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医師と資産形成・NISAについて

 こんにちは。呼吸器内科医の楽俊と申します。普段は呼吸器を中心とした臨床と、ちょびっとだけ論文作成なども頑張っています。
 今回は医師と資産形成、特に今回改正されたNISAでの投資を中心にまとめていきたいと思います。まだまだ投資歴は浅いひよっこですが、興味のある方は最後までお付き合いください。もちろん医師以外の投資初心者の方にも参考になると思いますので、ぜひご一読ください。
 いろいろと説明をして具体的な投資商品のお勧めもしていますが、あくまで私個人の意見であること、そして投資は最終的には自己責任ですので、その点だけはくれぐれもご理解ください。よろしくお願いします。

医師と資産形成 

 すでに巷には節税や投資の情報が溢れており、医師の資産形成についてもたくさんの先生が情報発信されていますので、今回のnoteでも正直目新しい情報はありません。ただ投資初心者が、「医師」「資産形成」をネットで調べると、開業や不動産投資を勧めてくるサイトがわんさか、しかも一番最初に出てきます。不動産投資はめちゃめちゃ勉強したらよい投資方法なのかもしれませんが、有料物件は都市部に限られ、また一般人には出回らない(出回っているようなものはほとんど売れ残り)ので、私含めて初心者は手を出さないほうがよいと思います。特にワンルームマンション投資はリスクが非常に高く、病院にかかってくる確定申告や節税対策の電話、学会会場での勧誘はだいたいこれなので注意が必要です。研修医時代に友人が騙されてスタバでお茶してマンション投資しそうだったのは良い思い出です。最近の病院への電話は巧妙化しており本当に腹が立ちますけどね。お金を持っていて投資に疎い医師という職業は、良いカモにされていると聞きます。

 新NISAが始まり投資への関心はかつてないほど高まっていると思います。しかし周りの医師を見渡すと、忙しすぎてNISAやiDeCo、ふるさと納税ですら知らない・興味がない人が結構います。その割に手数料が高く訳のわからない貯蓄型保険や外貨建て保険に加入している人が多いです。
 安定した給与所得があり入金力を有し、なおかつあまり使う時間もない医師と長期投資は相性が良く、正直2024年1月から始まった新NISAを活用するだけで、医師の資産形成は完成すると思っています(医師以外でも同様です)。もちろん多額の財産を築いても使わずに死んだら元も子もないので、適度に自分や家族の幸福のためにお金を使いつつ、が理想です。私のようにずっと勤務医を続けるつもりの人間は、給与はどこかで頭打ちになり、資産形成という点で投資は必須になってきます。投資が生む収益率は労働が生む収益率を遥かに凌駕しており、お金持ちはさらにお金持ちになっていきます(r>g)。
 投資については後半で詳しく説明するので、まだ働き出して間もない研修医の先生や、節税対策や投資など一切してこなかった先生で、いち勤務医の資産形成に興味のある方は、引き続き読んでいただければ幸甚と存じます。

 私が資産形成に興味を持ったのは医師4年目の時です。研修医の給料は雀の涙でしたが、3年目で急激に給与が増え(労働時間と責任も増えましたが)調子に乗って散財していました。高い車に高い時計、外食や旅行は最大限にお金をかける、後悔はしていませんがよくあるパターンですね(笑)。しかし4年目に住民税の案内がきた時にウン十万単位で税金が取られることが判明し絶望しました。これはいかんと思い資産形成についての勉強を開始し、まずはふるさと納税や医師向けのポイント活動から始め、続いて積立NISAやiDeCoを開始しました。最初はビビって月3-4万円の少額投資でしたが、慣れてきた段階で積立投資額を増やしていき、かなりの資産増加につながりました。現在は全世界株式やアメリカS&P500のインデックス投資を中心に、米国の個別株や日米の高配当株もやっています。
 以下に医師のおすすめの資産形成・節税対策を記載していきます。繰り返しになりますが、今回の新NISAを始めれば資産形成、老後資金対策はほとんど終了したようなものだと思います。それでは具体的に説明していきます。

①NISA
②iDeCo
③ふるさと納税
④医師向けのポイント活動

①-1  NISAとは

 NISAはイギリスのISA(Individual Savings Account:個人貯蓄口座)をモデルとした日本版ISA(Nippon ISAでNISA)です。医師にとってはこのNISAが最重要かつ最適解の資産形成+節税になると考えます。本来日本では投資利益に対しては約20%ほどの税金がかかりますが、NISAではこれが非課税となります。1000万円利益がでた場合、通常200万円ほど国に持っていかれますがこれが非課税になると考えると、すごさがわかるかと思います。

