【小説】夢見てたら醒めなくなっちゃって 944文字【ショートショート】

ぼくは眠るのが怖かった。
だって、眠るのって不思議なんだ。
ぼくはいつも起きている、学校へ行って
ともだちと遊んで、授業を受けて勉強して
給食を食べて、授業を受けて
ともだちと遊んで、勉強して
布団に入る。
布団に入ると、眠るんだ。
眠るってなんだ。
寝て起きたら、時間が経っている。
ぼくが寝ている間、勝手に時間が消し飛んでる。
ぼくの人生の連続性が、ぼくの知らないところで
勝手にに繋ぎ合わされてる。
もしこれが、何かの間違いで
眠りと起床が繋ぎ合わされなくて
ぼくは眠ったまま起きなくなってしまったら
……ぼくが寝ている間、僕の意識はどこにいってしまうんだ。
眠るのは、まるで毎日×んでいるみたいだ。
ぼくは夜、眠るのが怖かった。

「なんてこと子供の頃思っててさ」
「えー、意味わかんないけどー」
「そうかな」
「眠かったら寝るだけじゃん」
「まあね」
そんなこといいながら、彼女は眠剤を飲んで、
僕のベッドで眠ってしまった。

「んー、今何時ー?」
薄暗い部屋に、モニターのあかりだけ光源となってる僕の部屋。
「2時」
「まじー?てか目ぇ悪くなるよー」
「電気つけるわ」
モニターから目を離さず、リモコンに手を伸ばす。
「……」
「なにやってんの?」
「モ〇ハン」
「面白い?」
「まーまー」
「やめたら?」
「むーりー」
「うっざー、アタシもやる」
「ハードないけどー」
「えー、意味わからん用意しとけし」
「んー」
「まあ持ってきてんだけどね」
「あっそ」
「このあとクエ貼ってい?」
「himeちゃんかよ」
「姫だけど?」
「ふふっ」
そうじゃなくて、だけどさ。
「はあーっ、……なんか元気だね」
「うん」
一割負担で貰った向精神薬と鎮痛剤を
70円のコーヒー牛乳でかっ込む程のしあわせに浸る僕と
昼間に眠剤で寝て夜中に人のベッドで起きる彼女。
一体どちらが夢を見ているのかわからないが。
朝になったら彼女は部屋を出てって、日が暮れる前に帰ってきたり、帰ってこなかったり。
僕は真昼間まっぴるまからカーテンを閉め切った部屋で、
今日も力尽きて、×んだようにねむる。

続かない
つつがなく
ねむる。

「快楽の為にクスリを使っちゃダメでしょ、ロクなことにならないよー、あたし?あたしは寝てるだけだから、なんもたのしくない、寝れないから飲んでるだけ」

僕は夢を見る虫だった。
おくすに夢虫むちゅう