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ベトナム法務 | 土地は所有できるのか?土地使用権とは?

結論から申し上げますと、ベトナムの土地は所有できません。
建物、住宅・マンションは所有できます。

ベトナムの土地は、国家が(所有者代表として)統一的に土地を管理し、土地を使用する権利について(1)割り振り(割当て)という形式と(2)リースという形式の2種類で認めています。

これを土地使用権といい、登記手続きによって登記簿(土地使用権証明書)が発行されます。日本でいう(以前の)権利書のようなものです。

土地上に建てられた建物は、土地とは区別された資産として「所有権」が生じます。こちらは土地付着資産・土地隣接資産などと呼ばれ、上記の土地使用権証明書に登記しなければなりません。


土地使用権とはそもそも何なのか?


まずは、下表をご覧ください。

(1)割り振り(割当て)形式で土地使用権を取得する場合には、国への土地使用料が発生しない無償形式と発生する有償形式があります。(2)リース形式で土地使用権を取得する場合にはリース料が発生し、一括払いをする形式と年払いする形式があります。

ざっくり言ってしまえば、国から(実務上は行政から)土地を借りるということになります。基本的には期限付きで「50年」です(70年・99年などへの延長は可能とされています)。

そもそも、私たち外国人個人では土地使用権を取得できることはできませんし、外国法人である日本企業、その子会社(ベトナムでの外資法人)も土地使用権を「直接取得」できる(国や行政から直接土地を借りることができる)のは以下の場合に限定されます。

  • 分譲住宅を開発するために有償の割り振りを受ける。

  • 事業活動(投資プロジェクト)を提案し、リース形式にて土地使用権を取得する。

後者の実務は決して簡単ではなく、日本の大手商社や大手デベロッパーが参加した工業団地案件、日本の大手流通が展開する大型ショッピングセンターなど、入念な計画をもって認可される程度です。中小規模レベルではまず認可されません。

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では、土地使用権を取得しないで(土地を借りないで)建物だけを借りるのが唯一解かというと、そうではありません。

既に土地使用権を取得しているところ(法人・個人)から取得する(借りる又は現物出資を受ける)ことになります。

わかりやすい例としては、工業団地(Industrial Park)工業区域(Industrial Cluster)でしょうか。開発業者が未開の地を国から一括借り受けし(土地使用権を取得し)、クリアランスした上で最低限のインフラを整備(道路整備、配電や給排水システム、運営管理センター設置、警備など)した上で、1ヘクタール、5,000㎡などと区画割りして販売します。


工場進出や路面店開業で知っておいてほしいこと


ベトナムの工業団地は、未だ新規開発が進んでいます。
それだけ需要があるということも言えますが、今まではあまり耳馴染みのない省(Province)でも、投資誘致が成功し大手外資企業が入居すれば、地域の労働需要が大きく変化するケースもありますので、非都市部にとっては重要な戦略の一つです。

一方で、土地使用権証明書がない状況で、土地使用権を販売しているデベロッパーなどもいます。行政から工業団地或いは工業区域の開発は決定されているのだから遅かれ早かれ土地使用権証明書は登記できるが、クリアランスの関係で・・・などと言い訳しながら、早期に入居企業を募集し、手付金を要していると見られるケースです。

しかし、こういったケースは、デベロッパーの思惑通り進むケースであれば結果オーライになるかもしれませんが、そうでない場合には、こちらが払った金銭が返ってこないばかりではなく、工場登記、工場建設・・・何もできません。その場所での会社設立すらできませんので注意が必要です。

また、工業団地と工業区域では、取り締まっている法令が違い(管轄当局も違い)、後者は新法の必要性が叫ばれているくらいザルの状態です(私見です)ので、工業団地ではなく工業区域(産業クラスターなどという訳し方もあるようです)をご検討の場合には慎重にお願いします。

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次に、工業団地や工業区域ではない場所で、工場を建てていいよ、工場を譲り受けられるよ、商売をやっていいよ・・・というようなケースもあります。

検討の際、まず、土地使用権証明書をよく見てください。土地使用権証明書上に登記された方と話をもってきた方が同じでないケースが多くあります。これは専門家にしっかりチェックしてもらうまで最終回答すべきではないと思います。

もちろん、まずはそのベトナム人に尋ねてみることです。しかし、悪意があるケースばかりではないですし、ベトナム人も細かな法令を知らないケースもありますので、こちらの質問に淡々と回答されることになるでしょう。悪びれもせず、「土地使用権証明書どこかにいっちゃったんです。いま探してます・・・」などというケースもあるかもしれません。

そうすると、あたかも質問をしたこちらに落ち度があるような気になってしまうものです。それでも専門家にしっかりチェックしてもらうべき、ということになります。

例えば、上表にありますが、土地のリース料を年払いしているケース(土地使用権証明書でわかります)は、土地の転貸、建物の賃貸、共に「不可」です。
2020年1月10日に私の会社にて公開したレターでは「不可と解釈されている」と書きました)

以前は、罰則規定が曖昧だったことから「法令に可とは書かれていないが不可とも書かれておらず罰則もない大きなリスクはないと考える人」「不可と解釈したほうが安全であると考える人」など解釈が分かれていたのです。

しかし、現在は罰則規定が明確になりました。罰則金だけではなく、そのような土地は国(行政)に返還しなければならない義務が生じています。

私が知っているある日系大手企業でも、年払いの土地使用権者に賃料を払って路面店商売をしていますが、本来は、国(行政)に返還しなければなりません(以前、私よりアドバイスしましたが通じてなかったようです)。

つまり、いつでも立ち退きを受けてしまうような場所(土地・建物)が、日本とは違ってまだまだたくさんありますので気をつけましょうということになります。

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今回はこのくらいにしようと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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