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ずっと夢見てた世界へ【ヴァグラント 観劇レポ】

9月16日。ポルノグラフィティ新藤晴一プロデュースのミュージカル『ヴァグラント』ようやく観劇することができました。


私の晴一さんに対する思いや、ヴァグラントに対する期待は、以前の記事に綴った通りです。

ちゃんと体調崩さずに見に行くことができたよお母さん!


TLで何度も見かけた旗(名称分からない)


会場前のポスター。
光に反射して佐之助が二人とも見えない…


9月16日のキャストボード


開演前に撮影した舞台




地下鉄に揺られているあいだも、サンドイッチ屋さんで腹ごしらえをしているあいだも、物販に並んでいる時も、そして座席についた時も、震えが止まりませんでした。
今まで観劇する時の私は楽しみすぎて震えたりしていたけど、この日震えた理由は「緊張」に近かったと思います。

ようやく晴一さんの世界をこの目で見られるのかと思うと、背筋がピンと伸びる思い。そして、散々晴一さんのレポに楽しみだ楽しみだとコメントしてきたけど……本当に楽しめるだろうか、という少しばかりの不安。
いくら推しが作った舞台だからといって、私が好きだと思えるかどうかは別問題です。
偽りの言葉を使ってまで褒めるようなことはしたくない。それは晴一さん及びヴァグラントに関わる全ての人たちに対して一番失礼な行為だと思う。もし思っていたのと違った場合は、残念だけど無理にnoteに綴るのはやめよう、と思っていました。

……はい。こんな前置きを入れたということは。


そうです。めちゃくちゃ面白かったんです。
感動しっぱなしでした。やっぱり、晴一さんは凄かった。
ミュージカル制作を経験したことのなかった人が0から作り上げた舞台だとはとても思えませんでした。それくらい骨太で、並々ならぬミュージカル愛と、お客さんを楽しませようという熱意が伝わってくる。

勝手なイメージですが、もっとダークだったり、ディープだったりするのかな、と思っていました。今読んでいる『時の尾』がそんな感じだし、『ルールズ』みたいに晴一さんワールドが爆発してる感じなのかなぁ、とも。

もちろん晴一さんワールドは随所に感じられてニヤッとしたけれど、想像以上にエンターテインメントって感じで。老若男女問わず、そしてミュージカル初心者という方にも楽しめるように計算され尽くされている、という印象がありました。


お話の内容はとても硬派でシリアスです。お金の話だなぁ……というのが率直な感想。米騒動を主軸として、ヤマの人々のすれ違う思いを泥臭く描いている。物語終盤まで、ほとんど笑いはなかったように感じます。(署長がアドリブ(だよね?)で笑かすシーンくらいかなぁ…)
それでも暗い気持ちに引きずられることがなかったのは、見た目にも華やかな芸能の民マレビトたちの存在のおかげなのかな。マレビトの佐之助は主人公なんだけど、物語の立ち位置では「手助け」をする役割だというのがすごく興味深かったですね。

私、佐之助が大好き。とても明るく無邪気に見えて、暗い影を背負っていて時々それに苛まれてしまう。それでもにっこり笑顔を貫き、もっと知りたいからだと言って、心の奥底では恐怖を抱いてる人間たちに自ら突っ込んでいく。
2幕でほんのりぼやしながらも佐之助の過去は語られるんだけど、『マレビトの矜持』で回る舞台を這いずり回った後ににぱっと笑顔を作る佐之助を見た時、彼の全てが伝わってくるようで、その時点で私は佐之助が大好きになっていました。

