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持続化給付金不正受給者連続逮捕

 国税局の職員まで逮捕されるという、大賑わい(?)のこの問題。
 心当たりのある方は早急に返還したほうがいいかもしれない。今なら逮捕はされない、かもしれないから。あ、私はサラリーマンだから関係ないからね。


 さてさて、ネット上で話題になっていたのは、この「返還さえすればお咎めなしってありか? 全員逮捕するべきだ」という意見だ。今日はこのことについて考えてみようと思う。


 不正受給者は、受給対象の基準の勘違いなどを除けば、ほぼほぼ詐欺罪である。そして、法律を犯した人間を法に則って裁くことは秩序維持という観点で重要であるから、この意見はもちろん理解できる。しかし、私としてはこの意見には同意しない。より正確に言えば、優先すべきはそこではないと考えている。

 そもそもこの給付金は、かの災禍によって経営が困難になった会社や従業員などを支援するものだ。そのため何よりもスピードが必要だった。その結果、審査がザルになるのは分かりきっていた。当然、不正受給を企てる存在も考えていたはずだ。それをおいても配布スピードを優先して実行したのは称賛に値すると考えている。

 もう少し掘り下げよう。
 支援するために配ったお金は、どこに消えるかというと日本社会にだ。もちろん、溜め込む人もいるのだろうが、それでも社会全体に流れるお金が増える。経済活動の萎縮を低減させる効果がある。

 では、不正受給した人たちは何にお金を使うだろうか。もちろん、溜め込んだり海外にお金を流してしまう人もいるだろうが、それでも日本社会で消費する人も多いはずだ。ということは、不正受給分も含めて社会に流れるお金が増えることになる。それで助かる命もある。
 これこそがこの給付金の意義であると私は考える。

 したがって、不正受給されようがそれは国にとっては想定の範囲内であり、むしろ、正当か不正かに関わらずお金が動くのならば、その方がいいという言い方すらできる。
 未だにシャッターが閉じたままの店舗も多いが、踏みとどまっている店舗のうちのいくらかは、この給付金のおかげという所もあるだろう。開いているお店が一つでも多ければ、それだけでこの制度は成功と言えるのだ。不正受給があったからといって、この点に関しては揺るぎない事実としてそこに在る。


 さて、災禍が少し落ち着きをみせたところで、この逮捕報道の連続である。この狙いはもちろん、見せしめであろう。

 調べれば簡単に不正受給は分かる。あとは時間の問題で不正受給者を次々に逮捕していくことは可能だろう。しかし、それにはやはり時間も人手もかかる。効率が悪い。だから見せしめをして自主返還をさせるというわけだ。そして、逮捕と自主返還の違いは「返ってくるお金」にも関わってくる。

 先程も述べたように、給付金の意義は社会全体でのお金の流通を図ることだと考えている。
 あの当時は、審査時間を惜しんで配布を優先したが、税金が原資である給付金は適切に流れた方がいいのは言うまでもない。そして、今後の事も考えると間違ったところに流れていったお金は回収した方がいい。ということになる。

 つまり、逮捕なんかしてお金が返ってこないリスクをとるよりも、「逮捕しないから金返せよ」というある種の司法取引を持ちかけた方がよいということだ。そして、この方が日本全体にとって益があると判断しているということになる。

 もちろん、罪を犯したものを放って置くことに違和感を覚えるのは分かるが、信号無視やDVや著作権違反を見つけるたびに通報したり逮捕だなどと喚いたりすることもないだろう。状況や悪質性を鑑みて対応方法を決めるのは、何もおかしなことではない。
 この給付金は、犯罪者予備軍を捕まえるためのおとり捜査が目的ではないのだから。


 そういえば、4630万誤送金事件も記憶に新しいだろう。あれに関しても、大部分が返金……いや、一企業から補填されたのは奇跡に近いことだ。逮捕したらお金が必ず戻ってくるわけではないのだ。

 ただ、暗号資産に変えていたり海外に送金しているような輩であれば、この不正受給においても返還は期待できないだろうから、どんどん見せしめ逮捕していって良いようにも思う。
 罪を犯したものを漏れなく全員捕まえることよりも、今後罪を犯させないように戒めることの方が重要だからだ。
 もちろん、「漏れなく逮捕した」事実のほうが今後の抑止力として働くのは理解できるが、実現度と優先度を考慮すると、この対応で良いと私は考えている。


 また何時このような災禍に見舞われるかは分からない。その時にも、こういった給付金が迅速に配布できるように、そして出来るだけ正当な配布に近づけるように、問題意識をしっかりと持つことが我々の責務なのかもしれない。そういう意味で、冒頭の意見が出てくるのもまた、実に有益なことであると思う。


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