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負けられない戦いを巡る4雀士の軌跡~後編~

ぶつかり合う4者


東3局1本場

流れを変えたい太陽にまとまった手が入るが、ここで大物手が入ったのが大和。九蓮宝燈も見える一色手。

ここで大和が胆力を見せる。

喉から手が出るほどほしい9mを鳴かずに耐え、面前聴牌を目指す。仕上がれば倍マン。間に合うかが問題。

しかし、北を重ねて面前混一を聴牌させる。(ペン7m待ち)

2人目の聴牌は佐月。絶好の嵌張から入って3・6sの両面聴牌。大和の聴牌気配も気になるが、佐月もここが勝負所。

大和が佐月に危険な牌を押す。これで大和の聴牌も可能性として浮上した。

そしてやってきたのが友添だ。親の友添もドラの2pを暗刻にして手を進めていたが、チー聴してタンヤオ・ドラ3で12000の聴牌。やはり仕上げてきた。黙っているということを知らない男だ。

そして残る一人太陽は3人の高打点気配もあり撤退を余儀なくされている。しかし、問題はどう降りるかだ。

唯一リーチしている佐月への現物7mがあるがこれはダマ聴している大和の当たり牌。

解説の浅井p「7mしかない」とコメント。大和の河にヒントがなさ過ぎる。萬子の染め手で第二打に1mが切られているのが秀逸すぎるのだ。そもそも聴牌していない可能性もある。

とりあえず9mを選択しいったんは難を逃れるが、続いて超危険牌6mを掴んでしまう。安牌は0。もう7mしかない。

ただ、ここで太陽がやや小考する。佐月には通る。だが、本能的に7mに相当の危険性を感じているのか。いずれにせよ、これ以上の失点は避けたい。

「いや これは(打7m以外)無理でしょう」

浅井pが短くコメント

上家が大和の混一ペン7m聴牌の河
普通に萬子が何枚か切られている


小考の太陽 7m打つのか?

簡単には打たなかったが、打たざるを得なかった。大和への放銃は面前混一・一盃口で8000点。箱下に転落。

大和もリーチしていればこの7mは出ていたか分からない。まるで岩陰に隠れて獲物を待つライオンの狩りだ。

Everything goes wrong


箱下となった北家太陽の親番。手は入ったが、この局もやってきたのは友添。手は良いとはいえないが、何だかんだ仕掛けも入れてチー聴にたどり着く。今回も掴んだのは太陽で3900の放銃。

アフロが太陽をたたき落とし、親番もあっさり流れた。

南入して佐月が13巡目に聴牌を入れる。太陽は一向聴から聴牌する気配がない。上がりをとったのは大和だ。今回もダマからの上がり。友添の接近を感じながらもトップを守る。

南2局の大和親番。全員手は悪い中、またもアフロが動く。友添が意味不明な鳴きを入れ、他荘に警戒を迫る。だが、実は人一倍手が悪かった。ブラフの鳴き。一局でも黙るつもりはない。

太陽は面子手に進行していくが中盤以降何も引かない。一人だけ別のゲームをやっているように必要な牌を何も引かない。当然のようにノーテンでこの局を終える。

こんなフラストレーション100%の展開だが、ノーテン罰符を支払う太陽は何というか爽やかだ。新世代草食系男子はこの程度でイライラしない。感情を抑えているという雰囲気すらない。

南2局にようやく太陽に上がりが出る。速攻で2鳴きして大和から8000を上がった。

索子混一手だったが、手の内に7mを残して打東→打北で混一気配を消した。太陽にとっては吐きそうな展開のこの局だが、まだ死んでいなかった。とはいえまだ箱下だ。

一方、この放銃で大和はいよいよ友添に背後に迫られた。

がつがついくアフロ

初回のEX風林火山オーディションで優勝した松ヶ瀬以上にインパクトを残し、翌年の最強戦で近代麻雀編集長に直訴してまさかの出場権を得、予選で自分以外全員Mリーガーという状況から勝ち上がって、ファイナルでも決勝卓まで勝ち残った男。

