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自由学園明日館を訪ねて

休暇を取った日、用事を済ませてランチをしました。
まだ、午後1時にもなっていない。

さて、どこに行きましょうか。

いつか行きたい、いや、行くべき場所、と思っていた「自由学園明日館」に決めました。

池袋駅から普通の住宅街を歩き、本当に道は合っているか不安になった頃に、案内が見つかりました。その通りに進んで行くと、到着です。

なんて、素敵な学校でしょう!
自由学園は、大正10(1921)年に羽仁夫妻によって創立された女学校です。
「知識の詰め込みではなく、自ら考え学ぶ力をつけることや、生活即教育をモットー」としていた、と案内に記載されていました。

現在の学園は、郊外の東久留米市に移転しています。
明日館は重要文化財であり"動態保存"つまり、使いながら文化価値を保存しているそうです。
(各種教室、講演、コンサート、ウエディングに活用されている)

明日館

建物は、旧帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトと、その弟子の遠藤新によるものです。
学校の創立は、1921年ですが、建物は数年かけて徐々に作られてきたようです。およそ100年の歴史があります。

受付を済ませて、振り向くと、こんな感じです。

少し角度を変えて

この正面が玄関でしょうか。

右の建物は、柱が並びアーケードになっています
印象的な、入り口の木
ドアのデザイン

でも、すぐにこのドアから入らずに、まずは「婦人之友社 羽仁先生記念展示室」へ向かいます。

窓のデザイン
古い時代の椅子(ミュージアムショップで、復刻版が販売されています)

次に、先ほどのドアから入り、最初の教室「大教室としま(豊島、のことかな)」を見学しました。

教室だった場所

正面には黒板があり、ミルク色の壁に濃い色の木材がモダンな線を描いています。壁と同じ色の天井は、三角。
庭に面した窓が連なっています。

窓ガラスの古いものが残っている部分は、少し歪んで波打ったように見えて、はっきりわかります。
こういうガラスは、今はない”祖父母の家”を思い出させるもので、グッとくるんですよね。

説明を読むと、当初この教室には照明がなかったそうです。窓を大きく作って、壁・天井を白くしても、曇りの日や雨の日は暗かったでしょうに。

窓からの眺め

教室を出て、奥まで続く長い廊下に心掴まれました。
ホールのドアが開いているので、廊下が続いているように見えるのです。

長い廊下(ホールを越えてさらに廊下に続く)

ホールには暖炉がありました。
生徒に家庭的な雰囲気を感じさせるために作られたとか。(ライトのアイディアでしょうか。当時の生徒は”初めて見た”、という子も多かったのでは)
今は、年に何回か火を入れるそうです。

暖炉がありました

このホールは、女学校時代は毎朝の礼拝の場だったそうです。
大きな窓からの光と、大きな木と幾何学的な窓枠との複雑な調和があって、神聖な気持ちになれます。

この建物を象徴する窓
創立10周年で生徒が描いた「出エジプト記」の壁面

近づいて、壁画に描かれた人物をよく見ると、とても優しい、可愛らしいと感じる表情をしています。当時の生徒が一生懸命に描いている情景が目に浮かぶようです。

かわいらしい椅子の2色のリズムが良き
石の柱

所どころに石の素材が使われています。これも、旧帝国ホテルとの共通点なのでしょうか。

2階に上がると、吹き抜け部分からホールを見下ろすことができます。

2階から見た窓

また、ミニミュージアムがあり、フランク・ロイド・ライトと明日館に関する資料が展示されています。当時の写真や、歴史の説明もありました。
下の写真の女学校の様子を描いたイラストに見入りました。

どのように使われていたかわかります

こちらは、2階の食堂です。
クリーム色(他の部屋と同じなのでしょうが、少し暖色に感じました)の壁や三角の天井に対応して、壁の線と照明、床、机や椅子も濃い茶色に色を合わせています。窓のデザインも建物全体を通して統一された世界観となっています。
天井に近い窓もあり、照明は控えめですが、暗く感じませんでした。白い明るさではなく、優しいあたたかな色の光です。

食堂

部屋の反対側を見ると、このようになっています。

窓からの光の入り方が印象的

ライトがデザインしたという照明です。

照明が個性的

窓からのぞく真夏の空がまぶしいです。(9月ですけど、真夏の気候)

高い窓から見える空

食堂の窓からは、屋根を近くに見ることができます。
写真の中央あたりに廊下の天井に設置された”明り取り(あかりとり)”があるのがわかります。四角い形になっています。

屋根はこんな感じ

1階の廊下に出て、先ほど見た四角部分の下から照明を見上げました。

照明と、天井からの自然光の組み合わせ

また、外に出ました。
この建物は、複数の出入口があります。大きな玄関ではなく、同じサイズの玄関が4か所ありました。

建物から出て、庭を眺める
振り返って建物を見ると、背景がビルばかり

事務所として使われている部屋です。出窓になっていて可愛らしいです。

事務所の窓が開いていました

いったん、明日館の敷地を出て道路を渡ると、「講堂」があります。
この建物は、生徒数が増加したため、のちに建てられたそうです。

道を挟んだところにある、講堂
舞台を望む
講堂にも暖炉がありました(控室のような部屋)
2階に上がると、テラスがありました
2階からの眺め

また、1階に戻りました。
驚くことに(今は展示のみですが)建設当時のトイレが残されていました。当時は珍しい水洗トイレです。

舞台の方に歩いて、振り返って見た風景です。

舞台下(舞台には上がっていません)からの眺め
窓のデザイン

小さな学校とはいえ、見学可能な部屋を巡るだけでも充実感がありました。この後に、ミュージアムショップもじっくりと楽しみました。

私は普通の都立高校の出身ですが、その学校は、元は府立(東京府だったころ)の高等女学校でした。(戦後に共学となり、私が在学していた時は男女半々でした)
その前は、私立の女学校だったそうで、創設された先生の胸像が校庭の片隅にあったことを覚えています。
けれど、私の在学中の校舎は、普通のこれといった特徴のない鉄筋コンクリート造であり、創設時の面影は全くありません。
古い校舎は戦時中、空襲で焼けてしまったそうです。
それだけに、明日館に対して少しの羨ましさと、妙な親近感があったのかもしれません。(おこがましくて、ごめんなさい)

紅茶とクッキー🍪

喫茶付きの見学券でしたので、食堂で紅茶と”東久留米の自由学園で作られたクッキー”をいただきました。
素朴で正統派の美味しいお味です。

そして、お茶を飲みながら、この校舎に女学生達がいたころをイメージして、もう一度、食堂を眺めました。
楽しいおしゃべりや、明るい笑い声があふれていたのでしょう、ね。

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