交通違反と行政処分、刑事罰について分かりやすく解説
運転者が行った交通違反は、反則金納付の命令、運転免許証の効力の取り消しや停止などの行政上の処分を受けるだけでなく、その態様によっては、罰金を科せられたり、懲役や禁固などの刑事罰を受けたりすることがあります。
今回は、交通違反の点数制度や刑事罰との関係について、分かりやすく解説いたします。
交通違反の点数制度について
道路交通法には点数制度が設けられています。
点数制度は行政処分のことで、自動車やバイクを運転していて交通違反をした人や事故を起こした人に、その違反や事故の態様によって1から35点までのあらかじめ定められた点数がつけられます。
点数は過去3年分が累積されてその合計点数と違反の回数によって、行政処分として免許の効力停止や取り消しが行われます。
運転免許の行政処分の種類
運転免許の行政処分には次の停止処分と取消処分があります。
免許停止(免停)
免許停止処分とは、一定の期間免許の効力が停止される処分です。
「免停」と一般的に言われている処分です。
停止期間は30日から180日までと定まっており、日数は、行政処分を過去3
年に何回受けたかで変わってきます。
免許停止期間は、行政処分歴が0回の場合は、
① 6点以上で30日
② 9点以上が60日
③ 12点以上で90日
です。
なお、累積点数が15点以上になりますと、免許の取消処分となります。
多くの方が勘違いしているのは、免許の点数は15点あってそこから違反を犯した点数を引いていくということです。
点数はあくまでも累積によります。
免許取消
運転免許の取消処分は、交通違反の危険性が高くて大きな悪影響を社会に及ぼす重大違反や、違反行為を何度も重ねる悪質な運転者に対して行われます。
免許が取り消された場合欠格期間があります。
免許を取得することができない期間のことで、この期間中に免許試験を受験することは出来ません。
そして、再取得をするためには最初から教習所に通うか、仮免や講習を受講して本試験を受けるかのどちらかが必要です。
実際には教習所に通わないで本試験を受けて合格する人は非常に少ないです。
免許の取消処分を受けることは違反行為を繰り返している人が多いので、自己流の運転をしているため、基本に忠実な運転をしなければならない実地試験に合格することが難しいからです。
刑事処分と行政処分と違いについて
交通違反をした運転者は刑事処分と行政処分のいずれか、または2つの処分を受けることとなります。
刑事処分は、道路交通法の点数制度による点数が6点以上の重大な違反を犯した場合に受けることとなります。
刑事処分については裁判を受けることになりますが、道路交通法違反の裁判のほとんどが、略式裁判と言って不服がなければ裁判当日中に刑が確定します。
しかし、不服がある場合には正式裁判を受けることができ、この場合には、2週間以内に不服を申し立てることで可能です。
有罪と裁判で決まった場合、「罰金・禁錮・懲役」のいずれかの刑罰か禁錮・懲役には罰金が併科される場合もあります。
続いて、行政処分とは、処分を行うのが行政機関の公安委員会です。
行政処分は反則金納付の命令や、運転免許の停止、取消し処分がこれにあたります。
行政処分は刑事罰の如何に関わらず行われます。
これは、刑事罰は過去の行為に対する制裁であるのに対して、道路交通法上の行政処分は将来における交通の安全の確保であることから、双方の目的が違うからです。
そのため、公安委員会は独自の立場で処分を行います。
例えば検察庁で不起訴となった事案であっても、その行為が将来における交通の安全の確保を妨げるようであれば、公安委員会は独自の立場で行政処分を行います。
ただし、反則行為が6点未満であっても、反則金を支払わない場合や違反行為を否定する場合は、刑事処分に移行します。
交通違反の罰金と反則金との違いについて
交通違反をすると、反則金や罰金の支払いを命じられることがあります。
同じお金を支払うことなので同じように捉える方もいるようですが、実は全く違う性質のものです。
