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怪談17「新築アパートの怪」

 この話は25年ぐらい前の話です。
 その頃は、地元の裏道みたいなところにもじわじわアパートが増え始めた時代でした。
 ある裏道というか、古い道がありまして、今でこそ家もそこそこあったりしますが、当時はあまり家がなく、両側は竹林の道でした。
 もうずっと昔から竹林で、なにが埋まっているかわからない感じですし、かなり古い時代から道として使っていたそうで、まあ、江戸時代に○されて埋められた人の骨がのちに見つかったりするというような道だったんですね。
 そんな道の竹林が切り崩され、新しいアパートが建ちました。
 結構、急斜面だった場所になんか無理やり感満載な埋めたてでそのアパートは建ったんですね。

 そこに、先輩がすぐ入居しました。
 しかし、入居して2週間後ぐらいに連絡が来ます。
 「ちょw引っ越し手伝って」と。

 「え?こないだ入ったばっかりじゃないですか」と言うと。
 「いや、マジここやばいって。今日中に出るから手伝って」と言われました。
 まあ、手伝い金+飯おごりということで、数人連れて駆けつけました。
 で、引っ越ししながら、なぜ出ていくのかと問いただすと「ここじゃ話したくないから、引っ越し終わって飯食うときに話すわw」という事になりました。

 で、引っ越し自体はスムーズに終わり、先輩のおごりで夕食を食べにレストランに。
 そこで先輩が話してくれました。

 先輩は朝早く出て、夜遅く帰ってくるちょっとブラックな仕事をしていました。
 そんななので、休みも少なかったんですね。
 引っ越し終わった日も午前中だけ引っ越しの休みを貰い、午後から出勤。
 夜遅く新居に帰ってくるわけですが、引っ越しした初日の夜に階段を上がっていく(先輩が借りたのは4階建ての4階の端)と、工事現場の恰好した男性と階段ですれ違う。
 住人だろうと挨拶すると、あちらも頭を下げて降りていく。
 「工事の恰好しているのに、今から出勤かな?まあ、夜の工事もあるか」とその時は気にしなかったそうです。

 で、朝早く出勤のため部屋を出る。
 部屋を出て、階段を下りていくと、20後半ぐらいの女性が上がってきたそうです。
 ただ、それがなんか髪は長いけどぼさぼさで、服も心なしヨレている。
 美人ではないけどそれなりの顔、感情があまり感じない表情だったそうで、なんか気持ち悪いなぁと思いつつもとりあえず軽く挨拶すると、あちらも頭を下げたそうです。

 その時に、なんだか、嗅いだことあるけど、香水じゃない・・・なんだろこれ?みたいな匂いがしたそうです。

 まあ、それでも忙しい仕事ですから、職場についたらそんなこと忘れてました。

 そして夜遅く帰宅。
 階段をあがっていくと、前回すれ違った工事現場の男性とすれ違う。
 前回とほぼ同じ時間だから、やっぱり今から出勤なんだろうな・・・と思い「今からですか、お気をつけて」とあいさつしたそうです。
 するとあちらは頭をちょっと下げ、階段を降りていく。
 「なんだよ、もうちょっと愛想よくすれば良いのに」と思ったものの、まあそんなもんだろ世の中と気にしなかったそうです。

 そしてマンネリしたいつものパターンで、夜食食べて、シャワー浴びて就寝。
 次の日の朝、目を覚まして仕事の用意を・・・と思ってたら、少しだけ違和感がありました。
 先輩は夜、カーテンを開けるタイプの人ではなく、どちらかというと閉めっぱなしのタイプなのですが、なぜかカーテンが全開になっている。
 「ん~?」とは思ったらしいのですが、忙しいですから、特に気にせず用意して出勤。
 アパートの階段を降りていくと、昨日、すれ違った女性とまたすれ違う。
 女性は、昨日とまったく一緒の恰好だったそうです。
 雰囲気やボサボサの頭などから、先輩は「あれだ、喪女だ・・」と思いながら、また軽く頭を下げて階段を降りていく。

 そして、また香水じゃない独特な匂い。
 でも、仕事でそれどころじゃないので、特に気に留めず、駐車場まで降りていくと、老婆が駐車場の縁石のようなところに腰をかけている。

 「住人の人か・・・」と思いながら、少し頭をさげると、老婆はにっこりとほほ笑んで「朝早くから、大変ですねぇ」と声をかけてきたそうです。

 先輩は「ええ、もう忙しいし、上司が怖い人なんで、毎日大変ですよ~」と車のドアを開けながら答えると、老婆は「それは大変ですね、私たちはもう急ぐ必要もないのでねぇ~」と返してきたそうです。

 まあ、忙しい先輩ですから「年金ぐらしか・・・いいもんだな」と心の中で思ったそうですが、顔には出さないようにして「いってきます」とにこやかに駐車場を出たそうです。

 引っ越ししてから約2週間ほど今書いたような流れの日々を繰り返したそうです。
 そして2週間ぐらい経った時、引っ越し後という事もあり、2日連続で休みという、ブラックらしからぬお休みを勝ち取ったそうです。

 先輩はウキウキで、仕事から帰ると「明日から2日間休みだ!よっしゃぁ」と気合入れていたそうですが、いざそうなると、なかなか何しようか思いつかない。
 シャワーあびて、考えていたものの、思いつかないのですが、とりあえず、怠惰な日々を過ごそうと考え、今日は夜更かしでゲームだ!となったそうです(忙しかったので、積みゲーが結構たまってたそうで)。

