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都心だからこそみられる紅葉の風景②向島百花園

前回に続いて紅葉の風景を紹介しよう。11月下旬に行った2園である。葉がかなりいい感じに色づいてきていた。

(3)向島百花園

東京の西側に拠点のある立場の私にとっては、向島は縁遠い地である。東京に長い間住んでいても、山手線の東側にはなかなか行くことがないのだ。ちょうど向島へ行く機会があったので、せっかくだから、ということで行ってみた。

向島百花園へ向かう道はかなりわかりやすい。しかし、その道はかなりうねっており、途中には何本もの細い路地が交わる。そして、百花園の近くで見かけた看板には「ここは標高-1.0m」と書かれていた。さすが墨田区、ゼロメーター地帯ど真ん中。そんな低地に細い路地が入り組み、家々が密集しているあたりが下町っぽさを感じさせる。

向島百花園に入園すると、こちらも向島の街並みと同様に道が狭い。細い道では一人分の道幅しかない。なので、園内の案内図には車いす走行が困難な場所が記されていた。ちょっとした丘が築かれている以外は平坦そのもの。いかに道が狭いかを感じさせる。
(向島百花園のマップは以下のリンクを参照していただきたい)https://www.tokyo-park.or.jp/park/map/01_mukoujima_jp.pdf

園内には俳句などが彫られた碑が数多く置かれていた。かつてこの園内ではサロンが開かれ、そこで多くの句が詠まれたらしい。その名残である。

紅葉はかなりいい感じであった。またススキそして、向島と言えば、東京スカイツリーが近い。紅葉とスカイツリーのコラボレーションが見える庭園。これがこの時期の向島百花園の特徴であろう。

広さはあまりないので、時間をかけてじっくり回ると言っても、30分もあれば回れてしまう。とはいえ、そのコンパクトな庭の中に数多くの植物が植わっており、四季それぞれの風景を彩る。ぎゅうぎゅう詰めな感は否めないが、それもまた下町らしい。かわいらしい庭園であった。

(4)肥後細川庭園

この庭園は早稲田駅の近くにあり、隣にはホテル椿山荘東京がある。山手線の西側エリアは比較的行く機会は多いものの、ここへ行くのは初めてであった。

肥後細川庭園の名の通り、江戸時代の肥後細川家の屋敷として使われていたところである。丘の上には永青文庫があり、細川家が収集した品々が展示されている。江戸が残っている場所と言ってもよいであろう。

庭園の北東側に斜面が広がっているので、午前に行くよりも午後に行く方が、木々の色合いがきれいに見える。

庭園内にある松聲閣(しょうせいかく)は、一時細川家の人々が住まいとして構えたところ。2階から庭を見下ろすと、対岸にある赤や黄に染まった木々が良く見えた。反対に手前側は松が立ち並び、対照的な風景を成していた。ライトアップ用と思われる設備が少々目障りな光景ではあるが、紅葉&ライトアップは定番中の定番、まあ仕方ない。夜はまた違ったきれいさがあるのだろう。

行った庭園はそれぞれにそこでしか見られない特徴のある光景が広がっていた。モジュールでは作れない美しさがそこにあった。それらはすべて100年を超える長い期間をかけて築かれてきた風景である。そしてこれからの100年も木々の成長とともに存在し続けるであろう風景である。

これらの庭園ができたときの風景はどうだったのだろう?そして、100年後の風景はどうだろう?庭園を巡ることは長い歴史を辿ること、歴史が紡ぎだしてきた風景を堪能することと言っても良いかもしれない。

庭園は、それを造営してから木々の成長に合わせて、風景が大きく変わっていく。今、私たちが見る風景は造営当初のものでは決してない。そして、100年後の子孫たちが見る風景も同様だ。だが、それぞれに良さがある。

短期的な視野で物事を考えがちになっている現代人に長期的な視点で物事に取り組む大事さを教えてくれる、そんな美しい風景、それが庭園なのかもしれない。

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