協調学習ってなんだろう
今回は、協調学習について書きたいと思います。専門が異なる人にも、自身が専攻する学習科学に関する用語について分かりやすくお伝えできるようになるために、少しずつまとめていきます。
この記事を読み終わるころには、「協調学習」について、おおよそ理解できるようになっているはずです。
さて、本題に入る前に・・皆さんアクティブ・ラーニングって聞いたことありますか?
その言葉を聞いてどんな印象を持ちますか?
「アクティブにラーニングすることでしょ?!」
そんなイメージをもたれる方も多いのではないでしょうか。
アクティブにラーニングすること、確かにその通りです。では実際にアクティブにラーニングするにはどのような工夫が必要でしょうか。
1. 協調学習とは
協調学習とは、英語で書くと、Collaborative Learning の訳語の一つで、学習者の小グループを作り、互いに協力して問題解決に取り組ませるような形態の学習方法のことを言います。(加藤・望月, 2016)
俗に言う、グループ学習のうちの一つですね。
社会情勢の急速な変化や、それに伴う学習観の変化により、協調学習は注目されてきました。
VUCAの時代と言われるこのご時世で、何かを覚えることに重きをおいた学習の価値は薄まり、自分たちで答えを創り出していくことが求められてきています。それが教育の現場にも少しずつ実践の学問として、行われているということです。
(追記)VUCAは、ビジネスの文脈でよく用いられれるものです。「不確実、かつ複雑で先の将来を見込むのが困難である」というような意味を指します。(Volatirity:変動性、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:曖昧)(日経コンピュータ参照)
2. 協調学習における学習観
私は先ほど、学習の持つ価値が変化してきていると書きました。もう少し詳しく考えてみましょう。
協調学習の場では「経験や思考をことばで表現すること」をしており、ことばを使って自分の考えと他人の考えを統合したり、その場で起きていることや考えついたことを少し抽象化したりすることができます。(三宅ら,2015)
学習を学習者個人のものとして捉えるのではなく、社会的共同体の中で構築しながら存在しているという考え方です。
この考え方のことを「社会構成主義」と呼びます。
「社会構成主義」の「構成」は、
「既存の知識と新しい知識を結び付けて積み重ねていくもの」
と捉えると分かりやすいかもしれません。
3.具体的な学習環境
では、社会構成主義的学習観に基づいた、実践(学習環境)はどのような形態を指すのでしょうか。
例えば、知識構成型ジグソー法という学習方法があります。これは、個人内での知識の統合を明示的に支援する知識構成型のジグソー法のことです。
知識構成型ジグソー法については上記の、東京大学のグループ、CoREFがまとめたものが分かりやすいので、ぜひそちらをご覧いただきたく思います。
CoREFについては最後にまとめます。
4. 評価の方法
さて、学習に重要なのは、学習者を適切に評価することです。学習観が変わるということは、それに伴って、評価方法も適応する必要があります。
三宅ら(2016)は、学習評価を3つを要素とした一連の作業であるとしています。その3つとは・・・
①学んでいる人の知っていること、考えられること、できることなどを何らかの方法で「観察」すること
②得られたデータの背後にどんな認知過程が働いているのかを「推測」すること
③その背後の「認知」過程そのものの姿をよりはっきりさせること
です。
つまり、生徒・学生に「どんな頭の働かせ方(=認知過程)をして欲しいか」を教師となる側が認識している必要があるし、望ましい認知過程を辿ってもらうための、学習環境を整える必要があるのです。
5. 協調学習における学びのゴール
評価は、外部から受け取るものとして説明しましたが、学習者にとっての「学びのゴール」について、協調学習においては以下のように捉えています。(三宅ら,2016)
△今ここで教えた通りにできる
◎将来、学んだことを教室から「持ち出して【可搬性】」、必要になった時にきちんとその場の要請に合わせて「うまく使えて【活用性】」、さらにはその学びを土台に、次の学びを「積み上げて発展させる【修正可能性】」ことができるところ
上記の「学びのゴール」についてどう思いましたか?まさに初めに書いた、不確実性の高い時代(VUCA時代)での生き方につながっていくのではないでしょうか。
(参考).CoREFの活動
例えば、CoREFという機関では、学習科学という新しい研究分野に関しての知見を広く世に出していく活動をしています。
学習科学・・・「人はいかに賢くなるのか」を明らかにするために、教育工学や認知科学の視点から、人の学びを明らかにしようとしている学問分野のこと
学習科学は、実践の学問であるので、実践例を世に広めた点で、世のアクティブラーニングを推し進めています。
協調学習ハンドブックも出版していて、適切な方法でアクティブラーニングが浸透していくように、丁寧に、協調学習について説明がされています。
6.まとめ
いかがだったでしょうか。実は、大学院の授業で、自分の研究分野における重要なキーワードについて、まとめられるようになる、ということを求められており、練習としてnoteでまとめてみました。ちょっとこれまでとはテイストが異なる構成だったかもしれません。
「協調学習」。私にとっては、数え切れないくらい聞いた用語ですが、初めて聞いた人でも少しでも概念を理解してもらえるように意識をしました。
もう少し体系的にうまくまとめられるように頑張ります。^^
参考資料
加藤浩・望月俊男(2016).教育工学選書Ⅱ 第4巻 協調学習とCSCL ,ミネルヴァ書房
三宅 なほみ (著), 東京大学CoREF (著), 河合塾 (著) (2016). 協調学習とは: 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業, 北大路書房
三宅なほみ(2011). 概念変化のための協調過程ー教室で学習者同士が話し合うことの意味ー,心理学評論,54(3),328-341.
三宅芳雄・三宅なほみ(2015).新訂 教育心理学概論, 一般財団法人 放送大学教育振興会
AIで劇変!2030年のオフィスと組織(日経コンピュータ, 2019/02/21号, pp.84-87)