負けられない戦いを巡る4雀士の軌跡~前編~
再びの「EX風林火山オーディション」
EX風林火山のスペシャルスパーリングパートナーとして位置づけられるサブメンバーを募集すべく企画された選考会「IKUSA」へのプロ雀士のエントリーは200名以上となった。
5月1日まで行われる予選で各選手が16戦を打ち、上位7名が準決勝に進出。準決勝残り1枠はアマ大会優勝者が選抜される。
純粋にMリーグと関連する組織の一員になることも大きいが、このような大会で上位に進出することは自分の存在を大きくアピールできることは明らかだ。
・・・以下読みやすさ優先のため雀士の「プロ」表記を省略します・・
鳴きテロリスト
佐月麻理子は日本プロ麻雀協会に所属する女流中堅の雀士。女流雀王を2期制し、日本プロ麻雀連盟主催の麻雀マスターズで優勝のキャリアを持ち、「鳴きテロリスト」の二つ名を持つ。
この日は1試合目でほぼ1人でマイナスを背負って4400点持ちの4着となってしまうが、2試合目には1試合目の結果を許すまじと前のめりに攻めまくり56100点持ちの大トップを獲得。一転3試合目には箱ラスを引いてしまう。出入りの激しい麻雀で、トータルはマイナスとなって第4試合を迎える。
16戦で争われる本選考会の予選の戦いのボーダーラインは350~400と予想され、それを前提に考えると16試合のうち各自が保有する優遇ポイント(SNSフォロワー数に基づく)で差はあるが、6試合以上トップに立つ必要がある。つまり、1試合でもラスを引くとトップを取る回数がより必要になるし、上位進出が難しくなっていく。
佐月はスタート3試合で2戦ラスを引いてしまったため、この4試合目は何が何でもトップが必要だ。
東荘スタートとなった佐月は1局目の序盤から萬子の塔子を切り捨て一気に混一に舵を切った。なんとしてもこの4局目で流れを変えるべく、がむしゃらに高打点を目指す。
その後、何とか手配は筒子で埋められた。聴牌にもたどり着く。上がり牌も山にあった。
しかし、上がりまでは至らず。王牌に吸収されてしまう。
連荘の一本場では佐月同様本日調子が上がらない大和に大きくツモアガリされ親かぶり。次局も好手牌が入るが早々に聴牌した友添に上がられ局が進む。
東3局はまとまった手配が入るが、同様に手がまとまっていた友添・浜野との競争となり、先に友添と浜野がリーチ。結局浜野が友添に放銃しての横移動。佐月の上がりは出ないまま友添が連荘。
そして東3局1本場を迎える。
不沈艦ヤマト
大和は日本プロ麻雀連盟に所属するやはり中堅雀士だ。
元祖イケメン雀士である
モデル出身の雀士は今でこそ見かけるがその先駆けともいえる存在が大和だ。実力でも日本オープンのほか、2019年麻雀最強戦の予選を突破してファイナルに進出している。
大和はこの日、佐月同様に厳しかった。3着・4着・3着でいずれもマイナスポイントを背負っての4試合目を迎える。この試合を入れて残り13試合、通過するにはここから8試合はトップは必要だ。この4試合目でトップを取れなければ残り12試合はさらに過酷な条件になる。
東1局の大和の手は悪くはなかった。しかし、親の佐月の明らかな混一気配の進行を察知して引き気味の進行に。一縷の可能性をかけて面子手を捨てて七対子を模索するが、最後は佐月を警戒して引き、ノーテン。
東1局1本場にまとまった手牌が入り赤と字牌だが1枚ドラもある。
この局は早々に仕掛けを入れた浜野がタンヤオで早々に聴牌。一方、大和は打点を考慮してずっと残していたドラの西を何とか重ねることに成功。何とか聴牌を入れ狙っていたリーチにたどり着いた。そして、ここまで耐えに耐えてきた大和の”波動砲”がついに火を噴く。1sを一発ツモ。しかも、序盤に対子にして結果的に暗刻になった2pに裏ドラがのって倍マンを和了。実況の椿pをもってして「これを見たかったのよ」と言わしめた超大物手を炸裂させる。
続く東2局大和の親番はドラを含んで打点が見込めたが早々に聴牌した友添に浜野が放銃。大和の親番は流れた。
次局の友添の親番では5巡目で七対子の一向聴に。どうもこの日は縦に牌が伸びる。この局も友添と浜野がぶつかり友添に軍配。
不気味に忍び寄る友添の気配を感じながらトップ目の大和は東3局1本場を迎える。
二つ名がまだない男
慶應義塾大学卒という輝かしいキャリアを持ちながら、そんなキャリアは意味をなさない日本プロ麻雀連盟に飛び込んだのがこの男だ。ネット上を探し回ったが今のところ二つ名は見当たらない。
この日の太陽は絶好調。1着・2着・1着でSNSフォロワー数の加算も含めて4試合目開始時点で+198.6ptを獲得し、ボーダーと考えられる+300~+400も視界に入っている。
この4戦目でさらにポイントを上積みできるかが勝負。ここでラスを引くようなら絶好のスタートダッシュとまでは言えない平凡な結果となってしまう。
しかし4戦目の太陽には厳しい展開が待ち受けていた。
東1局こそ佐月の聴牌気配を察して引いて流局したが、次局は仕掛けて上がりを取りに行くがなかなか上がれず、遅くに聴牌した大和の大物手での一発自摸を喰らってしまう。
しかし次局も中をしかけてめげずに上がりを取りに行く。中に続いて東も鳴けて満貫の聴牌。
しかし、その聴牌の直後に太陽の行く手を塞いだのは友添だ。友添は3・6s待ちでリーチ。直後に3sをつかまされたのが太陽。
友添の河は索子が高い。
一方太陽も満貫手。
ためらわずに3sを打ち抜いた。
友添の手が倒されリーチ・一発・赤からの点パネで6400の放銃。
4試合目開始からいまいちの配牌が続く太陽にようやくまとまった手が入る。早々に一向聴になり、3・4・5三色からの赤・赤が見える。
しかし、またも行く手を塞ぐものが現れる。友添だ。一歩先に聴牌を入れリーチをかける。一歩遅れて太陽にも聴牌が入る。
友添の上がり牌は山に3、太陽の上がり牌は山に1。太陽は友添の当たり牌3mをつかみ放銃。
太陽はダントツのラスとなり持ち点は4800点まで減り、東3局1本場を迎える。
~後編に続く~
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