 これまでは、積立NISA(年40万円×非課税期間20年)またはNISA(年120万円×非課税期間5年)ともに金額も期間も正直しょぼかったです。しかし2024年1月からは、積立投資枠600万円+成長投資枠1200万円の合計1800万円と急にとんでもない上限額となっています。また非課税期間についても永久・無期限となり、まさに神改正、よっ!岸田総理!って感じです。増税メガネなんて言ってごめんなさい。
 もう少し細かくみていくと、年間の上限は360万円と決まっており、最短でNISA枠を埋めようとすると360万円×5年となります。もちろん最短で埋める必要はなく、特に初めて投資を始めるという人は、月1-5万円とかから開始がよいと思います。いきなり大きい金額で投資をすると、暴落した時に狼狽売りしてしまう可能性があるからです。ある程度経験をしてから積立金額を増やすことをお勧めします。私はもともと毎月40-50万円程度投資していましたので、1月からは月30万円を積立し、余剰資金は特定口座で投資しています。話は少し逸れますが、今回の新NISAの改正により今後どこかで何かしらの増税がくることは間違いないと思います。所得税や配当金の増税だけかもしれませんが、その時にNISAを始めて恩恵を受けているか、何も知らずただ増税に巻き込まれるかは、大きな分かれ道になると考えます。

 投資は長期・分散・積立・低コストが大原則です。後述しますが長い期間投資をすればそれだけ損をする可能性は低くなり、リターンは収束していきます。また「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言のとおり、幅広い国や業種・セクターに分散し、毎月や毎年の積立でタイミングも分散する(ドルコスト平均法)ことで、より安全に資産形成を行うことができます。積立を設定したらあとはもう投資していることを忘れて、どんな日でも淡々と積立をしていくだけです。

①-2  NISAで投資するうえで大切なこと

 NISAを開始するうえで最も大切なことが2点あります。

 1点目はNISA口座を開く証券会社の選択です。これはネット証券のSBI証券か楽天証券のどちらか2択です。銀行やその他証券会社は、投資信託などの手数料がネット証券と比べると非常に高く、わけのわからないアクティブファンドを勧められる可能性もあり絶対にお勧めできません。SBI証券か楽天証券で口座を開設するようにしてください。私はSBI証券ですが、楽天経済圏なら楽天証券でもよいと思います。

 2点目はNISAで購入する商品の選択です。ずばり、全世界株式(オールカントリー)や米国株式(S&P500)などの市場平均に連動するような投資信託・インデックスファンドへの長期積立投資、これだけで大丈夫です。オールカントリーは全世界の約3000銘柄以上に投資、S&P500はアメリカの上位500社にまるっと投資ができます。投資について以下に詳しく説明していきます。

 投資信託とは投資家から販売会社を通じて拠出された資金を、運用会社の専門家が株式などに投資し、成果を投資家に還元する金融商品のことを指します。日経平均やS&P500のような指数に連動し市場の平均リターンを目指す投資をインデックス投資、市場平均以上のリターンを目指す投資をアクティブ投資といいます。一見アクティブ投資のほうがリターンが大きそうですがそんなことはなく、インデックスに勝っているアクティブファンドはほとんどありません。その理由としてアクティブファンドは一般的に手数料が高い、分散がきかない、特定のテーマ投資などに投資できるが旬は長続きしない、など様々な理由があります。医療でいうとインデックス投資≒標準治療、くらいのエビデンス・安心感があります。短期ではコロナショックのように損をする可能性もありますが、S&P500に15年以上投資していれば、どの時期に投資を始めてもプラスであったというデータがあります。全世界株式や米国株式であれば長期に投資すれば年間利回りは約3-7%程度に収束すると考えられます。もちろん過去のデータで未来を100%予想できるわけではないですが、今後アメリカや全世界の人口は増加し、それに伴い経済も成長していくのであれば再現性は非常に高いと考えます。実際リーマンショックやコロナショック後も株価は最高値を更新しています。また投資の良い点として外貨を持つことができる点やインフレに強い点もあります。日本円のみ保有していると、インフレに賃金の伸びが追いついておらず、実質的な賃金や貯金は目減りする一方だからです。特に医師の給与は前述した通り、開業でもしない限り頭打ちとなる可能性が高いです。

