(小説)そのマッチングアプリの使い方、もったいなくない?
私は焦っていた。
先日も友人の結婚式があったのだ。
結婚式中は幸せな気持ちになれる。私も友人の結婚を大いに祝福した。
しかし、問題は帰り道だ。一人、家への帰り道の途中で、ふと考えてしまう。なぜ私には恋人がいないのか?結婚する予定も無いのかと。
私はどこにでもいるようなOLだ。すべてにおいて平均ぐらいだと思っている。周りの友人もそうだ。芸能人のような子もいない。いたって普通の友人たちだ。
なのに、自分だけが置いてけぼりになっている。
友人たちはマッチングアプリで結婚相手と知り合ったと言っていた。
私も何か月か前からマッチングアプリを使っているが、相手は見つからない。
どうしてだろうか?
その時、母が大きな声で私を読んでいた。
「おやつのクッキーが出来たから、リビングに来なさい」
母の趣味はおやつ作りだ。私は料理がほとんど出来ないから、普段のご飯づくりに加えてお菓子まで作れることに素直に感心する。
「今行くから」
私も大声を出して、リビングに向かった。
私は右手でサクサクのクッキーをほおばりながら、左手で携帯を持ってマッチングアプリを見ていた。
「あんた、恋人はできたの?」
「いないよ。みんなマッチングアプリで結婚相手と会ったみたいなんだけど、私は全然ダメ。なんでだろ?」
「選り好みしてるんじゃないの?」
「いいねはくるんだけど、年上だったり、なんか清潔感が無い人が多くて・・・」
「清潔感って何よ?写真だけで清潔感ってわかるものなの?外見しか見てないんじゃないの?
とりあえず、選り好みしないでいいねしてくれた人全員とやり取りしてみたら?」
「まぁ、確かに写真だけじゃ分からないかな?とりあえずいろんな人とやり取りしてみるね」
正直びくっとした。写真だけで判断していたかもしれない。
外見しか見ていないような人間だと思われたかもしれない。
母は続けて言った。
「そうした方がいいわよ。実際やり取りしたらいい人かもしれないしね。
そのほうがマッチングアプリを使っている意味があるんじゃないの?」
「うん。わかった。そうしてみる」
私は自分から出会いを狭めていたのかもしれない。
でも、母の言葉で少しだけ未来が開けたような気がした。
これからどうするかは自分次第だけど、なにか良いことがあるんじゃないかと、少しだけ胸が高鳴っていた。
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