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ベトナム法務 | ベトナムで訴えるにはどうしたら?

まず始めにお断りしておきますと、私は弁護士ではありませんし、その他の士業でもありません。

何の肩書きもありませんし、有名企業で勤務したバックグラウンドもない「たたき上げのコンサルタント」です。

何についてのコンサルタントかと言われると、企業経営全般、リスクマネジメント・・・などとなります。長年やっていますので(25年以上)、専門家と呼ばれておかしくない分野がたくさんあります。

ベトナムでは、部下に弁護士、公認会計士、税理士などがおりますし、そういった専門家を何人も育ててきているのは事実です。


さて、今日の本題です。

ベトナムは「目を向ける方向によっては」または「受け止め方によっては」トラブルだらけです。

トラブルというとなんだか物騒ですので「思い通りにいかないこと」ばかりでもいいかもしれません。

  • 普通のことを言っているだけなのに通じない、理解してもらえない・・・

  • ちょっとあり得ないこと、理解できないことを要求される・・・

ベトナムあるある」として我慢して受け入れるのもよし、「徹底的に議論しよう」というのもよし。

でもそれで合意、落としどころに至らなければどうするか。

ベトナムでの公的な紛争解決方法は、民事訴訟、仲裁、調停、告訴(刑事)、告発、不服申立、陳情などがあります。

今日は、いわゆる「訴えること」がどういう手順になっているのかをご説明します。

1、刑事事件

暴力や窃盗などその場での対応が必要な場合には、公安(113)に電話で連絡します。日本で言う110番で近くの派出所から人が来てくれます。もちろんベトナム語です。

ベトナム語が難しい場合は、ハノイ市の日本大使館、ホーチミン市の日本総領事館、ダナンの領事官に電話することも手です。

下記は、外務省海外安全ホームページで、113とは違う公安の番号も載っています(私は113以外は使ったことがありません)。

詐欺や占有、過去の暴力など、日本でいう「告訴」は、告訴状を作成して証拠と共に公安に提出します。

私は日本で告訴をしたことはありませんが、日本の警察署での告訴と同じようなイメージでいいと思っています。
(ベトナムでも告訴をしたことはありませんが、告訴の書類、流れなどを行う弁護士の仕事は細かく見たことがあります。)

公安が受理してくれない場合には、地域の司法監査委員への申立、公安への不服申立、検察への申立などいろいろあります。

2、民事事件

一般的に、ベトナムの民事訴訟は年単位の時間がかかると言われます。
その通りです。

ただ、法令・各種ガイダンスでは、

  • 訴状と証拠の提出後2日以内に訴訟受理前調停の選択が可能で、もし原告が同意すれば3日以内に担当が決められ、被告に対して通知されます。

  • その後、被告が同意すれば訴訟受理前調停が20日~2か月以内に行われ、凡そ2回にて決着がつきます。

  • 調停での合意が成立すれば、15日後に正式決定、不調に終われば訴訟受理手続きに戻されます。

とあります。

現実は、ここまで1年程度かかります。
ただ、ここまでは訴訟費用(日本でいう印紙代)はかかりません。

その後、訴訟はその内容や規模によって半年~1年かけて進んでいきます。

企業間の紛争であれば、あらかじめ「仲裁」での解決が合意されているケースも多いと思いますので、その場合はもう少しスムーズに進みます。ただ、仲裁の結果が最終拘束力を持つケースとさらに民事訴訟に発展するケースがあります。

なお、ベトナムでの証拠準備は日本とは少し違うと思います(詳しくは別の機会に有償で書きます)。

3、外国人である私たちが訴えるには

ベトナムで起こったことに対してであれば、私たちが日本に住んでいてもベトナムに住んでいても、訴えることは可能です。

逆に、ベトナムで起こったことに対して日本で訴えて、望むような結果を得るのは至難の業です。

ベトナムで訴えることは、私たちがベトナムに居続ける必要はありません。代理人を選べば大丈夫です。

代理人は一般的にはベトナム人弁護士になります。弁護士でない者が代理人になれるケースもあります(詳しくは別の機会に有償で書きます)。

なお、日本人弁護士(外国人弁護士)は(ベトナムにおける外国人登録弁護士であっても)代理人にはなれません。外国資本の法律事務所や弁護士事務所も代理業務はできません。

もし私たちも裁判や調停に参加したい場合には、通訳同席も可能です。


私も私の会社もベトナムで正式活動してから13年になり、訴えられたことはありません(日本でもありません)。

でも、「彼の地で訴えたこと」はありますので、今日の内容は机上の知識ではありません(笑)

昨今は、日系企業、日本人がベトナムで訴えられることも増えていると思います。企業であれば、速やかに閉鎖手続き(撤退手続き)をしても避けられませんが、個人であれば、日本へ帰国すると原告を少々困らせることができてしまいます(故意にやる日系大手企業を見ましたが、よくないですね)。

公示送達などの手続きが少々面倒ですし、裁判所の裁量に対面することもあります。


今回はこの辺にします。

訴えられたときの心得も、もしかしたら需要があるかなと思ったりします。

日系企業が労働者に訴えられそうだ、組合とトラブルになりそうだ、ストライキになりそうだ・・・そういった件は、定番とは言えずとも現地社長・国際管理の方であれば把握しておきたいことだと思います。

別の機会に書かせていただきます。

ただ、先日、ベトナムにいる日本人から、ベトナムにある日系企業を訴えたいという相談をいただき、業務としては受けられないので無償でアドバイスしましたが、その際に考えたフレームワークがあるので、こちらにさせていただくかもしれません。




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