駅徒歩15分出版戦略
昔、不動産屋さんにこんなことを言われたことがある。
「うちは駅から距離があってなかなか人が来ないんで、ウェブから問い合わせしてくれた人に対して手厚めに対応するようにしてますね」
客にとって、不動産屋なんてまれにしか使わないものだし、日頃から馴染みの店があるわけではない。
地元密着のところはともかく、大手はあつかってる物件もみな同じだ(同じDBを参照している)。
この店だから選ぶ! みたいな動機は薄く、駅からの距離による立地がそのまま、集客の多さにつながる。
駅から遠い不動産屋は、その部分が弱い。
それはもうしかたないので、集客の多さではなくて、たまにキャッチしてやってきてくれた客に対して、逃さないように丁寧めに接客をする。
考えてみればあたりまえのことなんだけど、なるほどな~と思って。
実際丁寧に対応してくれたので、そこ経由で契約したことがある。
僕、児童書で本を出すときに、この意識がある。
駅から徒歩15~20分くらいのところに店を出しているという感覚が強い。
新人のころに散々言われたのが、人のいないところに店を建ててどうすんだ(ニュアンス)、ということだった。
駅前とか駅徒歩5分以内の場所に店を出せばいいのに、どうしてわざわざ辺鄙なところにいこうとするんだ。力はあるのにもったいない、と。
これは、なるほどな、と思ったんだよね。
人のいるところに出店するというのは、商売の鉄則だろうな、と。
実際、書店の棚に本があったとき、隣り合ってならんでいたとしても、「駅前で出しているような本」と「駅徒歩15分くらいで出しているような本」では、クオリティに差がなくても売上がぜんぜんちがったりする。これは立地の問題なんだよね。
自分はデビュー前、店の中のことは考えまくっていたのだけれど、『立地』を考えたことがなかったんだなと。
考えたことがなかったどころか、砂漠とかアマゾンの密林の奥に、オレの建物をたてるのがロマンだ…!! とか思ってた。
で、立地を考えようと思ったんだけど……。
自分にはそっちの適性が絶望的になかった。
人があつまっていると自然に、「あそこはもう人がたくさんいるから、自分はべつにいいかな…」と思っちゃうタイプなんだ。
気質が根っからのマイノリティなんだろうなぁ…。
結構がんばってみようとしたんだけど、モチベーションをうまくたもてなくなっちゃって…。
なのでこのごろはもう、駅前に出店するのはあきらめて、さすがに砂漠とまではいかないまでも、駅徒歩15~20分のところに店をかまえて、その上でどうすればよいか? を考えるようにしている。
集客の多さはある程度スパッとあきらめて、でもたまたまキャッチしてやってきてくれた読者に対して、どうスムーズに店内に入ってもらって、そのまま気に入ってもらおうかしら、と考える。
そうして深く突っ込んで考えていくと、じつは見過ごされがちだけどやれることはたくさんあるんじゃないかな、1つ1つ丁寧に抑えていけば、駅徒歩15分でも細々やっていける程度にはなったりするんじゃないかな? とか思っている。
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