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怪談26「ダムで釣り」

 これはあるダムで釣りをした時の話。
 その日は川釣りをしようと先輩と朝から川に出向いていました。
 その先輩のおばあちゃんの家があるんですが、そこが、山の上のほうで、最後の民家になる場所・・・もう秘境ですね。
 そしてその奥に進むと、本当にだれもこない川が流れています。
 つまり、やりたい放題な場所なわけですよ。
 その頃は定期、その先輩とその川に釣りに行っては、釣った魚を塩焼きにして食べて楽しんでいたわけです。
 本当に誰も来ないので、静かです。
 ですが、そんなところのため、川沿いは草木が生い茂っています。
 なので、川を上がる時は、川に胸までつかりながら、中を歩いていくという荒行(笑)を軽装備で行くわけです。
 (気軽に釣りに来ているので、かなり軽装備)。

 そして、その日もそうやって移動などして釣りのポイントを移動するわけですが、いつもはけっこう釣れるのに、その日だけはぜんぜん釣れない。

 先輩はなかなか短気な人なので、そうなってくると「○ソが!今日は川釣りやめるぞ」となるわけです。

 まあ、仕方ないので焚火を作り、服を乾かしながら道具をしまっていると、先輩が「○ソ!なんかムカツク。なあ、服乾いたらダムに釣りにいこうぜ」と言い出したんですね。

 その時の時間がだいたい朝11時ごろ(朝5時には釣り開始してた)だったので「じゃあ、昼飯買ってからダムいきましょう」と私も賛同。

 服を乾かして、コンビニ弁当買ってダムに着いた頃は夕方の14時過ぎぐらいでした。 

 先輩がオススメするダムに着き、弁当を平らげると、さっそく釣りを開始したわけですが・・・・なぜかなんにも釣れない。

 「マジかよ!ここ、いつもなんか釣れるんだぞ」と先輩がまたイライラしだす。
 「じゃあ、別のポイント探しましょうよ」となり、一度、ダムの一番上まで移動しました。

 そこから、釣れそうなポイントを探すため、眺めていると、ダムの中間ぐらいに白い服着て、白い三度笠?っぽいものをかぶった人影がダムの真ん中より少し左寄りで立ってるのが見えたんですね。

 私はそれを見て「ああ、あのぐらい真ん中付近まで行けるなら釣れるかも?」と思ったわけで、先輩に「あ、あそこ、誰か釣りしてるんじゃないですか?人立ってますよ?」と言いました。

 すると先輩は「どこ?」と言うので、私は人影を指さす。

 「あれっすよあれ、あの白いの」と言うと先輩がしばらく無言になり、そのあと「誰もいねーよ」と言って歩き出す。

 私は歩く先輩の肩をつかみ「いやいや、いるじゃないですか?白い三度笠っぽいのもかぶってますよ。あそこに立ってるということは、あそこに行けば橋っぽいものがあるんじゃないですか?じゃないとあそこまで行けませんし」と呼び止めました。

 しかし、先輩は「いない」と言ってまた歩こうとする。
 「いや、ほら!絶対あそこ橋かなにかありますって」と白い人影を指差しましたが、その指を先輩が握って半笑いで「指さすな、やめろ、てかいないって言ってるだろうが!」と指を下に向けさせる。

 「え~?」と私が不満そうに言うと先輩は「うっさい!いいから下に移動するぞ」と言って歩きだしました。

 結局、良さそうなポイントがなく、ダムで最初に釣りをした場所に戻ってきたわけですが、その時になって先輩が言います。
 「お前、マジやめろって、あんなん指さすなよ・・・」と。
 私は意味がわからないので「だって、いたじゃないですか」と返すと「マジふざけんな。あれ生きてねーわ」と答えたんですね。

 ・・・・この先輩もかなり霊感が強い人ではあるんですよ。

 でも私には完全に人に見えたのでブーブー言ってたわけですが、そうすると先輩が「そもそも、あそこに橋とかねーよ!行ってみるか?もうアイツ消えたみたいだし」と言い出しました。

 私も気になっていたので、その近くまで行くことに。

 ・・・・・しかし、ダムの中腹付近まで行く橋みたいなものはどこにもなかったんです。

 先輩が「お前さぁ・・マジで生きてるか死んでるかぐらい判断しろよ。ついてきたらどうすんの?めんどくせぇ」と私を蹴りながら言いました。

 魚もけっきょく釣れなかったので、その日は帰ることになったわけですが、帰りの車の中で先輩が「てか、朝からなんでこんなに釣れないのかわかったわ。アイツが呼んでたんだろうな。○ソ!まんまと引っ掛かったわ!急にダムが浮かんだのはアイツのせいだ!間違いねぇ!」とブチギレてました。

 ・・・・・この件はこれっきりで、その後、この日のようになにも釣れないということは起きませんでした。

 ・・・・・私にはしっかり「人」に見えたんですけどね~。
 

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