 次に具体的にどのようなインデックス投資が良いか、です。これももう最適解が出ています。投資を初めて開始する方は、eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)が良いです。全世界株式と米国株式S&P500どちらが良いかはたびたび議論になっています。アメリカは移民政策などで人口が増加傾向であり、アップルやマイクロソフト、テスラなどイノベーションを起こす企業の下地があります。直近ではAIブームがあり2023年の株価上昇を牽引しています。今後もずっとアメリカの一強時代が続くと考える方はS&P500でも良いと思いますが、投資を初めてする方は全世界株式をお勧めします。個人的にはしばらくアメリカが強いと思いますが、インドや東南アジアの成長も目覚ましく、オワコンと言われていた日本も意外と好調であること、いつかは中国も復活してくる可能性があることなど、長期で考えるのであれば全世界株式かなと考えています。とはいっても現在は全世界株式のおよそ6割がアメリカ株で占められており、ほとんどアメリカに投資することには変わりありませんので、あまり気にしなくても良いと思います。残念ですが日本は今後人口減少は確実であり、経済の成長は鈍化、GDPも他国にどんどん追い抜かれていきます。日本だけに投資する、新興国だけに投資する、などはやめておいた方が良いです。

 NISAについては簡単ですが以上です。まだ投資をしていない方は、

(1)SBI証券か楽天証券でNISA口座を開設する
(2)NISA枠でeMAXIS Slim 全世界株式を毎月積立する

これでOKです。あとは株価が暴落した時も好調な時も、ひたすら積立を続けるだけです。ある程度慣れてきたら積立金額を増額して、積立していることを忘れるくらいがちょうどいいです。一番大切なことは株価の上下に一喜一憂せず淡々と積立を続けて、できる限り長く市場に身を置くことが大切です。なお毎月30万円以上積立できる方は、税金はかかりますが特定口座で同じ商品を積立することをおすすめします。また一括vs分割では一括の方が利益が出る可能性は高いので、リスク許容度に応じて一括もありかと思います。
 私のように積立に飽きてつまらなくなってしまった方は、積立とは別に日本や米国の個別株をやってみてもいいかもしれません。しかし正直インデックス投資のほうが長期で勝てる確率は高いです。

②iDeCO

 iDeCoは個人型確定拠出年金のことで、公的年金とは別に給付を受けられる私的年金制度のひとつです。毎月定額を積立し、60歳以降で受け取ることができます。NISAと同様、全世界株式や米国株式へのインデックス投資が可能です。NISAに比べると投資対象のファンドはさらに厳選されています。医師は一般的に退職金が期待できない職種であり、老後資金を貯めることのできるiDeCoは十分やる価値があります。またNISAとは違った節税のメリットがあります。病院により上限が変わると思いますが、私は上限の月12000円を積立しています。

 メリットは具体的に、
(1)所得税と住民税が軽減される
月12000円iDeCoで積立を行うと、年収1200万円でだいたい年間4万円くらいの節税になります。30年間で約120万円です。家族で海外旅行1-2回分にはなるでしょうか。
(2)運用益は非課税
NISAと同様、利益に対して税金はかかりません。月12000円積立、年利5%で30年間運用するとだいたい運用益500万円、そのうち100万円が非課税となる計算です。さらに海外旅行行けますね。
(3)受け取り時に控除あり
受け取り方は一時金もしく年金、あるいは併用する方法があります。一時金として受け取る場合には退職所得控除が、年金として受け取る場合には公的年金等控除が使えます。

 一方デメリットとして、
(1)60歳まで引き出せない
正直医師にとって月12000円程度は気にするものでもなく(大学院生は除く)、強制的に資金がロックされることで使わずに済むため、むしろメリットかもしれません。万が一積立が厳しければ停止や減額もできます。
(2)出口戦略がめんどくさい
控除があるものの退職金と近い時期に受け取ると税金が多くなってしまうことがあります。詳細は省きますが、興味ある方は調べてみてください。
(3)特別法人税の凍結解除リスク
こちらも詳細は省きますが、将来的に税金がかかる可能性はゼロではありません。ただ現状では令和8年まで凍結が延長されていますし、税以上の利回りは十分期待できるので、こちらも気にしなくて良いと思います。
(4)勤務先が変わるたびに変更届が必要
これが一番鬱陶しいです。医師で特に私のような下っ端の医師は1年ごとに勤務先が変わることが多いと思います。その際に証券会社へ書類請求→職場へ提出し記載してもらう→証券会社へ提出、が必要となります。これが一番面倒くさいです。めんどくさすぎて一度放置していたら、数ヶ月だけですか積立停止になっていました。

