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好きだった先生にラブレターを送った話

高校三年生の時、学校の先生に恋をしていました。
っていっても、担任とかではありません。(担任のことも大好きだったけど)
むしろ全然関わりがないし国籍も違う、ALTの先生でした。

仮にA先生とします。
A先生との出会いは夏休み明けです。
ホームルームが始まり、私は廊下側の窓際の席だったので、ぼんやり窓の外を見ながら、時間よ戻れ8月1日くらいに戻ってくれと現実逃避していました。

すると、見慣れない男の人が颯爽と廊下を通りすぎていくのが見えました。横顔だけでもイケメンだと分かり、しかもモデルのようにスラッとした男の人。びっくりした私は一気に目が覚めてしまい、移動教室の際に慌てて担任の元に駆け寄りました。

「あの、さっき、めっちゃかっこいい人がいたんですけど、誰ですか!?なんか外国の人っぽかったんですけど!」

「ALTの先生のことかな?今日から転任してこられたんだよ」

私の通っていた高校は職業訓練校で、授業も職業訓練が主だったので、英語は一年生の時しか受けられませんでした。それも、カルタゲームとか洋楽の合唱をしたりとか、授業の内容も軽い感じ。

なので私はA先生の授業を受けることはなく、廊下ですれ違うか、職員室に用があった時にちらっと見かけるか、それくらいしかできず。

でも、A先生のこと、ものすごく好きでした。
ティモシー・シャラメ似でラウールみたいなスタイルの先生がいきなり女子高生の目の前に現れたらどうでしょう、ぽーってなるのも無理ないと思いませんか?
中高、ずっと失恋続きでもう恋愛は懲り懲りかもと思ってた私が、残りわずかの高校生活で再び恋愛を経験することになろうとは。
月初めに貰う月間の予定表に書いてある「ALT来校」の日にはいつもチェックを入れて、心を踊らせていました。

1クラス10人程度の小さな学校だったので、私がA先生を好きだという事実は瞬く間に学年中に広まってしまいました。しかも、隣のクラスの先生にまで。
昼休み、同じ専科の男子たちが私の元に駆け寄ってきて「A先生今廊下におんで!!」と報告しに来たりとか日常茶飯事でした。余計なお世話やっちゅうねん。そう思いながらもいそいそと見に行ったり。

そこから初めてA先生と言葉を交わしたのは12月くらい。やっとです。
一人で廊下を歩いてると、向かい側からA先生が歩いてきて、びっくりして狼狽えてたら「Good morning!」と明るく声をかけられました。
「グッモーニン!!」と思いっきりカタカナ英語で返事をすれば、A先生は大きな体を縮こまらせて、手を擦り合わせて「寒いですねぇ!」と話しかけてくれました。
その時のA先生の笑顔と可愛い仕草をずっと覚えています。
先生が去った後、嬉しさが抑えきれなくて地面をドスドス蹴ったことも。(怖い)

結局、A先生と話したのはそれが最初で最後で、あっという間に卒業シーズンとなりました。
卒業式の2、3日前、私は近所の文房具屋さんで寄せ書き用の色紙を買いに行っていました。寄せ書きは卒業アルバムに書いてもらうのが鉄板だと思うんですけど、うちの高校のアルバムはそれが出来ない作りになっていたので、みんなそれぞれ家から持参するんです。

私の買った色紙は色とりどりの風船を模したシールが付属でついていて、そのシールに寄せ書きを書いてもらって色紙に貼り付けると、風船の花束が出来上がるというものでした。
誰に書いてもらおうかな、と色々考えていて、そこではたと気が付きました。

A先生にも書いてもらいたい。私の青春を彩ってくれた人だから……。

それを思いついてからはもう止まりませんでした。急いで小さめのレターセットを買い、A先生宛にお手紙を書きました。
今まで、英語をきちんと習ってこなかった私です。文法すら全く分かりません。でも、時間がないから、他の先生に読まれることを覚悟の上で開き直って日本語で綴りました。
A先生は私のことなんて覚えてないだろうから、軽く自己紹介から始めて、A先生を好きだったこと、A先生を見かける度に元気が出たこと、A先生に会えて良かったという感謝の気持ち、そして同封しているシールに一言でもいいのでメッセージを書いて欲しいとのお願いを添えました。
生まれて初めて書いたラブレターです。

卒業式の朝。すごく恥ずかしかったけど、担任に事情を話して封筒を預かってもらいました。
それから数週間後の離任式の時です。朝イチで担任から「メッセージ返ってきたよ」と小さな便箋を受け取りました。冷やかされてばかりの恋でしたが、担任だけはこの恋路を最後まであたたかく見守ってくれてたなぁ。

待ちきれなくて、帰りのバスの中で封筒を開けて中身を確認しました。小さな風船のシールには、一言だけでいいと手紙に書いたというのに、びっしりと全文英語のメッセージが詰まっていて死ぬほど驚きました。

家に帰って、必死に翻訳アプリに一文字一文字打ち込みました。分かりやすい英語で書いてくださっていたのか、メッセージはすぐに解読できました。

__かわいいお手紙をありがとう。僕の心はあたたかくなりました。

この書き出しにどれだけ心震えたか。たくさんの優しい言葉がピンク色の風船に並んでいました。名前のところにはお茶目にハートマークがついていたりして。
今まで片想いと失恋しか経験したことのなかった私にとって、それはまるで恋が実ったかのようでした。
ずっと空けておいた色紙の一番上のほうに貼って、風船の花束は完成となりました。



はい。甘酸っぱい想い出の詳細、こんな感じでした。

今の私は、これまたモデルさんみたいな年上イケメンに夢中なので(そうだよイケメンに弱いんだよ) この思い出は心の奥底にしまいっぱなしになってたんですけど、こうして改めて振り返ってみると本当にいい恋愛だったなぁ。

多分もう二度とA先生には会えないと思うけど。
先生がどこかで元気に笑っていますように。


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