博士進学を決めるまでの過程

前置き


修士卒就職と迷った末に博士進学を決めるまでの過程を、博士進学に対する様々な懸念をどのように解消していったかを主軸に書きます。
個人的な雑記ではありますが、自身が進路を迷って先人のnoteを漁ったり企業説明会で質問したりした経験から、同じように迷う人に何かしらの情報提供はできるのではないかと思っています。

この文章の読者として対象となるのは、
・就職と進学を迷う学部生から院生
・博士卒業後の進路に不安がある人
・私の個人的な悩みの過程を知りたい人(友人・知人?)
です。

更に言うと、
・進路を完全に決めている人
・博士進学→アカデミア以外考えていない人
にとっては、この文章は長ったらしいわりに得るものがないものかもしれません。ご注意ください。

自分のプロフィールは以下の通りです。
・自然人類学系
・研究室に博士学生なし
・研究自体は楽しいと思うものの、将来と金銭面の安定性がネックで修士卒就職と博士進学を迷っていた
・アカデミアに残るつもりは今のところなし

概要


過程を大きく分けると、3つになります。
①就活ガチ勢だった時(~修士1年9月)
②博士進学も悪くないと思い始めた時(修士1年9月~11月)
③博士進学への不安から進路を決めきれなかった時(修士1年12月~)

個々について詳しく書く前に、これらの過程を経て得られた知見の要約を書いておきます。
・可能性がある進路について広く情報収集をすることで、進路決定についての後悔を最小限にできた
・対面インターンに参加して得た人脈が、就活ではなく進学に役に立った
・大学主催の博士・ポスドク対象オンライン合同企業説明会が進路のイメージに役立ち、将来への懸念を減らせた
・頼れる人全員に頼ったことで、卓越大学院プログラムに応募するにあたって最大限の効果が得られた

それでは、上記の3つの過程についてダラダラ書いていきたいと思います。

本題

① 就活ガチ勢だった時(~修士1年9月)


元々、博士進学するつもりはありませんでした。大学に入って進振りで学部に内定した時は、博士に憧れを感じたものの、将来の不安定さや収入という点から、学部4年時には修士卒就職をするつもりで動いていました。
「せっかく東大に入ったんだし、ブランドを活かして大手に入って高収入を得なければ……」という強迫観念に近い気持ちがありました。

修士1年の4月1日に就活サイト(マイナビ、Labbase、TechOffer、アカリク)に登録し、NPO法人エンカレッジのメンターさんに相談しながら、夏インターンの選考を受けました。
当時の志望郡は、製薬研究職と、コンサル・シンクタンクでした。

志望理由としては、こんなかんじです。
製薬研究職:卒業研究を通して研究は楽しいと思っていたから。基礎研究に興味はあるものの応用研究には興味が無いため、職種が細分化されている方がミスマッチが起こりにくいと思ったから(化粧品なんかでは、R&Dとして採用を行うので「研究」の幅が広すぎる)
コンサル・シンクタンク:「東大ならコンサル」という風潮と、考えを形にするのが好きだから

結果、研究職インターンにはほぼ落ちました。逆に、何故か志望動機が弱いはずの大手シンクタンクのインターン(二週間・対面)に受かりました。
(元々夏インターンは倍率が高いと言われていますので、ここでは敗因を深堀しません。ただ、「企業にとって自分は必要」だとエピソードベースで記すのが出来てなかったかもしれません。あと研究内容のマッチング。逆に、シンクタンクの勝因は、「好奇心旺盛で勉強熱心」をアピールしたからではないかなと思います。)

このシンクタンクのインターンが素晴らしく、自分の興味にあったプロジェクトを提案していただいたり、同じ就活生とのコミュニケーションの機会をいただいたりしました。
一番ありがたかったのは、博士進学にも興味があることを話したことで、博士卒社員さんに「博士卒社員二名と私の座談会」を開いてもらえたことです。その時に聞いた「修士卒で就職するには区切りが悪かったから進学した」という話が、その後私が進路決定をするにあたって重要な要素になっていきました。
また、このインターンで博士卒就職予定の同大学の方と知り合いました。その方のお話から、博士卒でも就職先に幅広い選択肢があることを知り、ネックであった「博士卒は就職先がない疑惑」が少し解消されました。

