マンションの窓から……
窓からながめた風景…
俺のリビングから観える、俺の好きな風景は、北側のサッシから覗ける山から山迄拡がった、関東平野北部だ。北東に観える赤城山から真北に観える三国山脈だ。よっぽど寒いのか三国山脈には、初夏迄山頂に冠雪している。「この辺と何度違うんかな~」俺は窓枠に靠れながら、ふと思ってしまったが、目を逸らしてマンションの北側に広がる街並みをしみじみと観た。「今日は週末で、随分静かなんだな~」と、10年ぶり以上に観た静寂の風景に思わず「俺が此処に住み始めた頃と、随分違うんだな!」としみじみ思った。
「10年かぁ~』俺は呟き一年一年回想した。「前は今よりだいぶ、騒がしかったよな~」と昔の喧騒を思い出しながら、自然と年寄りみたいに思いにふけっていたら
「あなた、お茶何にする?」と麗子に尋ねられた。「あぁ悪い、コーヒーとクッキーにしてくれるか?」と答えたら、「じゃあ、ダイニングに来て!」と言葉を投げかけ歩いて行ってしまった。後を歩いてテーブルに就くと、我が家のお嬢である智子は、もう椅子に掛けてテーブルに捕まって、浮いた足をブラブラさせていた。「今日明日は、幼稚園休みなんだろう?」俺が尋ねると、「そうよ、一緒に居られてパパ嬉しいでしょ!」と返してきたので、俺たち夫婦は、顔を見合わせて笑い合った。「そうよねいつもパパは、会社に行っちゃうもんね!」と麗子は優しく笑いながら、智子に話していた。「パパは、ゴルフの練習に行っちゃうの?」と聞いてくるので、そうだよと言える筈も無く、「うぅん、今日も明日もウチに居るよ!」と答えたら、「やったー!」と言って、手をブンブン廻して喜びを表現していたら、麗子にキッと睨まれ大人しくなった。
俺はクッキーを摘みながら、妻子のやりとりを横目に見た。麗子は俺に「お昼何にしますか?」と尋ねてきたので「天ぷら喰いてぇから、天丼と蕎麦にしてくれ!」と俺が言ったら「じゃあわたしと、智ちゃんはミニサイズの、天丼にしましょ!」と、智子の顔を見ながら言って、蕎麦屋に電話で注文していた。「あなた、混んでるから12時30分を廻るそうだけど、いいでしょ?」と言ってきたので、俺は指でOKサインをして、了解を示した。麗子は頷きながら、蕎麦屋に伝えていた。12時40分近くに蕎麦屋の、出前持がドアホンを鳴らした。財布を持って麗子は玄関に掛けて行き支払いをして、出前を受け取りテーブルに持ってきて、お茶を淹れて漬物を子皿に、盛り合わせて来てくれた。俺達は、それぞれのペースで昼飯をやっつけて、お茶を飲みながら、漬物を噛んだ。俺は少し昼寝した後に、またリビングの窓から、遠い山々から近くの静かな住宅街迄を、眺め廻した。其処には休日らしい静寂が拡がっていた。「今の子はゲームばっかりやってて、外で遊ばねぇんだな!」俺は呟き、少し悲しかった。変わり行く街並みを眺めながら、俺はしみじみ思った。
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