 こんなところでしょうか。iDeCoについてもSBI証券や楽天証券で口座開設がお勧めです。また元本保証のものもありますが、NISAでもお勧めした全世界株式への積立投資が最も良いと思います。年末調整や確定申告時に提出が必要ですが、住民税・所得税の軽減というNISAにはないメリットもありますので、ぜひ検討してみてください。

③ふるさと納税

 ふるさと納税はすでにされている先生は多いかもしれません。本来は住んでいる自治体に納めるはずの税金を、任意の自治体に寄付することで、寄付額の2000円を超える部分について住民税や所得税が控除されます。実質2000円でさまざまな返礼品が選べます。楽天市場のほか、さとふるやふるなびなどのサイトが有名でしょうか。
 私のおすすめの返礼品は日用消耗品です。ティッシュやトイレットペーパー、米、サラダ油やオリーブオイル、洗剤、お茶、ビールなど大量に届くので、基本的にこれらの買い物はほとんどしなくて済むようになりました。これらが味気ないという方は普段食べないような食品もオススメです。ただ調子に乗ると冷蔵庫・冷凍庫がすぐいっぱいになって怒られるので注意してください。

④医師向けのポイント活動

 m3.comやプラメド、メドピア、ケアネット、日経メディカル、MCI、エスマックス、HOKUTOなど様々なものがあります。最近は民間医局も始めたようです。毎日のログインやWEBの講演会視聴、アンケート、薬品情報などに答えることでポイントが貯まり、それをAmazonポイントや現金に変えることができます。私は一時期狂ったように全てやっていましたが、今はもうめんどくさくてほとんどやっていません。ポイ活マニアのすごい人だと今でも毎月4-5万円分のポイントになっているようです。現在はm3.comと日経メディカルの講演会のみ興味あるものを視聴し、たまにプラメドのアンケートに答えているという状況です。プラメドのアンケートは不定期で専門にもよりますが1000-5000円のものがあり、時間はかかるもののやってみてもいいかもしれません。ただ最近はどの会社もポイント交換率の改悪が相次いでおり、コスパは悪くなっている印象です。
 HOKUTOはポイントは全然ですが、診療で使う計算や抗菌薬の投与量、ガイドラインやCTCAE、各診療科の最新論文や臨床試験の内容まで、いろいろ掲載されており普通に便利です。登録していない方は下記URLから登録するとお互いに1500円分のAmazonギフト券がもらえるのでやってみてください。招待コードは、3CJSEです。

まとめ

 NISAを中心に、医師の資産形成・節税対策について私の個人的な見解を記載してみました。積立投資は時間を味方にすることがとても重要であり、早く始めれば始めるほど複利が効いて将来のリターンは大きくなります。またFXのように誰かが得したら誰かが損するゼロサムゲームではなく、みんながプラスになっていくプラスサムゲームです。みんなで仲良く資産を増やしていきましょう。
 まずやるべきものとしては、やはりNISAかなと思います。口座開設もネットですぐ出来ます。ぜひ始めてみてください。ただ2024年1月現在、米国で利下げ期待が高まっていること、日本で新NISAが始まったことなどもあり、アメリカも日本も株価は過去最高値に近い状況です。すぐか何年後かはわかりませんが、どこかで必ず調整や暴落はあります。これまで世界経済は何度も暴落を乗り越えてきています。そのことを忘れずに、慌てずに淡々と積立していきましょう。

 投資の勉強をしたいという方は、以下の書籍がおすすめです。
・ほったらかし投資術(山崎元、水瀬ケンイチ)
・敗者のゲーム(チャールズ・エリス)
・ウォール街のランダム・ウォーカー(バートン・マルキール)
ここら辺を読むと、他の投資には目移りせずインデックス投資をひたすら継続しようという気持ちになるはずです。私は目移りしまくってますけどね(笑)。インデックス投資を中心にしているのはこれまでもこれからも変わりません。

 以上になります。今回のnoteが皆さんの資産形成の参考になれば幸いです。それではまた!

 すべて無料公開ですが、note作成のモチベーションアップにつながるので、寄付いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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