重たそうな物を持ち上げた時に実際は軽すぎて行き場を失った力のようなあの感覚

意味深なタイトルの日記と回想録。

2023/1/23

今日は役職者向けの研修兼テストでした。結果が悪すぎると降職もありますし、そこまでいかなくとも人事考課に影響はありますので手は抜けません。今回のテスト範囲はA4で300ページくらい。法律やら社内規則やら業務マニュアルやらのごちゃまぜで、直近で刷新されたものも多いので試験前に備えておきました。

で、ですよ。

今回からテストの形式が変わっていたのもあってか、白けるほど簡単になっていました。イヤらしい引っ掛け問題もないし、数値管理の複雑な計算問題もないし。WEB上のマークシート形式なので、テスト終了後すぐに点数が表示されました。余裕のトップ(同率多数だろうけど)です。だって満点だもん。むしろ1つでも間違えたらアウトっていうルールの方が納得できるレベルで簡単でした。

まあ一応、その後の問題解決能力を測るための記述問題(こちらは点数発表されない)は、私の得意とするところですのでいい感じにはなっていると思いますが。
・可能性の列挙
・メリットとデメリットの比較
・リソースの振り分け
・トラブルの事前回避  などなど
これらを制限時間内で論理的に説明する文章にする(行動する)ことが求められるテスト。得意そうでしょう?

しかしこう、力のかけ方を見誤った時の徒労感というか虚しさというか、なんとも言えないあの感覚を味わったのでした。
はい、タイトル回収。

あぁ、ついでなんでこれも書こう。

先日、残業もせずに帰ろうと思っていたら、26歳男性部下の斎藤君(仮名)から声がかかりました。

「あの、これから少し時間よろしいでしょうか。業務とはあまり関わりがない事なのですが相談したいことがあって…」

なんだろうか。内容に関わらず相談事は受ける性分なのでこれを快諾すると、ここでは少し話し辛いというので人気のない場所へ移動。

「眠れないくらい悩んでいることがあって…」

確かに言われてみると11月あたりから少し暗めだったかもしれない。これは案外深刻なやつかもしれんぞ。

「その…ぼく、みゆきさん(仮名、同僚)のことが好きで、でもみゆきさんには彼氏がいるらしくて…」

あー、恋バナですか。相談する人間違ってるよ、とは言えず話を聞く。それに職場の空気が悪くなるのも困るしね。現実はテスト問題よりよっぽど難しいんだぜ……

話を要約するとこんな感じ。

・結構前から好きになっていた
・少し前(11月くらい)に彼氏がいることを知った
・仕事と趣味の話くらいしか出来ていない
・連絡先を交換していない
・自分には魅力がないと思っている
・未だかつて告白等はしたことがない
 (告白されて付き合ったことはある)


「そっか。で斎藤くんはどうしたいの?」
「どうって、みゆきさんと付き合いたいと思ってます。でもみゆきさんは彼氏のものだから、奪うようなことしていいのでしょうか」

はい、禁止ワード出ました。私のお説教スイッチ入っちゃいました。

「まず、これからは上司とかじゃなくて個人として喋らせてもらうね。えっとさ、『奪う』とか『彼氏のもの』だとか、みゆきさんはモノじゃないんだから、そういう言い方はやめようね。基本的には恋愛って、二人の合意のもと成り立つものだから、少なくともみゆきさんも彼氏もお互いのことを選んでいるっていうのが正しいと思うんだ。だから、斎藤くんもみゆきさんに選ばれるように行動したらいいんじゃないかな? 場合によっては、みゆきさんは今の彼氏も斎藤くんのどちらもを選ぶ可能性もあるんだよ。それは、斎藤くんの希望している『付きあう』というのを満たすことは出来るわけだよ。だから、彼氏がいるとか居ないとか関係ないんじゃないかな」

「それって、二股されろってことですか? そんなの嫌です。それに彼女はそんなことしないです」

食いついた。

「うん、今ね、斎藤くん大事なこと2つ自分で言ったよ。まず1つ、二股は嫌ってことは斎藤くんの目的は『付き合う』ことじゃないってことなんだけど、じゃあなんで『付き合い』たいと思ったの?」

「…それは、一番大事にされたいからです」

(付き合わなくてもそれは実現できるけど? というのは流石に可哀想だから突っ込まずに、)
「そっか、なら彼氏がいるから行動できずに悩むのは分かる。一番になれる可能性は低いからね。でも、行動しなきゃなんにも始まらないよね。だって、みゆきさん視点で考えれば、彼氏が既にいるんだから新しい出会いとかのアンテナ張ってないだろうからね。つまり、斎藤くんは今の段階でただの同僚、空気と同じだよ。選ばれる土俵に立ってない」

「それは分かってます。だけど、行動して会社に居づらくなったら困るし、みゆきさんや彼氏さんに申し訳ないし…」

「仕事がやりづらくなるのを懸念するのは分かるけど、そんなの職場恋愛する気なら絶対ついてまわることだから考えても無駄だよ。それよりも問題なのは、二人に申し訳ないと思って行動できないことだよ」

「え? どういうことですか?」

「さっき、みゆきさんは二股なんかしないって言ったでしょ。それとも関係あるんだけど、斎藤くんはさ、ろくにみゆきさんと会話もせず理解もしてないのに、自分の中でイメージを作りすぎてるんじゃない? 押し付けてるって言ってもいい。だって、みゆきさんは色んな人にモテたい、多くの人と付き合いたいって考えてるかもしれないでしょ。だから、申し訳なくなんてないかもしれない。そんなことは本人にしかわからないことで、他人はせいぜい会話を重ねていくことでその可能性を低く見積もっていくことしか出来ない。でも、斎藤くんはその段階すら出来ていない。つまり、斎藤くんは自分の中の理想のみゆきさん像を好きなだけで、みゆきさん本人は本質的に関係ないと無意識に思っているのかもね。だから行動に移せないし、モノ扱いもしてしまう。間違ってもいきなり告白なんかしちゃダメだよ。もし、みゆきさんが今の状態でOKしても、斎藤くんの理想のみゆきさん像とはかけ離れていて、すぐに別れることになると思うしそれはお互い不幸でしょう。だからまずは会話を重ねるために、連絡先くらいはがんばって訊いてみようね。逆にそれすら無理だったら諦めなさい。みゆきさんが拒否したらそれまでだし、斎藤くんが行動できないなら、言い方は悪いけどその程度の想いしかないってことだから」
(という内容を、相手の理解に合わせて説明)

「行動したところで、ぼくなんか選ばれませんよ…」

「選ばれないと思う根拠は?」

「仕事できないし、かっこよくないし」

「みゆきさんの彼氏は、仕事が出来てかっこいいの? 知らないでしょ、そんなこと。それに、みゆきさんがそんなことを重要視しているかどうかも知らないでしょ。もっと言うと、仮にみゆきさんがそういうのを重要視しているんなら、頑張るべきところが分かっていいじゃん。そこさえなんとかすれば選ばれる確率が上がるんなら、やるべきことが見えるでしょ? でもまあ、何はともあれ、まずは会話して連絡先聞くのが先だよ、もっと相手のことも自分のことも知りなさい」

考えてみます、と言って斎藤くんは帰っていきました。あれからそういう話はしてないから、どうなったかは分からないけど、連絡手段が増えた現代は、逆に奥手な人にとって距離を詰めるのが難しいのかも知れないな、と思ったのでした。

以上、重そうな相談かと思いきや初歩の初歩からやんかーい、というお話でした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?