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怪談15「見まわり」

 前回の怪談14の話に引き続き、その職場の話になります。
 その仕事は深夜の仕事のわけですが、夜の管理者として勤務指定された人(だいたい上役の方が行う)が、念のために深夜2時から建物を見まわります。
 当時は管理の緩い職場だったので、たまに外部のものが紛れ込んでいたりする(今考えると、とても物騒)ので、見まわるわけです。

 そんなある日、管理者勤務の人が私に頼みに来ました。
 「見まわり、代わりに行ってくれないか」と。
 今まではそんなことがなかったわけですが、急にそう言ってきたんです。

 私としては、自分の担当の仕事をその時間に肩代わりしてくれるならなんにも問題がないので引き受けました。
 一応「なんで急に、なんかあったんですか?」と聞くとその人は「いや・・・まあ、お願い」って感じでした。

 その建物は地下1階から始まり、地上4階まであります。
 で、通常深夜の仕事で作業する場所は2階と3階の一部だけで、それ以外は誰もいない真っ暗な状態です。
 各フロアの要所に鍵のようなものを差し込んでまわす所があり、それで見まわったかどうかを判断するわけです。

 で、さっそく、仕事サボり?がてら見まわりに。
 エレベーターで地下1階にまずは移動します。
 地下はシャワー室、運搬貨物保管所、更衣室、その他いくつかの部署の詰め所みたいな構成です。
 夜はたまに更衣室で誰かがゴソゴソしているだけで、それ以外は誰もいません。
 とりあえず一通り見まわりましたが、特になにもなく、1階に。
 1階は、昼間帯の作業場ですので、誰もいません。
 一通り見まわりましたが、特に変化なし。
 2階は深夜作業場なので、職場の同僚が働いています。
 ゆうゆうと見まわっていると「なにしてんの?」と聞かれるので事情を説明すると「いつの間に昇進したんだ(笑)手伝え!」などの冗談が飛んできました。
 そして3階。
 3階も一区画を除いて昼間帯の作業場、あとは休憩室があります。
 で、休憩室などを見まわって、昼間帯の作業場を見まわる。
 すると奥の課長席の電話がなります。
 ですが、この電話は心霊現象などではなく、頭のおかしい方がもう20年近く、深夜に電話してくるそうで、不用意に出ると意味不明の苦情言われるという、下手をしたらお化けが出るよりもはるかに恐ろしい出来事に見舞われるので無視。
 と、真っ暗の中、懐中電灯で見まわっていると、奥の作業机のほうから「ガタン、コロコロコロ・・・・」という音が聞こえました。
 音のする方に行くと、誰もいないのに、鉛筆立てが机から落ちて転がっているようでした。
 円形の鉛筆立てですが、底の部分の直径はほどほどあり、なかなかひっくり返って落ちないように思えましたが、それらを拾い、机に戻す。
 すると別の机のほうからまた何かが落ちる音が・・・。
 そちらに行くとまた鉛筆立てが転がっている。
 なんなんだと思いつつも、とりあえず、フロア全体の電気をつけて、確認することに。

 まあ、結果、特にだれもいなかったので、たまたま続いたのだろうとその場を後にしました。

 最後は4階。
 4階は仮眠室、簡易給湯室、各種事務総合所、そしてタバコを吸う喫煙所と最高責任者の事務部屋があります。
 そのうち、各種事務総合所と最高責任者の事務部屋は鍵がかかっているので、見廻りは除外され、残りの仮眠室から見まわることに。
 仮眠室にはベッドが8台設置(だが、いつ布団などをクリーニングしたか?などすら不明のため、私は使ったことがない)されています。
 ちょうど見廻りの時間は誰も寝ていないので、一応、ベッドの中を一個一個確認し、そして簡易給湯室へ。
 最後に喫煙所でちょっとサボり(笑)、戻って管理者勤務の人に報告。
 すると「なんにもなかった?」と聞かれ「特に、なんもなかったですよ」と答える。
 「そう・・・ならいいけど・・・」とその日は終わりました。

 そして数日が経ったころ、ある通達が上から出たわけです。
 それは「深夜の見廻りを一時ストップする」という事でした。
 さすがにこれはなにかあったなと、基本深夜の管理者になる人たちを捕まえて話を聞くことになりました。

 すると皆、ある日を境に不思議な体験をするようになったということです。
 たとえば見廻りしていると、エレベーターの前に工事現場の服を着た男性が突然立っていたり、椅子が勝手に動いたり、パソコンが電源が勝手に動作する、人影だけが移動するなど、頻発していたそうです。

 実はエレベーターに関しては、その話を聞いて、怪奇現象?が始まったころから勝手に動く(保守の問題かと思ったが、そういった機能は入れてないそうな)という話は聞いてました。
 そして屋上までエレベーターは存在するのですが、屋上には行かないようにロックしてあります。
 しかし、それを無視して屋上に連れて行かれるという現象は聞いてました。
 ちなみに、屋上までエレベーターが行ったとしても、エレベーター前は物置状態になっているため、ドアから出ることはできません、つまり屋上まで行く意味すらないわけです。

 まあ、そんな噂は立っていたところに、管理者たちの今回の騒動。
 そして上の迅速な対応・・・。

 これはなにかあると調べたら、当時、ベタな話ですが、建築中に本当に人がエレベーターホールに落ちて亡くなったそうです。
 そして新築後、怪奇現象が勃発したため、お祓いを行ったということです。
 ですが、なぜかお祓いを行ったちょうど10年後に怪奇現象が復活するらしく、そしてそのたびにお祓いを行うそうです。

 で、この騒ぎの時が、その前のお祓いから10年後だったということがわかりました。

 で、後日、お祓いがまた行われたわけです。

 ちなみに、余談ですが、なぜ屋上に行けないようになっているか?についてですが、これは「飛び降り自殺を防ぐため」だそうです。

 ・・・・まあ、そんなことが多い職場だということですよね。

 で、余談ですが、私は深夜にそのエレベーターに乗る際、よく壁を殴って遊んでいたんですねw(ごめんなさい)。
 特に意味はないんですが、エレベーターの金属壁にこぶしの跡がつくので、遊んでいたわけです。
 そして、いざその職場を退職する最後の日に、そのエレベーターに乗ってたら、いきなり止まってしまいましたw。
 (この時は殴ってないし、静かに一人で乗ってた)。

 2階から3階に移動する途中でw
 電話から連絡するも、なぜか繋がらず、緊急ボタンも反応なしw。
 そして携帯は置いていたため、連絡手段もない。
 困ったあげく、とりあえず自力でなんとかしようと力いっぱいドアを開いたら、なんとか開きました。

 3階の床が胸ぐらいのところにありましたねw

 ゆっくり出ていて、急に動いたら挟まれて死んでしまうので、スパイ映画ばりに勢いよくよじ登って転がって脱出。

 その後、管理者に話し、保守会社に来てもらいました。
 保守会社の人に「緊急電話も反応ないし、ボタンも反応ない。どうなってんの?」と言うと、保守会社の人はそんなはずは・・・とチェック開始。
 すると・・・こういった話のお決まりのパターンでちゃんと繋がるし、作動するんですよ。
 でも、保守会社の方が不思議がってたものがありました。
 そのエレベーターは危険回避のため、途中で止まった場合、人の力ではドアは開かないような仕組みになっているそうです。
 なのになぜ開いたのか・・・と首をかしげてました。

 結局、なんだったのかわかりませんが、ちょこちょこと不思議なことが起こる職場でした。
 

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