 さっそくビールとおつまみを用意し、ゲームの電源を入れ、テレビの前に座る。

 位置的に、テレビは部屋の窓の反対側にあるため、先輩は窓に背を向ける形で座ってゲームすることになります。

 で、ゲームを夢中でしていたのですが、本人いわくたぶん夜1時ぐらいだったと言っていましたが、なにやら背後に嫌な感じを受けたそうです。

 ふと、後ろを振り向くと、カーテンがいつのまにか全開になってる。
 あれ?と思い、カーテンを閉め、またゲームを始める。
 しばらくすると、また嫌な感じがする。
 振り向くとカーテンが開いてる。

 「おかしいなぁ・・・」とまた、カーテンを閉め、ゲームを始めたのですが、今度は嫌な感じというより、あきらかに視線を感じたそうです。

 ええ!と思って勢いよく振り向いたら、カーテンが開いてて、窓の外には、朝から必ずすれ違うボサボサ頭の女性がへばりついてこちらを見ていたそうです。

 ニタニタと笑ってこちらを見ていたそうで、不意をつかれた感じの先輩は「うぉぉぉぉあぉぉ」と叫んだ・・・・というところまでは記憶にあるそうです。

 次、気が付いた時には部屋の真ん中で倒れてたそうです。
 つまり、気を失ったわけですね。

 最初は、ビビっていましたが、よく考えたら、人のベランダに勝手にあの女入ってきた!不法侵入じゃねーか!と頭に来たらしく、さっそく不動産屋に電話。
 実際は、先に警察にとも考えたそうですが、まあ、その場でそのすぐなら対応もしてくれるでしょうが、証拠もないので、不動産屋のほうが・・・となったそうです。

 不動産屋が電話に出るなり、そのアパート借りる時に案内してくれた担当につないでもらい、そして「おい!このアパート、人が勝手に入ってくるぞ」的なことを言ったそうです。
 
 もちろん、新築のアパートですから、そんな噂がたったら大変です。
 担当者も「少し落ち着いてください。もし本当なら、こちらも対策を考えますので」と話を聞いてくれたそうです。

 ・・・・が、しかし、途中からあきらかに担当者が「?」というニュアンスだったそうで、先輩はブチ切れて「今から行くからまっとけ!」と、電話を切り、直接、不動産屋に乗り込んで話をしたそうです。

 担当者にことの次第を話していると「じゃあ、その朝からすれ違う女性が勝手にベランダに侵入していたということですね?」とやっと言いたいことが伝わったそうで「だから最初からそう言ってるだろ!あの住人、頭おかしいだろ絶対」と先輩が言うと、担当者は「いえ、あそこに女性の方は入居していませんよ?」と言うそうです。
 は?と先輩は思って「じゃあ、あの女は毎朝、あのアパートに住んでいるわけでもないのに階段上がっていたってこと?」と担当者に言ったそうです。

 すると、担当者は「その可能性があります」と答える。
 「なんだよそれ、余計気持ち悪いじゃねーか!ならおっさんや婆さんに聞き取りしろよ!見てるかもしれねーから、他の住人にも聞きまわって聞いてみろよ!」と伝えたそうです。

 そうすると、担当者が怪訝な表情をしたそうです。
 もう頭に来ていますから、それをちょっと見るだけで先輩は頭に血がのぼりますので「なんだよ!なんか文句でもあんのか?」と詰め寄ったそうです。
 すると担当者は少し焦りながら「いえ、まだ入居していないんですよ」と言う。
 先輩が「は?」と言うと、「いえ、まだあのアパートにはお客様しか入られてないので、他の住人の方はいません」と担当者が答えたそうです。

 ここで、先輩はほえ?となったそうで、工事現場の恰好したおっさんや朝から座っているおばあさんの話をしたそうですが担当者は「いえ、本当にお客様以外だれも住んでないんです」と答えたそうです。

 先輩はここで「ハッ!」となったそうです。
 よく考えたら、窓も開けずにどうやってカーテンを女性が開けたのか?あと、駐車場には確かに自分の車以外、停まっているのを見たことがないことに気が付いたらしいです。

 そうなると・・・・事故物件か?と高速で頭を巡らせて答えをはじき出したそうで「じゃあ、あそこ、アパート建つ前は事故物件かなんかじゃなかったのか!」と担当者を責めますが、担当者曰く、その前はずっと竹林だったということでした。

 でも、まあ、もう気持ち悪いわけで、早く出ていきたい。
 もうなんでもいいからいちゃもん(クレームですね)つけて出ていきたい。

 先輩はとにかくいちゃもんつけて紹介手数料はあきらめ、敷金の一部と契約違反金はナシということになり、引っ越しすることになったそうです。
(まあ、相手の不動産屋ももうめんどくさかったんでしょう)。

 結局、先輩はまた実家に戻ることになったわけです。

 とまあ、そういった話を聞かされました。
 そんな話を聞きながら「そういえば、あのアパート建つときに、母親が「あんなところにアパート建てるもんじゃないけどねぇ」とか言ってたなと思いだしました。
(私の母親はかなりの霊感持ちです)。

 その後、そのアパートは、人の入りも悪く、結局2年ぐらいで解体され、今は駐車場になっています。
(普通、新築を2年で解体なんてありませんから、いろいろあったんでしょうね~)。

 そういえば、後日、その先輩は言ってました。
 「そういやさぁ、その女性からする匂い、実家に戻ってからやっと思い出したんだよ。あれ、線香の匂いだわw。それで改めて思ったね「絶対幽霊だ」と」。

 とまあ、そんな話でした。
 そのアパートのまわりって、昔からなんというか陰気というか、町全体が暗い印象を受けるところではありましたし、定期的に変な事件が起きたりします(散弾銃持った男がウロウロしてたりとか)。

 そして、そのアパートからそう離れてない場所に怪談6でお話した幽霊マンションがあるんですよね~。

 よく言われる「土地が悪い」というやつなんでしょうか?

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