では、どう違うのか見ていきましょう。
罰金と反則金の違い
道路交通法違反に科せられる罰金とは、
①点数制度の6点以上の重大な交通違反をした場合
②反則制度の反則金の納付をしなかった場合
③違反行為を否認した場合
に行われる刑事罰の一つです。
対する反則金は、道路交通法上の「交通反則通告制度」に基づく行政刑罰です。
交通反則通告制度が制定されるまでは、道路交通法違反をすれば全て刑事罰の対象となっておりました。
増大する交通違反の処理を効率・迅速的に行うことを目的として、1968年に新設された制度です。
この制度は、特例的な制度で軽微な交通違反については、反則金といって、違反種別毎に金額がきまっており、その反則金を支払うことによって刑事罰は行わず、行政処分のみとするものです。
この制度によって、事案を簡単に迅速に処理することが出来ますので、行政、裁判所、違反者の負担を軽減することが出来ます。
反則金の金額は、違反の態様によって3,000~40,000円と決まっています。
赤切符・青切符・白切符とは
交通違反の種類によって切られる切符には違いがあります。
それは、赤切符・青切符・白切符と切符の色によって区別されています。
3種類の切符の区別は次の通りです。
赤切符……重大な違反行為で刑事手続き、また行政処分の免許の停止や取消処分などを伴う際に交付され、切符の色が赤色です。
また、反則通告制度の反則行為に該当しない、自転車の違反 行為 や 歩行者の違反行為も赤切符が交付され裁判所に出頭することが必要です。
※ なお、警察庁は2023年12月20日、16歳以上の自転車利用者 にも「青切符」を交付する反則金制度を導入する方針を固めております。
対象となるのは、重大な事故につながるおそれのある信号無視や一時不停止、携帯電話を使用しながらの運転などの違反です。
反則金は5,000円から6,000円が課される見込みです。
「青切符」が適用されるのは、2024年に法改正が実現するとするとしても、2026年度以降になりそうです。
青切符…交付される切符の色は青色で、反則金の納付を求められ、違反点数がつきます。
白切符…交付される切符の色は白色で、いわゆる点数切符と呼ばれるもので反則金はありませんが、違反点数がつきます。
1回の違反で免許取消しや免停になる重大違反について
悪質重大な違反行為を行うと一回で免許取消しや免許停止処分となります。
悪質重大な違反行為は、赤切符を交付され、または、逮捕されて調書を取られて身柄とともに検察庁に送致される場合もあります。
最初に、行政処分の前歴がない場合で一回の違反で免許取消処分を受ける場合を紹介します。
① 酒酔い運転、麻薬等運転
酒酔い運転と麻薬等運転の行政処分は最も重く、行政処分の点数は35点で刑事処分についても「5年以下の懲役刑または100万円以下の罰金」と定まっています。
② 共同危険行為等禁止違反、無免許運転、酒気帯び運転(0.25以上)、過労運転等
「共同危険行為等禁止違反」は、2台以上の車やバイクを連ねて通行または
並進させて、共同して行う暴走行為です。
酒酔い運転とはアルコールの飲んだ量に関係なく酒に酔っている状態です
から、お酒に弱い人が少しの量でも酔っ払ってしまって、正常な運転がで
きない状態と判断されると酒酔い運転と認定されます。
酒気帯び運転は呼気からアルコールが規定の量が検出された場合です。
行政処分はアルコールの量によって処分に違いがあります。
① 呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未 満……13点
② 呼気1リットル中のアルコール濃度0.25ミリグラム以上……25点
まとめ
道路交通法の違反行為によって、刑事罰の罰金の支払いが命じられた場
合、罰金はお金を支払えばすみますが、行政処分の運転免許の停止や取消しを受けますと、車の運転を行うことが出来ません。
車の運転を職業としている方にとって、運転免許の停止や取消処分は死活問題となります。
普段から交通ルールを守って安全運転につとめることが一番の対策といえ
ます。