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怪談16「無数の手形」

 当時の話で、年齢的にまわりもガンガン心霊名所めぐりしてたころの話です。
 私はそこ頃は基本、深夜に働く仕事をしていました。
 ※その頃の職場のお話もいくつか書いていますのでそちらも読んでみてください。

 ということは、夜中、仕事中以外か、朝方の勤務終了ごろに電話すればたいがい電話に出るわけです。

 で、ある日、朝仕事が終わるころに先輩から電話が来ました。
 電話に出てみると「ちょw今からお前の職場まで行くからちょっと見てくれよ」と言うのです。
 「なにを見るんですか?嫌ですよ(すでに嫌な予感がしました)」と言うと「いいから」と言って電話を切られました。

 そして仕事が終わり、職場の外に出て歩いていると、路肩にその先輩の車が停車してあります。
 「なんなんすか、朝から」と近づくと、ちょっと異様な雰囲気。

 まず、乗っていたのは先輩Aとその彼女、先輩Bとその彼女でした。
 そして、女性二人は、あきらかに泣いた様子で眼が腫れている。
 さらに先輩A,Bは顔色が良くない。
 「って、先輩、とうとう犯罪でもしましたか・・・自首したがいいですよw」と私が冗談言うと「ふざけんな!それよりこれ見ろよ」と先輩が車を指さしました。
 最初はわけがわからず「なんすか?人でも轢いてへこんだんですか?」と言っていると「手形だよ手形!よく見ろよ!」と言う。

 よーく見てみると、車のボンネットから窓から手形でびっしりw。
 手形はなんか車のほこりを集めて付けたような感じで、指でこすれば落ちます。
 「なんすかこれ?」と聞くと、事の次第を話し始めました。

 なんでも、先輩らは4人で深夜2時ぐらいに地元で有名な廃ホテル(怪談11で書いた話に出てくる廃ホテルです)に肝試しに行ったそうです。

 で、廃墟ホテルに着くも、先輩Aの彼女は乗り気ではなく「私は車で待ってる」と言ったそうです。
 じゃあと残り三人でその廃墟ホテルに侵入。
 しばらく見てまわるも、落書きとボロボロになった各階層があるだけで、なにもない。
 ・・・・と思ってたら外からかすかに悲鳴が聞こえたそうです。
 もしかして残してきた先輩Aの彼女になにかあったのかと、入口に急いで戻ったそうです。
 (このころは暴走族やその他の危ない人たちも来るので、そういった心配もある)。

 と、入口まで戻って、車を見て、三人は震えたそうです。
 先輩Aの彼女を乗せた車が、車のまわりには誰もいないのに、ガッタンガッタン大きく揺れていたそう。

 Aの彼女は半狂乱で叫んでいる。
 Bの彼女もそれを見て半狂乱。
 「なにあれ!いやぁぁぁ!」と叫んでる。
 AもBもしばらく思考停止して震えていたそうですが、このままじゃどうしようもないと、意を決して、揺れている車をなんとかすることにしたそうです。
 Aが「車をおさえろ!」と叫び、BとBの彼女が半狂乱で車を上からおさえる。
 それでも力強く車は揺れたそうですが、他に対処法が浮かばなかったそうで、必死におさえていたそうです。

 そうこうしているうちに揺れが止まったそうで、そのすきに車に乗り込み、急いで廃墟ホテルを離れ、そして近くのコンビニでしばらく震えていたそうです。

 そしてコンビニの駐車場に座り込み、なんとか缶コーヒーで落ち着こうとしていると、Bが「あ!あれ見ろよ!」と車を指さしました。

 その言葉にAたちが車に近づくと、無数の手形があったそうです。
 もうAやBの彼女たちは「いやだ車に乗りたくない」と泣き止まず、どうすることもできず、とりあえず時間をつぶすことに。
 しかし、日が昇りだすと、その明るさからか少し心が落ち着いてきたそうです。

 ですが、手形の問題もあるし、とにかく車に乗るのが気味悪い。
 これをなんとかしないと・・・と思った時に、私の事を思い出したそうです。
 (別になにかするわけでもないですが、なぜかこのころはこう言った現象を私に相談する人がまわりに多かった)。
 ちょうど、今日は仕事だから、朝から行こうと思って、向かう途中で電話したそうです。

 とまあ、話を聞きましたが私は「それ、自分たちの手形じゃないんですか?車が揺れてたとして、それを上から押さえたなら、手形とかつくでしょw」と言うと、先輩Bが「じゃ、手形、よく見て見ろよ」と言う。
 よーく見てみると、おそらく先輩たちの手形や洋服と擦れたあと(つまり車の埃が取れたようになってる)のと違い、埃が取れた手形ではなく、新たに埃が手形の形でついているあとが無数にあり、そしてそれがすべて子供大の大きさの手形でした。

 「うわ!きも!」とか私が言ってると、先輩が「ちょwお前、なんかないの?ほら、対策とか」と聞いてきます。
 「?洗えばいいんじゃないですか?」と答えると「違うって、なんかお祓いというかそんなやつ」と言うんですね。
 「?なんか憑いてきた?みたいな事が起こったんですか?」と聞き返しました。
 すると「いや、そんなんは感じないけど・・・気持ち悪いじゃんw」と言うわけです。
 「なんか、今は我慢して乗ってもらってるけど、アイツもさぁ(彼女のこと)気持ち悪いからもう今後は乗りたくないとか言うわけよ」と困ったようでした。

 まあ、それならという事で知り合い(当時、なぜか知り合いに霊媒師の家系とか、破戒僧みたいな生活のくせにそういったものを解決してくれる?人が知り合いにいたので)の霊媒師の家系の女の子に電話してみました。
 (この子がまたすごくて、あまりにすごいから気味悪がられている子)。

 まあ、その子曰く「ん~大丈夫なんじゃない?その人たちが遊び感覚で来たからあっちも遊んであげただけみたいだよ~。心配なら軽く塩とお酒でもまいて洗えば~?それ見せりゃ、女の子たちもなんとなく落ち着くんじゃないの~?」という話でした。

 まあなんとも軽い感じに返されましたが、こういった話では当時、信ぴょう性はピカ一(なんだかんだで言う通りするとうまくいく)の子だったので、先輩にそれ伝えると「そうなん、それならなんか安心だわwそうするわ」と帰っていきました。

 まあ、車にあまり塩かけすぎないようにね~と見送ったわけですが・・・。

 なんともこの手の話でベタな内容なわけですが、その廃ホテルで同じような現象に見舞われた方がいるという話は当時多かったですね~。

 しかし、なぜ子供の手形なんでしょうね?
 その廃ホテルの近くで自殺する方はみな大人なのに・・・。


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