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【読書感想文】殺人出産

先日読んだ『コンビニ人間』が面白かったんです。

なので、村田沙耶香さんの本をいくつか読んでみたいと思って今回、選んだ本はこちらです。

村田 沙耶香

殺人出産


殺人が犯罪という時代は終わり、「人を10人出産すれば、1人殺せる」というルールが存在する時代の中でこの物語は進む。人を殺したいがために人を産み続けるという「産み人」に10代からなった姉、「産み人」の制度は誤りであり元の世界に戻るべきだという会社の同僚、「産み人」の制度は素晴らしいという価値観で育った親戚の小学生。様々な価値観を持つ人が混じる中で、主人公はどんな風に生きていくのか。というストーリーになっている。

正直、グロテスクなシーンが苦手な私にとって、後半は読むのがきつかったというのが正直な感想だった。ただ、この作品でメインとなる「人を10人出産すれば、1人殺せる」というルールが導入されるに至った背景などがあまりに現代社会の課題とマッチしていて変にリアリティがあった。そして、そのルールがあるという事は、突如自分が殺されるという事でもあるのだが、それがまた読んでいてスリリングだった。


この小説は、他にも短編小説が複数収録されていた。

男女2人ではなく、男女3人で交際する事が当然になっている世界で生きている高校生の話。

性行為をしないことを前提に入籍したが、子供が欲しいので、性的快楽を感じずに出産を試みる夫婦の話。

などがあった。


全ての作品に共通して、「有り得なさそうで有り得そう」という世界観が新鮮であることと、「あなたはこの世界をどう思う?」という読者への問いかけを感じた。もしこのルールが日本に生まれたら私はどうしようか。と、いやでも考えさせられた。

というのも私自身、出産願望がなく、私の様な考え方の人間だけが世界中にいたら世界は衰退の一途を辿ることになるのだ。人類の滅亡を防ぐために何かしなければならないと具体的な対策を打つことになったら、倫理感を抜きに効率だけを考えたら、有りだなと思ってしまったからだ。


もし、本当に導入されることになったら、政治家が国民にバッシングされながらも実行されて、いつの間にか生活に馴染んでいくんだろうな。と、思った。

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