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連続小説「アディクション」(ノート46)

ギャンブル依存症から立ち上がる

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

〈「お茶会ラスト?」〉 

「卒業シーズン」に、たまたま重なっているだけだとは思いますが、私を含めてこのクリニックを去る人が続出してきています。

そして「お茶会」の相方である玉井さんもいよいよ一流バーテンダーとして復活し、この「お茶会」もひとまず区切りということになります。

「屑星さんは引き続きよろしくお願いします。」

「はい、お断りします。魚さん。」

「じゃあ僕はどうすればいいんですか」

「クリニックに戻ればいいじゃないですか。金銭管理してもらって」

「屑星さんは、ボクの味方じゃないんですか?」

「どちらかというとクリニックの味方ですかね。」

まぁ、基本的にこの人といると「時間の無駄」以外の何物でもありません。

取りあえずラインの相手くらいはしようかと思ってますが、ていうかこの人はこれから一体どうしたいのかも全くわかりません。まぁ関心は敢えて持ちませんw

「で、玉井さんのお店って高いですかね?」

「安くはないけど、まぁ来てくださいよ。柳田さんとか、ノブさんでも誘って。あ、魚さんも来ていいよw」

魚さんが鼻水垂らしながら号泣しているのを横目に、

「そういや玉井さん、ノブさんとの『あかねん争奪戦』はどうなりました?」

「あぁ。撃沈しました。結婚するそうです。」

「そうなんですね。仕方ないですね。」

「いや、あきらめつきませんよ。」

「え、どうしてですか?」

「だって相手は才所さんですから」

「え、えーっ!?」

私は「マスオさん」の如く驚愕しました

「ノブさんもご存知で?」

「はい、先週あかねんとノブさんと3人で飲みに行ったら言われました。」

「あの男も『広瀬すず』が好みか、、」

「僕は石原さとみ」

「魚さん、うるさいよ。」

「あかねん、才所さんのどこが良いかって、まぁいい男だからなあ。」

「庄司さんでないのが僅かな救いです」

「しかしフロア違いで、どうやって近づいてきたんだろ。」 

「あ、カレー作りの時ですよ。」

「カレー作りでカレ作ったか。」

「あそこで、僕はあかねんと仲良くなって飲み会行くようになったのに、才所さんが一枚上手でした。」

「まぁ才所さんも理事長にこき使われて、苦労してたから報われたか。」

「あ、それでそっちも理事長が仲人らしいですよ。式は半年後に島ちゃんのと2週連続になるみたいです。」

なんとなく、バーテンダーの玉井さんから清水健太郎の「失恋レストラン」の歌詞を思い出してしまいました。

「玉井さん的には、結構ガチだったんですか?」

「店が軌道に乗ったら正式に告白しようとは思っていましたよ、、」

魚さんは、鼻水に代わって鼻血を大量に流出していました。

「まぁなんとか吹っ切れてますんで、今はお店を成功させることのみですよ」

「そうですか。応援してますよ。」

「怖いのはこういう時がスリップの罠があるんですけどね。」

「なるほど。私も決して『自分は大丈夫』とは思ってません。」

こうして、エールを交歓したのち、「最後のお茶会」は終了したのですが、、

事件が起こるのでした。

〈「逃避行」〉

厳密に云うと「逃避行」ではないのですが、「駆け落ち」っていう表現もどうかと。まぁ居場所は分かっているものの、少し遠いかなぁとか。

はい、玉井さんがやってくれました。

「ノブさん、どうなのよ?」

「いやぁ。なんとも。にしても、才所さんは今日も気丈ですよね。」

「そもそもあかねんと才所さんが婚約したこと知ってるの、私とノブさんくらいだから、まぁ穏便でいられますかねえ」

「いや、ほぼ全員知ってます」

「あ、そうか。」

「脱退生」の魚さんが、メンバーほぼ全員にラインしていたのでした。

「まぁ、その後、玉井さんがあかねんを言わば『寝取って』しまったことまでは知ってはいませんが。」

「私とノブさんにだけですかね。玉井さんからあかねんと『同棲始めました』ラインが来たの。」

「たぶんそうだと思います。」

「しかし、罪な事するよなぁ。まぁ人のことだから悪くは言わんけど。」

「おいノブ、玉井がどうした?」

「いや淡河さん、ここだけの話ですが」

変な嗅覚が働いたのか淡河さんが我々の会話に飛び込んで来て、そして事もあろうにというかノブさんが喋っちゃって、一応私の方から絶対に他言無用だからと釘を刺したものの、

当然、「ここだけの話」にはしませんでした。

「淡河さん、駄目ですよ。」

「いや、迫丸と根市だけに留めて一切他には言うなって念は押したんだか」

で、このお二人はボクシングプログラムのメンバー全員に喋ったらしく、そこにはコーさんもたまたま来てて、さらにコーさんが、才所さんに直接デカい声で

「才所さん、婚約者寝取られたの?」

直後にアレク先生がコーさんを秒殺でKOしたのもまさしく「後の祭り」で、まぁこのクリニック内では、メンバーやスタッフの個人情報は一切保護はされないということでしょう。

「屑星さん、ちょっといいですか?」

夕方のプログラムが終わったころに、私は才所さんに声を掛けられ、クリニック閉院後、秘密裏に「お茶会」をすることになりました。

「屑星さん、お声掛けしてすみません。いつも助けられております。」

「いえいえ、私としては嬉しい限りですよ。」

「まぁ、ご相談というか、ちょっと他に話す人がいないので」

「あの話ですよね。」

「どこまでご存知ですか?」

「その、玉井さんのほうから逐次色々と聞いております。」

「はは、そうだと思いました。」

「理事長には報告したのですか?」

「報告するやいなや、凄い剣幕で『その玉井とやらのアパート家捜しして、彼女を連れ出してこい!』って」

「家捜ししなくても場所とか仕事先くらいは分かってるだろうに。」

「まぁ、彼女が向こうを選んだっていう事実は揺るがないんですけどね。」

「個人的には、才所さんに幸せが来て良かったなぁと思ってた矢先なんです。」

「ありがとうございます。あ、屑星さん間もなく卒業するし、たまにお会いしましょう。」

「それは喜んで。しかし、よくよく考えると、とんでもない話ですからねぇ。お辛くないですか?」

「ぶっちゃけ、辛いです。でもまぁメンバーさんがそれで幸せになるなら。」

「いやぁ。ちょっと私も泣けてきました、、」

と、後ろの席から嗚咽する音が聞こえて来ました。

「魚さん、よく突き止めましたね」

おそらく、「お茶会」は、玉井さんが去り、才所さんが来て継続されることになりそうです。

本日はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ




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