衣装で歩くエビー女帝。赤いウロコをリーゼントにし"多伊差イ来宇タイサイコウ"と刺繍された特攻服を着用しているタ・イ王。各国王はざわつく民衆に囲まれながらレッドカーペットの上を歩く。

 「緊張感が漂う中、今年の日本ノ国で販売するおせちはどのような形になるのでしょうか!続報が入り次第、再び中継いたします!」

 各国王は広い空間に設置された、互い合わせの長いテーブルに着席する。中でも何重にもつなぎ合わせた重箱の冠を頭に身に着けている重箱国のジュウ・バコ王。ジュウ・バコ王はジャラジャラと音を鳴らしながら左右を見渡し、目で各国王の出席を確認し終えるとゴホンと咳払いをする。

 「今年もこの時期になりましたな。魚介部門は今年、民衆のアンケートを参考に重箱の1段目になりました。どのスペースに食材を詰めていくか…話し合おうと思います」

 ジュウ・バコ王は集結した王達に話すと、タ・イ王は一目散に手をあげ席から立ち上がる。

 「鯛は大きな魚だ。日本ノ国が呼ぶメデタイとやらでドーンと真ん中に置くのが懸命であろうな」

 タ・イ王が発言し着席した途端、エビー女帝は手をあげ触覚を激しく揺さぶりながら立ち上がる。

 「海老は茹でると更に赤みが増し、身体が丸まりますゆえ。あの可憐な姿は愛しい。鯛は焼くとただ横になって寝ているだけじゃろ」

 言い切ったエビー女帝は目を閉じ口角を上げると、タ・イ王に横目で睨まれながら席に着席する。

 「これだから触覚やろうは…」
 「主。何と申した?」

 タ・イ王とエビー女帝はバチバチと火花が散るように互いに睨み合う。2人は怒鳴り散らしたい感情に駆られるが、築き上げた国の名を汚す訳にもいかず鼻をフンッ!と鳴らすと互いに顔を背ける。

 「国たるモノ、子孫が絶えないようにするのが優先。ここは子孫繁栄の意味をもつ数の子を真ん中にした方が国の為になるってモンだ」

 カズノウコ皇帝は足を組み、透き通る声で堂々と意見を発言する。だが彼の発言にダテマキーヌ女王とカマッボコ王は秒で首を動かす。

 「子を産んだ所で知恵が無くては只の能無しで人生が終わりますわ。知恵を増やすとの意味をもつ伊達巻を真ん中にするべきでしょう」

 「魔除け…清浄の意味を持つ…かまぼこが…イチバン」

 ピリピリとした緊張感が走る中、譲り合いの無い各国王の話し合いにジュウ・バコ王は大きく息を吐く。各国王はイライラが募り、机を指でトントンと叩く。机を叩く音のみ聞こえる部屋に、沈黙の間が経つとダテマキーヌ女王は席から立ち上がり、机を両手で力強く叩く。

 「もうっ!こうなったら食材単品で勝負するしかありませんわね!」

 大声を出すダテマキーヌ女王に、タ・イ王とエビー女帝も釣られ席から立ち上がる。

 「日本ノ国では"おせち"を家庭で作る人も多いらしいな」
 「ほう?ならば、元旦に食べる食材の売上数で競い合うのがよろしいかと」

 エビー女帝の提案にカズノウコ皇帝とカマッボコ王も続いて席から立ち上がる。

 「数?金額の方が良いのでは無いか?」
 「高価だから…数では…フマンか?」

 静かに話すカマッボコ王の言葉に、カズノウコ皇帝は煽られ横目で睨みつける。

 「そちらこそ、単価が安いから不満なのか?」
 「言ったな…。数が多ければ…金額などすぐに上になる。金額で…勝負しようでは…ナイか」

 「「「「望むところだ」」」」

 各国王の意見が一致した所でジュウ・バコ王は静かに席から立ち上がる。

 「家庭で作るのであれば我が、重箱国が生産している重箱も売れるであろう。ではこれにて魚介部門のおせちサミットは閉廷とする」

 かくして魚介部門のおせちサミットは売り上げの金額で競い合うと決定し幕を閉じた。

 時は経ち大晦日になると日本ノ国に住まう人々は、激混みスーパーに駆け込み食材を購入する。そして翌日の元旦となり、売り上げ金額がモニター越しにランキングが表示される。

 1位 寿司
 2位 お餅
 3位 カニ
 4位 おせち
 5位以下 魚介の食材(省略)
 20位 重箱

 各国の王達は発表の数字が映し出されるモニターを前に唖然とする。

 「そうか…」
 「日本ノ国では…」
 「おめでたい日は」
 「寿司を食うと…」
 「習慣があるのを忘れていた…」

 愕然とする王達だが、それ以上に愕然としていた人物がいた。

 「来年からはもう少し真面目にサミットをしよう。高を括っていた…」

 おせちを食べて貰う機会が減れば重箱など更に売り上げ金額も減り、ジュウ・バコ王は真剣なおもわくでモニターを見つめながら呟く。

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おせちを食べる時、こんな風に食材達や物が会話をしている…と考えたら何だか面白いですよねw

読んで頂きありがとうございました!

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