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怪談27「変化が始まる前の不思議な体験?」

 人の運勢というか運命というかそういったものが大きく変わる時、その前に不思議なことが起こる時があります。
 これはそうだったんじゃないかな?と思うお話です。

 今から20年以上前の話ですが、一人の大学生と知り合いました。
 その子はデザイン関係を学んでいたそうです。
 で、その頃は私もそれにちょっと近いような仕事をしてまして、その商材として様々な写真が欲しいと思っていたところでした。

 その大学生のことを「K」としますが、そのKと仲良くなり、ある日「商材の写真欲しいなら俺と一緒に撮影にいきましょうよ」と誘われたんですね。

 特に断る理由もありませんから「いいよ~」と答えて日時を決めました。

 そして当日、その時期はコスモスがきれいな秋の時期でした。
 写真の商材を「自然」のものに定めて撮影するという方向性を決めていたため、自然の多い地域に車で出かけました。

 特に変化のない普通の晴れた日で、二人でいろいろ話しながら車を走らせる。

 写真に良い感じの花畑や森林などを探しながらブラブラとする平和な時間だったのですが、途中でKがあるものを見つけました。

 それは田舎の道路沿いにあるかなり大きい大木でした。
 Kは「これいいっすよ!こんなん写真欲しかったんですよ!」と車を降り、カメラでパシャパシャと撮影を始める。

 苔むしたその大木はかなりの年齢だと思えるものでした・・・・が、私はなぜか妙に「気味が悪い」と感じたんです。

 うまく伝えられませんが、いうなら「ご神木」ぐらいの存在感なのに、なにかとっても不気味に感じる・・・という感じでした。

 Kが「写真とらないんですか?」と聞いてきたので「え~なんか気持ち悪い」と私は拒否。

 しかし、Kは「かっこいい、かっこいい」と一心不乱にその大木を撮影していました。

 Kはしばらく撮影していたのですが、Kが大木の横にある車で行けるぐらいの小道に気が付き「あっち行ってみましょうよ!」と言うんですね。

 まあ、特に定まった目的地があるわけではないので「いいよ~」と車に乗り込み、その小道へ。

 道は舗装はされているものの、車が1台なんとか通るぐらいの、なかなかの狭さ。
 対面で車が来たら避けるのは大変だぞと感じながら走らせていました。

 その道に入ってからはすぐ右に小さい喫茶店みたいな建物があり、その後がコスモス畑。
 コスモス畑で写真を何枚か撮影し、しばらく走ると、綺麗な森林が見える。
 木の並びなども綺麗だったので、そこでも写真を撮影しました。

 Kは喜びながら「もっと先にいきましょうよ」と言う。
 私も「わかった~」といって車を進めていきます。

 しばらくするとトンネルがあり、山の上のほうに進む感じでした。
 トンネルを抜け、またしばらく山を上がるとまたトンネルがある。
 Kはトンネルを抜けるたびに「あ、すこしゆっくり走ってください」といいながら写真を撮影する。

 そうこうしているうちに、またトンネルが見えました。
 そしてそのトンネルを抜けると、それまで自然しかない山の中だったのに、急にレストランなどもある「街」がありました。

 それを私は見ながら「へぇ~、こんな山の上にしっかりとした街がある」と思ったんですね。

 その山にそんな街があるなんて初めて知りましたから、かなり驚きました。
 大きめの真新しいレストランがあり、大き目の看板に「western」という文字と馬の文字がある。
 その横には乗馬スペースが設けられている。
 その他、本屋に雑貨屋?っぽいお店、その他小さい洋服店?などがあるわけです。
 しかも、四角形な形の似たような建築物(たぶん民家?)もあり、なんというかとにかく「新しい」感じのする街なんです。

 Kは「すっげ!こんな山の中にしっかりめの街あるじゃないですか!」と写真を車からバンバン撮影していました。

 ・・・・ただ、Kは喜んでいたんですが、私はその時、特に問題はないものの心のどこかに「?」という感覚があったんです。

 なんというか、小さい不安というか・・・。
 そもそも、それまで山の、本当になにもないところを通ってきたのにトンネル過ぎてからいきなり発展してるってのも不安の要因だったのかもしれません。