物語は負の連鎖が続きます。人々はいがみ合いが止められず、どんどん悪い方向へ。でも、最後はきちんと華やかで希望に溢れた大団円で締めくくられる。

トキ子、政則、譲治の幼なじみ三人は『月の裏側』で一瞬だけ幼い頃の姿を見せます。無邪気に笑い合い、夢を語り合った幼い頃の記憶が衣装もそのままの大人の姿で再現されます。しかしそれは本当に一瞬だけのシーンで、そこから大団円直前まで、三人の関係はぼろぼろです。
だからこそ、『祝い唄』リプライズでの三人の弾けるような笑顔と、旅立とうとする佐之助と桃風に力いっぱい手を振る三人の姿で、私の胸は震えました。
中でもトキ子は、あの絵本のシーンまでずっと頑なで、誰も寄せつけようとしない、孤高な印象のある女の子でした。でも、祝い唄で政則に告白された時や、佐之助・桃風にぴょんぴょん飛び跳ねながら手を振る姿はキャピっとしていて、あぁ、これが本来のトキ子なんだ。彼女はようやく本来の自分に会うことが出来たんだ、そう思うと胸が締め付けられました。今までよく頑張ったね、トキ子……。


もちろん巧みなストーリーだけではなく、ミュージカルにおいて最も重要な音楽面も素晴らしかったです。というか、私は音楽に一番驚かされました。
全曲、晴一さんが書き下ろしています。……本当に?本当に全曲? そう疑ってしまうくらい、曲の振り幅がとんでもなかった!!

晴一さんの歌詞のすばらしさは言うまでもありません。晴一さん作曲の曲で大好きな曲はたくさんあります。でも、私はこれほどまでに晴一さんが四次元ポケット並の曲の引き出しを持っていただなんて知りませんでした……。

いかにもミュージカルという曲もあるし、ポルノグラフィティを彷彿とさせる曲もあるし、バラードも、お祭り騒ぎな曲も、バチバチにかっこいいラップも、演歌調のも、レゲエ調のも、80年代のアイドルが歌ってそうな曲も、たくさんのジャンルがぎっしりと二幕に詰め込まれてる。

これは個人的な見解なのですが、ミュージカルって「曲と芝居の境界線がはっきりしているミュージカル」と、「曲と芝居が溶け込みあっているミュージカル」の二パターンがあると思うんですよね。ヴァグラントはどちらかというと後者のような印象がありました。
曲の入りがすごく自然で、芝居から音楽へ違和感なくすっと入り込める感覚があったんです。

どの曲も好きだけど、やっぱりトップクラスで好きなのは『祝い唄』かなぁ。稽古場動画の時から「この曲好き!」って思ってましたが、生で聴くとやっぱり違う。踊りたくて体がムズムズしました。晴一さんも東京公演のカーテンコールの時に踊ってたし。
『おふねのえんとつ』では譲治に心奪われ、『丸をつけましょう』は晴一イズムを全身に感じられて胸が熱くなり、『サンバラムハラ』が頭から離れられなくなり……
マジでCD出してくれ〜〜。もっかい全曲通して聴きたいよぉ。


カーテンコールでは、この日の佐之助役だった平間さんが「ヴァグラントは皆の記憶の中にしか残らない」という話をされていました。晴一さんは、次回作への挑戦を何度かnoteで匂わせています。
あぁ、もしかしたらヴァグラントのみんなに会うことはもうないのかもしれない。そう思うと寂しいけれど、でも舞台の良さってそういう儚さも含めてなのかもしれない。
もちろんこの先で映像化したりするかもしれないけれど、実際に生で見た時の記憶とそれは全くの別物なんですよね。全身を使って体感した記憶というのは何にも変えがたくて、そして一生身体に刻み込まれるものです。もちろん舞台以外でも同じことが言えると思います。ライブとか。

それを、私の大好きなミュージカルという方法で、私の大好きな晴一さんが見せてくれたこと、感じさせてくれたことがとても嬉しいです。心の底から楽しかった、面白かったと思えたことが本当に嬉しくて仕方ありません。
夢が叶いました。晴一さんの世界を見たいという夢が。観劇から二日経った今もめちゃくちゃ嬉しい。
そしてこのヴァグラントもまた、晴一さんが叶えた夢。なんて美しい物語なんだろう。


舞台の儚さについて語ってしまった直後だけど、また大好きな佐之助たちに会えることを願って。
素敵な舞台をありがとうございました。
丸をつけよう!

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