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第267回、シン・ウィッシュを考えてみた


作品を批判ばかりしてもあれなので、ウィッシュはどの様な内容にすれば、よかったと思うのか、自分なりに考えてみました。


魔法を操りロサス王国を治めるマグニフィコ王は、アーシャに言った。

「私だって全く夢を叶えてやらなかった訳ではない。だが見ろこの夢を。
この男は、シンバルで音楽を奏でたいそうだ。この男は、チェロだと。
こんな願いの一つ一つを叶えた所で、一体何の意味があるというのだ」


「マグニフィコ王、あなたは何もわかっていない」


アーシャはそう言うと、チェロで音楽を奏でたい男の願いの球を手にして、魔法を唱える。

「カルテットっ!」


するとそれまで無造作に浮かんでいただけの願いの球の中から、3つの球が集まり始める。

4つの願いの球は、一つの塊となって輝き始めた。

「これは、一体‥」

「これらの願いの球は、バイオリン、ビオラ、チェロ等の音楽を奏でたいと願っていた者達の物です。一つ一つの願いだけをみれば、たいして意味をなさない物に見えるかもしれません。しかしこうして、同じ目的を持つ願いを集めると、互いの願いが共鳴し合って、輝きを増すのです」

そう言ってアーシャは、シンバルを奏でたい男の願いの球を持つと、それを上へ掲げ、叫ぶように魔法を唱えるのだった。

「シンフォニアっ!!」


アーシャがそう唱えると、先程よりもさらに多くの願いの球が、シンバルの願いの球の周りへと集まり、それぞれの球が呼応をするように輝き始めるのだった。

「ばかな‥ 私は願いの球に、こんなカテゴライズをした思えはないぞ‥」

「これはあなたが、それぞれの願いに価値の基準を付ける為に行った分別、カテゴライズとは違うわ。願いの球同士が、自分の願いをより輝かせる為に呼応をするもの同士が自然に集まった、願いのコミュニティーなのよ」

「魔法の呪文を唱えれば、さらにはこんな事も可能よ」

「マリッジっ!!」


アーシャがそう叫ぶと、結婚願望を持った球同士が惹かれ合い、カプリングを作り始めるのだった。

「このカップリングは、各々の結婚条件の希望が一致する願いの球同士が、共鳴をし合っているの。このカップリングの中には、当の本人同士が、まだ出会っていないものも沢山あるわ」

「願いは何もそれぞれが、自分一人で叶える必要はないんだわ。同じ願いを持つ者同士が集まって、共に願いを叶えてもよかったのよ」

そこへマグニフィコ王の妻、アマヤ王妃が現れた。

「あなたは真面目な人だから、これまで国の為に、人々の幸せの為にはどうする事が一番いいのか、全て自分で決めて来たのですよね。でももう少し、人々の願いを、人の心を信じてみてもいいのではないのかしら?」

アーシャは、王にある提言をするのだった。

「王様、あなたの作った願い球のシステムは、決して人々の心を支配するような物ではないのだわ。使い方を間違えなければ、人の心を結びつけられる素晴らしいシステムなのよ。
王様、もう一度このシステムを、一緒に構築し直しましょう」

こうして、願いの球のシステムは、同じ願いを持つ人々を結びつける為の、願いコミュニティー構築提案システムとして、生まれ変わるのだった。
もちろんそのシステムの提案を受け入れるかどうかは、当人に委ねられた。

自分の願いをシステムに預けるかどうかも希望性になり、人々の任意に委ねられる事になったが、願いのマッチングをする事ができるこのシステムは、人々に大いに受け入れられるのだった。

新たに構築され直したそのシステムは、「ウィッシュ・コミュニケーター」と呼ばれた。

それはまだ、パソコンも、AIマッチングも存在しなかった頃の話である。

王の思いも、願いの球のシステムも、全否定をする必要まではなかったのです。
完全否定をしなくても、システムの改善をすれば、有益性は十分にあったのです。
むしろこいつの方が、いらないと思いませんか?

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