 うまく言えませんが、とにかく「?」という感覚がありました。

 そう思っているとKが「ちょっと車降りて撮影しましょうよ」と言います。

 いつもなら「あいあい~」ぐらいで終わるんですが、その時だけはなんだか乗り気じゃなかったんですね。
 なので「いや、昼も近いし、弁当も買ってるから、とりあえず山頂に向かおう。ここの撮影はまた来ればいいじゃん」と言って車を停めませんでした。

 まあ、Kはちょっとブーブー言っていたわけですが、私が車を停めませんから仕方ないですよね。

 そうこうしているうちにまたトンネルが見え、そしてトンネルを抜けると、また自然しかない山の風景が延々とあるだけでした。

 「すげえっすよね!乗馬レストランとか初めて見たですよ」なんてKはレストランの話などで盛り上がってました。
 「しかも雑貨屋っぽい店とかあるし、街がなんか全体的にシンプルでおしゃれですよね」とデジカメの写真を眺めながら言います。

 ・・・・この時点でも私はやっぱりなんだかいいようのない「?」という感覚が消えなかったんですね。

 そうこうしているうちに山頂にたどり着き、山頂の展望台用のパーキングに車を停めて、弁当を食べる。

 そしてそこらや、空の雲模様などをさんざん撮影。

 そうこうしているうちに昼13:00を過ぎてきたので「とりあえず、また撮影しながらゆっくり帰ろう」という事になりました。

 で、この時、戻ればよかったんですが、道なりに進んでしまったがためなのか、気が付いたら上ってきた道と逆方向、つまり山の裏側に行く道を降りているということにだいぶ経ってから気が付きました。

 帰りにもう一度、あの街を通ろうと思ってたんですけどね~。

 そして、山を下る頃には、16:00を過ぎてました。
 ゆっくりいろいろ撮影しながら見廻ってたんで、山を下るだけでも結構時間がかかってしまったんですね。

 仕方がないので、Kには「また次の機会にあの街を撮影に行こう」と言って、家まで送って、その日は解散という形になりました。

 ・・・・・そして、その後「K」と会うことはできませんでした。

 撮影した日の2日後、Kに別件で連絡しましたが、返事は来ず、次の日も返事なし・・・。
 最初は「まあ、大学などで忙しいんだろう」と思ってましたので、気にしませんでしたが、それから1週間しても連絡は無い。

 次はメールではなく、電話もかけたのですが、まったく出ない。
 そうこうしているうちに2週間ほど過ぎました。

 さすがになにかあったんじゃ?と思って数回電話をかけ続けたら、やっと電話に出たんです。
 ・・・・ですが、電話越しでわかるぐらいKの雰囲気が変わっていました。
 確実になにかに怯えて電話に出たという感じです。
 しかも、携帯電話なんで、私からの連絡だと先に画面でわかるはずですが、電話に出たときのKはそれすら確認せず電話に出た感じで最初は私とわからなかったみたいです。
 K「もし・・もし・・」
 私「ああ、K、やっと出た。どうした、なんかあったのかと・・・」
 K「・・・・あ!私さん!あ~よかった・・・」
 私「?なに、なにかあったん?怯えてない?」
 K「いや、実はいろいろあって大学も行けなくなって・・・・」
 私「マジ!どうした!なにが起こったの」
 K「詳しく言うと私さんに迷惑かかるかもしれないし、携帯電話も念のため連絡先全部消してしまったんです」
 というような話が続きました。

 で、このあとしばらく話しましたが、要約すると次のような事が起こって、雲隠れに近い感じで隠れてたそうです。

 あんまり詳しく書きすぎると、個人的な部分に触れてしまうのである程度ぼかしますが、要は・・・。
1 父親のある問題のせいで自分の大学にまで、迷惑かけられた相手側が押しかけてきた。
2 携帯電話を取り上げられて他の友人などの連絡先などを見られる前に電話の着信や電話帳などを全部消してしまったため、現在、誰から電話がきたかは出てみないとわからない。
3 大学まで押しかけてきた相手はすでに自分の電話番号を知っているため、電話がかかってくる。
4 実家には帰れず、また父親の実家、ならびに母親の実家にも戻れないため、親戚の家で隠れている。