この日のここまで3試合は2着・3着・2着ときた。この4試合目も鬼のような鳴き仕掛けでリン差の2着につけている。

友添に一方的にやられている太陽はこのままで終わってしまうのか。

南3局 親番がない佐月がやや強引に混一に舵を切り攻めに出る。太陽も友添の親番を落としに行く。ドラも対子で、ここは何とか連続上がりを取りたい。

しかしまたもアフロ友添だ。ぬかりなく2・5・8pで聴牌してリーチ。おあつらえ向きに太陽が8pを浮き牌で抱えている。

終わったと思われたが、被害を受けたのは佐月だった。聴牌していた佐月は先に8pをつかみ放銃。リーチ・一発・平和・ドラの12000。

佐月撃沈。

友添は太陽を沈め、佐月を沈めた。

大和も2着に落とした。

次局は友添以外の三者が高打点を目指して押しに押したが、友添がもはや悪魔とも言えるチー聴から600オールの自摸。3者の手を打ち砕く。

次局も流局。ぬかりなく友添は聴牌で親番が続く。

次局は佐月が山4枚残りの聴牌を入れてリーチ。このまま1回も上がらないことは許されない。今やラス目の太陽がすぐそこまで迫っているのだ。太陽も鳴きを封印してリーチで追いかける。待ちは不利すぎたが最後まで戦うつもりだ。

一方、友添も9m単騎でしれっと聴牌を入れる。しかし、佐月の当たり牌を掴んであっさり降り。これ以上戦う必要はない。

流局してオーラスに移った。

オーラス親番の太陽だが、佐月と友添は終わらせにくることは明白。唯一着アップの可能性がある大和が満ツモ条件を目指す。

佐月はやはり早めに終わらせるべく仕掛けに出て5・8m待ちの聴牌。引けない大和がこれを掴んで終局となった。

友添 53300
大和 38000
佐月 12800
太陽 -4100

結果的にこの日は友添に最高の結果になった。

打牌の一貫性と憎らしいほどの強さ。誰が見ても一目で分かる個性を持ち、そして負けるときにも誰より画になるかっこいい男。それがアフロ友添。

太陽のようなベビーフェイス雀士に相対する「ダークヒーロー」になり得る一人だ。

スタイルの良さ&ボンバーヘッド
加えて思い切りの良い麻雀は一度見たら忘れられない

佐月は残念ながら1回も上がれずこの試合を終えた。良い待ちを早い順目で何回も聴牌したにも関わらず上がれなかった。だが、方針が明確な振り切れた打牌、はまればトップになっていた可能性も十分にあったことは明らかだ。

新世代中の新世代


KADOKAWAサクラナイツ内川プロの四暗刻宇への振り込みは今でも語り草になっていますが、勝っている試合よりも、負け試合は各雀士の個性がかなり出ます。ということで、太陽が唯一敗戦した試合をレポートさせていただきました。

大負けした試合を選択したということもあり、この試合を通じて太陽に見せ場はなく、残念ながら、勝負にいったところでことごとく負けてしまった。

とはいえ、やはり、太陽という雀士がよく分かる対局でもあった。

まず、恵まれない展開でも「やるべきことを明るく真っ直ぐにやる」という姿勢を感じました。

打ち筋はまっすぐで危険牌の読みどころも良い。状況から考えられる戦略は守りではなく攻め方向。長考も少なく迷いも見受けられない。

そして何より、この雀士の最も優れた特徴として感じざるを得ないのは、とにかく応援したくなる雀士であることではないでしょうか。

振り込めば振り込むほど「負けるな、がんばれ!」と応援してしまう

今時の若者には特に反抗期はなく成人したという子が多いが、太陽もきっとそんな今時の若者の一人に違いない。くったくなくやるべきことをやるし、苦労もいとわない。

そんな若者が理不尽な牌の流れをまともに受ける姿を見て、見ている側はこれは応援しなきゃという気になってしまうのかもしれません。

年代は少し離れるが、北陸の役満プリンスこと本田朋広の正統の後継者ではないだろうか。

麻雀の技術は磨けば光っていくだろうが「応援したくなる」という資質は、もともと持っているものしかないと思う。

今は、太陽が何らかのタイトルを手にして、世間から注目される日を待つしかないが、この男がMリーグに登場したらきっと新世代のヒーローになり、新たなファン層を開拓していくのだと思います。

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