第340回、ジャスティスの帰還
ジャスティスが、侵略宇宙人を制裁しに、地球を旅立ってから数年が経ち、
コサックシティーの犯罪率は、増加の傾向にあったが、それでもヒーローや警察達の努力のおかげで、少しずつ犯罪の少ない街になり始めていた。
ジャスティスは、宇宙人を撲滅させて、地球に帰還をしていたが、それ以降ジャスティスは、犯罪者が現れても、街に姿を現す事はなかった。
一部の者のみが知る、ジャスティスの秘密の住処に、ヘルズンが現れる。
「ジャスティス、お前が撲滅させた宇宙人達が、生まれ故郷の惑星を失った惑星難民だった事は、俺も後で知ったよ。
お前が破壊したその宇宙船団には彼らの家族、子供達も乗っていたんだな。
知らなかったとはいえ、彼らを滅ぼしてしまった事に、お前は今、生まれて初めての罪悪感を抱いているのだろう。
だが彼らは最初から、地球人に向けて、惑星の侵略意思を示していた。
それが彼らなりの、移民手段だったんだろう。
お前が彼らを撲滅させなければ、地球が戦場になっていたのは間違いない。
どのような事情があれ、彼らが地球人にとっての脅威であった事は確かだ。お前が地球を救ったのは事実なんだ。
こんな言葉がお前にとって、何の慰みにもならない事はわかっているさ。
誰よりも強く正しいヒーローになる為に生まれ、育てられたお前にとって、自分の行動が正しいかどうかが全てなんだ。
自分の行動に正義がなければ、全て無意味な事だと思っているんだよな。
でもな、ジャスティス。俺達ヒーローは元々、正義という訳ではないんだ。
ただ普通に暮らしている、身の回りの人達の生活を守りたい。
その弊害になる者を、悪と呼んで制裁をしているに過ぎない。
自分が必ず正義な訳でも、相手が絶対に悪な訳でもない。
ただ自分の守るべき者の為に、本来許されない力を行使する。
俺達ヒーローは、その業を背負って生きる、罪人でもあるんだ。
お前は、そんな半端なヒーロー行為が耐えられなくて、絶対的な正義を行使する為に、ヒーローを抜けたのはわかっている。
だがお前は今、自分の中にある、絶対的な正義が、揺らいでいるんだよな。
お前がこの後、どう生きていくのかは、お前自身で決めればいい。
だが街では今、地球の危機を救ったお前を歓迎する式典が準備されている。
せめてそれだけでも、出てみないか?」
後日、式典に姿を現し一連の式を終えた直後のジャスティスの前に、一人の少年が花束を持って現れ、その花束を笑顔でジャスティスに差し出した。
ジャスティスがその花束を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、花束の中に隠されていた小型拳銃から、ジャスティスに向けて、一発の弾丸が放たれる。
その少年は、数年前に、汚職政治家の護衛をして、ジャスティスに殺されたガードマンの息子だった。
ジャスティスにとって、拳銃の弾等、なんの損傷にもならないはずなのだがその弾はなぜか、ジャスティスの胸元に深くめり込んでいた。
ジャスティスは、自らのマントをひるがえし、マントの中に少年を覆うと、笑顔のまま表情のこわばった少年から、拳銃を取り上げて「ジャスティス」と小さくつぶやく。
拳銃を持つ手から、ジャスティスビームが放たれて、手の中の拳銃が消滅をする。
マントの中から少年が現れた時には、ジャスティスの姿は、少年が手渡した花束と共に、その場からいなくなっていた。
何が起きたのかわからずに、呆然とする人々。それは、最凶ヴィランでも、最強ヒーローでもない、一人の人間、ジャスティスの誕生の瞬間だった。
※中途半端な展開ながら、このシリーズは、一応これで終わりにしようと
思っているので、過去作を下記にまとめて載せておきました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?