 というような話でした。
 そしてこれらが始まったのが、撮影しに行った次の日からだったそうです。

 そして相手は彼のバイト先にも来たようです。

 私もある程度知り合いがいた頃なので、解決策があるかもとKに申し出たわけですが、Kは「自分の家の問題で迷惑をかけるわけにはいかない」と言って電話を切ってしまいました。

 その後、電話に出ることもなく、最後は解約されたようでした。

 それっきりKには会えてません。

 で、これらは当初、不思議には思ってなかったわけですが、数カ月後、ある日、ちょっとした用事から、Kが撮影時に気に入った大木のある道を通ることになりました。

 ・・・・しかし、大木を見つけられなかったんですね。
 最初は見落とした・・・と思っていました。

 ですが、なんか心の奥に引っ掛かっているものがありましたので、さらにその数日後、休みの時にその大木を探しにいきました。

 ・・・結果、見つかりませんでした。
 あれ?ここにあったけどなぁと思う場所はあるのですが、そこは普通にアスファルトで埋めた広場になっているだけです。
 試しに近所にあるお店屋さんでそのことを聞くと、すでにだいぶ前から広場になっていて大木なんてなかったよと言われました。

 さらに、その大木の横にあった小道らしき場所も探しましたが、見つかりません。
 あれ?と思いながらも、その道路沿いにある横道をすべて入って確かめましたが、ないんですね。
 
 小さい喫茶店もコスモス畑もどこにもありません。
 どの小道も林と畑ばかり。

 で、ここまで来ると、全部まわってやろうと思い、その後、休みのたびにそのあたりを探索しました。

 結局、小道も大木も見つからなかったわけですが、かわりにあの時、途中で通ったであろうトンネルは発見しました。
 トンネルの名前など見てなかったので、感覚でしか確認できませんが、たぶん、あの時の街に行く途中のトンネルだろうと思うものを。

 そのトンネルへは、あの日に通った小道からではなく、別のルートから行くことができました。
 そのトンネルを超え、次のトンネルが見える、そして次のトンネルへ・・・。
 そしてそのトンネルを抜けると・・・・そのまま山頂へ向かう道が現れました。
 山頂まで行き「あれ?」と思います。

 あの日、トンネルは全部で4つあったわけですが、そのルートには3つしかトンネルがありません。
 そして三つ目のトンネルを抜けた先はそのまま山頂へ行くだけ。
 どこを見ても街なんてないんです。

 一度、麓に戻り、その地元の道の駅へ行き、地図を買う。
 そして確認するのですが、そもそも大木があったであろう道路から入って山頂へ向かうトンネルへ進むルートは「1つ」しかない。

 つまり、先ほどまで通ってきた道でしか山頂へ行けないし、そもそもそのルートにしかトンネルが無い。

 そして地図で見てもトンネルは3つしかない。

 あの日、確かに4つのトンネルを通ったはずなのに無いわけです。

 完全に理解不能で、なっとくはいきませんが、とにかくどう見ても、あの日見た山の中の街は存在しないわけです。

 そして、さらにそこから年数がたち、グーグルマップが簡単に使えるようになりましたので、グーグルマップでも確認しましたが、そもそもその山にそんな街はどこにも存在しませんでした。

 という、今でも不思議に思っている出来事です。

 ただ、後で気が付いたのですが、なぜ私がその「街」をなんとなく不安に思った理由なんですね。
 その時はまったく思考が追い付いていなかったのかわかりませんが、その街は「モノトーン」だったんです。
 色が無かったんですね、その街。
 記憶を呼び起こしても色がないモノトーン状態。

 あの日、あの街で降りていたら、どうなっていたんでしょうか?
 
 そして今になって思います。
 この出来事はKの人生が大きく変化する際に起きたものではないかと。
 人の人生が大きく変わる節目に、奇妙な体験をするという話は時々耳にします。

 「K」の運命が大きく変わる時に私はたまたま立ち会ってしまったのかな?と・・・。

 Kは今頃、無事でいるのか・・・あれからどうしているのか・・・今でも時々思う時があります。

 なお、現在ではその山の付近も「SDGs」の影響を受けています。
 今後、開発が続くかもしれません。
 そうなった時に、もしかしたら、私がKと見た街がそこに出現するかもしれませんね。
 
 だって、街が「新しい」感じだったんですよ。
 建物も今でいう「3Dプリンター」で作ったような建物が多かったし。

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