京響第692回定期演奏会
初めてのマーラー 交響曲第3番ニ短調
8月23日の金曜日の晩と24日の土曜日の午後の2回、京都市交響楽団の定期演奏会に行ってきました。曲目は、マーラー 交響曲第3番ニ短調…マーラーの交響曲はどれを取っても長いですが、この交響曲は100分を超す大曲です。私もマーラーに魅了されて、かなりの年月を重ねていますが、初めてライブで第3番を聴くことが出来ました。
そして、この定期演奏会は2022年の3月の指揮者広上淳一さんの常任指揮者としのラストコンサートになるずでしたが、当時の新型コロナウィルスの影響より結果的に24年8月(今回)まで待つコンサートになりました。
初めて3階席から聴く
この長い交響曲、マーラーの作品の中で個人的には一番好きかもしれません。最初は「なんだこの音楽」って思って聴いた第1楽章でしたが、いろんなものをテーマ盛り込みつつ、少しずつ行進曲が出てきて、さらにその行進曲から弦楽器が謡うようになり、気分が高調させて大音量の中で終わるこの楽章が締め括られ、やっぱりカッコいいんです。いつの間にか、大好きな曲になりました。恐らくマーラーは嫌いという人は、多分この楽章は絶対ダメじゃないかなぁと思います。
でも、個人的にはこの交響曲を次にいつ聴くことができるのか分かりませんので、思い切って両日の公演を聴きに行くことにしました。
そして、両日の公演ともにチケット完売とやはりマーラーが取り上げられるプログラムの人気がうかがえます。演奏会後にX(旧ツィッター)を見ていると、全国各地から色んな方が聴きに来られていたようで、マーラーの人気ぶりが分かります。
全くクラシック音楽に興味の無い方は、楽章という概念はあまりピンと来ないと思いますが、楽章それぞれが急-緩-急といった曲の区切りのようなもので、これがひとつのまとまりになって曲を構成しています。この仕組みは年代を経るに従い、徐々に変化をして行きます。そして、この交響曲については6楽章まで拡大され、楽器の種類や人数も増えて、さらにアルト独唱に少年合唱に女性合唱もありというとんでもない交響曲です。
先ほども100分と書きましたが、この交響曲は楽器の種類が多く、一体今は何の楽器が鳴っているのかなどを見ているだけでも楽しく、あっという間の時間です。そして、要所要所によって聴かせどころがあり、感動が続きっぱなしです。
今回は公演を2回行くので普段聴く場所と一日目は3階、ステージを右から見える場所にしてみました。ヴィオラ奏者の方は約半分、コントラバス奏者の方は全く見えない位置でしたが、指揮者 広上さんに、コンサートマスターの石田泰尚さんは真正面だし、木管楽器、金管楽器、打楽器奏者の方たちも良く見えるし、ここからも最高だなと思いました。
中間楽章での「ポストホルン」
そして、3楽章では「ポストホルン」が鳴るすぐ近くの席でした。マーラーの交響曲の楽しさは、バンダ(舞台上の演奏とは異なる場所での別動隊の演奏)が多用されることです。このポストホルンはこの楽章の中間部に現れるのですが、主部での木管楽器がテンポよく楽しそうに奏しながら、その音楽が一旦静まると弦楽器がピアニッシモで支えながら、ポストホルンが天上の音楽のようにホール全体を響かせます。1日目はすぐ後ろで奏でられたので良く聴こえ過ぎるというのが本音ですが、2日目は1階席から聴いたのでまさしく天から降り注ぐといった感じになりました。そして、二日目はこの音に泪が少し出てきました(演奏後の皆さんの呟きを見ていると、結構”泪”の人は多かったようです)。
最終楽章 Langsam. Ruhevoll.Empfunden
第6楽章 ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情をこめて
この楽章のために、この交響曲は存在すると思います(あくまでも個人的な意見です)。その前の第4楽章、第5楽章は声楽と合唱が加わって、人間の罪というものを歌います。キリスト教的な罪についてなので、正直キリスト教圏の文化を分からない私にとっては難しい詩が続きますが、第5楽章の合唱が”ビム・バム!ビム・バム!”と静かに歌い終えた後から湧き上がるように弦楽器が出てくる時は、何か気を張った時間から穏やかな解放された感じになります(本来は4・5・6楽章は続けて演奏されるようですが、今回の演奏会では、指揮者 広上淳一さんは少し休止を入れられました)。
第6楽章は最後(フィナーレ)に向かって、主題が繰り返されながらうねりになって盛り上がっていきます。広上さんは楽章の指示通りに、本当に感情を込めて指揮をされていて、それを見ているだけでも音楽にどんどん引き込まれていきます。最後はトランペットの弱音が微かな光になって、その後弦楽器が受け継ぎ、木管楽器・金管楽器が加わって、一番の盛り上がりでシンバルが鳴ると、凄まじい音量がホールに響きわたります。
マーラーという作曲家は指揮者でもあったので、曲の盛り上げ方や聴衆の期待に応えようといった音楽を分かって作っていたと思います。そこには広上さんという指揮者がいたからですが、曲が終わった後は聴衆は間違いなく感動の渦に巻き込まれていました。「鳴りやまない拍手とブラボーの嵐!」ホールにいた人たちとこの音楽を共有できたこと、最高でした。
スピーカーから流れる音も好きですが、ホールに足を運んで実際にそこで流れる実際の音を体感できること、これが全てです。