創作には制約がほしいって話

ヨシタケシンスケさんのエッセイを読んでいたら、すごくわかるわかるー! っていう話があった。

イラストレーターとして、たとえば小説のさし絵を入れるって仕事をもらったときに、「どこでも好きなところに絵をつけてください」っていわれるのは、すごく困るっていうお話。

だって、どこのシーンにも絵はつけられるんです。絵を描く仕事をしているので、どこでも掬いようはあるんです。
それを、何でもいいって言われると、まず全ページ考えないといけない。
全部考えて、そこでどっちがおもしろいかって、トーナメント戦をするようになってしまう。
で、これのほうがおもしろいとか、こっちはつまらないから、じゃあやめようとかやって、たった三つ描くために、百個以上考えないといけなくなる。自分でも、すごい効率が悪いと思う。
むしろ、こことこことここって決めてくださいって。そうしたら、その前後で、そこにあるべき一番いい絵を提案できます、って。
選択肢は狭ければ狭いほど、こちらとしては幅が広げられるんです。
そういうタイプの人間は、条件が、お題が多ければ多いほど、多分クオリティは上がるんですよ。その状況を満たすにはどうすればいいか、かつその条件に挙げられてないことをどう盛り込めばいいかっていうところに集中できるので。
----- ヨシタケシンスケ『思わず考えちゃう』より

僕は小説を書く側の方だけど、商業でお仕事するときは、完全にこれ。

作家っていうと、自分の表現したいものを描くっていうようなイメージがあるし、僕ももともと小説を書きはじめたきっかけは、完全に表現欲だったんだけども。

ただ、制約がないと、とっちらかるんです。
変数があまりにも多すぎて。

お話を0から考えるときって、ジャンル×テーマ×モチーフ×キャラ×ストーリー×演出×文章表現……って、たくさん考えることがあって、さらにそれぞれについて、大量の変化のパターンや組み合わせを考える。
児童書ではさらに、読者意識みたいなものを、結構しょっちゅう考えます。補正しないとズレるから。
僕、その枝をあっちこっちに伸ばしすぎて、わけわかんなくなっちゃうタイプなんです。
デビューしてから、ずっとそう。

そういうときに、「今回はこれ!」とか「お題はこんなふう!」とか「こういうカラー!」っていうポイントポイントがあると、よかった、その部分の考える頭をほかの部分に割り振れる……となって、自然にクオリティが上がっていくし、自分の描きたかったこともいいバランスで入れこめる。
(もちろん、そのポイントがあんまりニガテだったりするとダメなんだけど)

僕、編集者に一番頼っているのは、じつはこの部分だったりする。
ポイントさえ決まれば、それをどう実現するかは、まかせといて! っていう。

で、新人のころって、このへん結構自然に機能するんです。
編集者が作家に対して、思ったこというので。
だけど歳食っていくと、ヘンに気を遣われてしまったり、作家の意向を尊重されてしまうことも増えてきたりする。(されてしまう、っていうのもヘンなんだけど…)

それがうれしい人もいるのだろうけど、僕はあまり、そういうタイプじゃなくて。
だって自分で決めなくちゃいけない場合、ブレーキまで自分でかけなくちゃいけないし。疲れるし。
はじめから、
「この枠内で、このルールの範囲内で遊んで!」
っていわれた方が、ブレーキなしでいけるよなぁと。

だから、自分の表現欲をスタート地点にして書くものは、それはもう趣味の範疇の書き物でいいかなと思っていて、商業ではべつのスタート地点がほしいなと。よく思っていたりします。

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