競わない・比べない・争わない
私たちはどうやら間違っていたようです。
コロナバブルが終焉し始めたのが、2021年秋ごろからです。「まん防」が全面解除された後の初めてのゴールデンウィークでは、大多数の店舗が前年を割り始めます。
2021年秋ごろから、幹部会議では次のような会話がなされます。
社長:今月は前年を大きく割り込みそうだ。皆どう思う?
店長:競合店もリニューアルオープンした影響でしょうか?外食する人も増えたようです。
Aチーフ:客数が1割減っています。これは、社長、店長が無策だからではないですか!
Bチーフ:悪いといっても、前年トントンの部門もあります。構成比をみると青果部門が低すぎませんか!私は青果部門に問題があると思います。
Cチーフ:私の部門は労働分配率28%なのに、惣菜部門は80%を超えています。部門的には赤字じゃないですか!惣菜部門を何とかしないと。業績不振、連帯責任で利益が出ている私の部門までボーナスなしなんて困りますよ。
Dチーフ:午前中は混雑しているのに、午後から、特に夕方は競合店にお客を取られている気がします。特に鮮魚は品切れが早すぎませんか!
社員は、自分のことを棚に上げて、責任のなすり合いに終始します。売上高構成比を比較することに何の意味があるのでしょうか。労働分配率は、加工度の度合いによって異なります。日本一の鮮魚店・角上魚類の労働分配率は60%を超えています。
労働分配率の高さを比較するより、加工度が高くなればなるほど、接客を大切にすればするほど労働分配率は高まります。加工度が高くなっても付加価値が高まれば、お客がちょっといい気分になってくれれば、購入率は高まるのです。その結果、粗利益額が経費を大きく上回っていくのです。
社員が、❶競い合い、❷比べ合い、❸争い合うこと自体、業績不振を招くのです。
業績アップは「社長の人格」で決まります。社長が怒鳴ることをやめて優しくなり、従業員を誉める、社員はリラックスして楽しみながら新しいことに挑戦する。お客が喜ぶことで自分も嬉しくなり、幸せな気分になる。そんな波動がお客の心を動かす。そして業績は後から超特急で追いかけてくるのです。
前述の幹部会議とは正反対のことをしているお店があります。
惣菜チーフ:最近、油も粉も、トレーも値上げ続きです。養殖サーモン、養殖真鯛、養殖ブリは今後以前の3倍に値上がりそうです。どうしたらいいですか?
社長:物価が上がっているのではなく貨幣価値が下がっているそうだよ。今年の暮れには4分の1ぐらいに下がるよ。安く仕入れようと今までのノリで買いたたいたら、誰も売ってくれなくなるんじゃない。それより、鶏肉に代わって豚肉、豚肉に代わって牛肉と食材のグレードを上げて行ったらどう?高級食材は比較的安定してるよ。寿司も、養殖真鯛の代わりにコチ、キンメダイ、マコガレイなど天然白身、舶来サーモンは御当地サーモン、原価が高騰しているネタを避けて、比較的原価が安定している生本鮪を使って、本鮪と巻物のセット、本鮪づくし、本鮪の炙りなんて工夫したら面白いんじゃない?
惣菜チーフ:売れなかったらどうしよう?私怖いです。
社長:2,000円の寿司が5個、10個売れ残っても大丈夫だよ。チャレンジしてくれたらうれしいなぁ。
鮮魚チーフ:高級焼魚弁当やってはどうですか。銀鱈西京漬け、銀鮭西京漬け・・・。ライバル店の1.5倍厚く切ってもお弁当が同じ値段で売れるようボクも応援しますよ。
グロサリーチーフ:どうせやるんなら「究極の海苔弁当」作りませんか!海苔は高級寿司店が使用している「青混ぜ」仕入れますよ、地元の醤油と日本酒で「割り醤油」を作って刷毛で塗ると人気だって先日テレビでやってましたよ。
精肉チーフ:ボクを仲間はずれにしないで下さいよ。仙台牛のメンチカツやってみませんか。メンチカツには「黄金比率」があるんですよ。その「黄金比率」ってヤツでメンチカツ作れば大行列ですよ。自家製仙台牛ローストビーフの握り寿司って手もありますよ。マカセナサイ!
レジチーフ:私たちも参加させてください。商品のおいしさを自分たちの言葉でお客に伝えます。
青果チーフ:うちの部門だけ仲間外れですか?ボクたちはお店のムードメーカーですから、声出しと声掛けで盛り上げて見せますよ。こう見えても1,000人の「ご贔屓さん」がいるんですから。
社長:じゃあ、今すぐにも動いてくれたらいいな。すぐに試作品できそうだね。
全員:(顔を見合わせて一斉に)ハイ!
お店全体が、競わなくなったら、比べなくなったら、争わなくなったら、どんなに仕事が楽しくなり、職場が喜びに満ち溢れたものになるでしょうか。売上予算とか、マネジメントとか、人事評価とか全く関係ないのです。
すべての宇宙現象は波動です。喜ばれた喜びで魂が震えるのです。
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