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【ホラー小説】人がこわい 1648字【ショートショート】

トンネル

進んできたトンネルを戻ろうと引き返していると、出口(来た時の入り口)が見えてきた辺りで光のようなものがみえた。

いや、ちがう……光のようにみえたそれはあかりではなく、実際に白いのだと気づく。

戦慄した。

背中を汗が流れる、トンネル内の反響音が嫌に響く。

来た時には確実にいなかったであろう白い服の女がトンネルの入り口に立っていた。

ここからまだ距離は300メートルほどある、白い服の女は動く様子はないが表情は窺(うかが)えず何を考えているのか知ることの出来る余地はない。

異様に長い黒髪と俯(うつむ)いた顔だけが不気味にみえている。

今すぐ危害を加える気は無いのか、だったらひとまず安心かと心を落ち着かせていた時に気づいてしまった。

僕がここに立ち尽くしてそろそろ10分ほどが経過していたことに。

やばい。

これはやばい。

今はもう丑三つ時にも差し掛かろうという時間だ、にも関わらず女性が一人で備え付けの照明しかないトンネルの入り口で10分もこちらを向いて立ち尽くしていたのだ。

もはや異常としか言いようがない。

もしここで僕が引き返してもこのトンネルの反対側は山に繋がっていて、到底ふつうの人には進むことができない。

仮に山に入ったとしても僕の泊まっている民泊とは正反対だ、山の中で寝ずに夜を過ごすなんていろんな意味で不可能だ。

そうこう考えている間にまた5分が経過する。

ああもうなんで目の前の女性はまったく移動しないんだ。

目的もなくここにいるのか、怖すぎる。

ああ駄目だ、トンネルの反響音がだんだんと女の笑い声にきこえてくる、そんな筈ないんだ。


僕は意を決して白い服の女ほうへと歩き出した。

彼女はまだ動かない。

だんだんと近づいていく。

まだ動かない。

近づいていく。

ああそろそろ目前と言って差し支えのない距離、あっ。

彼女が動いた、噓でしょ。

ゆっくりと顔を上げ。

僕と目があった。

さすがに心臓が凍りつく。

だってここまで微動だにしなかった彼女が動いたのは、僕が近づいたからで。

つまりは明確に彼女の目的は僕自身にあったのだと照明されてしまったように感じたのだから。

彼女の目をみてしまった僕は、しかし想像していたのとはすこし違った感情を抱いた。

彼女の表情事態は意外にも無表情で、あと顔の作りが端的に言ってとても整っていた。

でもこの人が急に笑ったらすごく怖いんだろうなとも思った。

この人の感情は機能しているのだろうか。

トンネルの外まであとすこしなのだけれど、このまま彼女の隣を通り抜ける勇気も湧かず、もうなるようになれの精神で僕はトンネルの入り口に立ち尽くす彼女に話しかけた。

「あの、どうかされましたか」

滑稽な台詞だ、この状況、どうかしてるにきまってるのに。


後書き

「楽しんでいただけましたか?


後書きのあとがき

ここまで読んでくれてありがとうございます。

これ読み手が怖くない視点の一つとしてみるのなら、主人公(僕)はトンネルで肝試(きもだめ)しをしていた時に、知人に悪いドッキリを仕掛けられ、とっても美人のお姉さんに手酷くおどろかされてしまった酷い話みたいなものなんです。

だからこのお姉さんと次に会うのは二人のデートの日で、今度は街でタピオカジュースとか飲んでるお姉さんのかわいらしい一面をみることになるかもしれません。(でもやっぱりそれ以上に主人公が危ない目に合う不安な未来しか書き手の私にはなかなか想像できないです……)

2022/5/13 追記 タピオカジュースのおねえさん、などを書きました

あと書いてる私は危ないところや怖いところには行ったことないしこれからも行きません。行き過ぎたドッキリも危ないです、やっぱりこの後書きのあとがきも怖い話ですね。みなさんは安全に気を付けて自分も周りも大切にしてください。

2022/9/14 追記 新たにタグ付けしました。本文1400文字切りかねないので怪しいのですが、足せるものでもないのでタグ付けお許しください(怖いですね、怒られたりはしないか)

それでは、読んでくださりありがとうございました。