このように、就職活動のためにインターンにいったはずが、何故か博士進学の後押しになる材料を得るという結果となりました。業界や選択肢を絞らずに、情報収集のためと割り切ってインターンに応募して良かったと思います。

②博士進学悪くないと思い始めた時(修士1年9月~11月)


シンクタンクインターンを通して、「博士卒は就職先がない疑惑」が少し解消された私は、更なる博士卒の就職情報を得て安心したいと考え始めました。

そこで参加したのが、大学主催の博士・ポスドク対象オンライン合同企業説明会です。
参加企業は、製薬企業(内資・外資)、特許事務所、産総研、シンクタンクなどでした。
幅広いラインナップと、企業によってはすぐに選考に進むことも可能な空気感に安心した記憶があります。あまり参加者が少なく、ルームの発言者が私一人のような時間もあり、質問もさせていただきました。

印象としては、こんな感じです。
特許事務所:研究の専門性ではなくソフトスキル重視
製薬企業:研究のマッチング重視

製薬企業のような研究マッチングがあるものには多少不安があるものの、ソフトスキルを買ってくれる企業がきちんとあると分かり、「博士卒は就職先がない疑惑」が解消されたイベントでした。

大学主催のキャリアイベントの中にも、ピンポイントで役に立つものがあるので、キャリアサポート室のツイッターはフォローしておくと良いと思います。

③博士進学への不安から進路を決めきれなかった時(修士1年12月~)


秋・冬インターンや座談会では、製薬系研究職の話を聞く機会に恵まれました。

そこで思ったこととしては、以下のような感じです。
・異動などで望む仕事が出来る保証がないのであれば、もう少し研究を続けたかったと後悔をする可能性がありそう
・就職すると自分で全ての工程をマネジメントする機会はあまりなさそうなので、もう少し今の環境で経験を積みたい
・製薬ではあまり機会がないとされる、論文を書いたり対外発表をする機会をもう少し楽しみたい

インターンや座談会に博士卒・ポスドク出身の社員さんがいたことや、製薬企業では博士のみを対象とした採用があることから、話を聞けば聞くほど「研究を続けたいと思っているのに、今就職する必要もないよな」と思うようになりました。

・博士進学して就職先はあるのか?
→ソフトスキルを重視するコンサル・シンクタンク・特許事務所や、研究マッチングはあれど博士採用枠がある製薬企業を受ければ良い
・博士就活での研究マッチングに突破できるか?
→今の研究テーマなら、うまく売り込めばどうにかなりそう

とりあえず、博士進学しても「あの時企業に行っておけば良かった……」と後悔しない程度の情報収集はできたと思います。

残った問題、それはお金でした。
進学すると、追加で3年分お金がかかります。
ものすごく大雑把に学費や入学金を計算すると、合計150万から200万くらいになるでしょうか。
貯金を崩したり奨学金を借りたりすればどうにかなるのは間違いないのですが、不安要素ではあります。

そこで、卓越大学院プログラムに応募することにしました。
先輩の伝手で複数人から申請書を見せていただき、申請書・プレゼン資料の添削を研究室内外問わず先生と先輩にお願いしました。
見せていただいた申請書:3つ
申請書添削:5名
プレゼン資料添削:4名
上記のように、完全に先人の知恵に頼りまくり、修正を繰り返しました。

そのプロセスが報われたのか、プログラムに合格をいただくことができました。
これで、修士2年では月8万円、博士では月18万円のお金がもらえることになりました。
お金の問題も、解決といっていいでしょう。

まとめ


以上の過程をもって、私は博士進学を決めるに至りました。
優柔不断であったり覚悟が半端であったり、客観的に微妙な部分はあるものの、良い選択ができたと思っています。少なくとも、苦しくなった時に「あの時ああしておけばよかった……」という後悔は最小限にできたと思います。少なくとも、23歳の自分にとって一番楽しいと思える進路はこれだったのは間違いないので、引き続き頑張りたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?