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駒場巡り②―旧前田侯爵邸―

日本民藝館を訪れた後に駒場公園へ行った。この公園は非常に大きい。約40,000㎡あるらしい。公園になる前は個人宅だったというのだから驚きだ。建てられた当初の駒場はまだ開発が進んでいなかったエリアなのかもしれない。それでも首都の近郊にこれだけの邸宅を構えられるというのは驚き以外の何物でもない。

元の住人は旧加賀藩前田家15代目の前田利為だ。加賀百万石というだけあり、駒場に移転する前は本郷にあり、駒場の土地は東京帝国大学(現東京大学)と交換したものらしい。東大の本郷のキャンパスも結構な広さだが、にわかには想像しがたい。ちょっと規模が大きすぎる。。。

侯爵邸は和館と洋館の2つがある。

和館はトップに載せた画像が入口になっている。いい門構えだ。だが、この門は駒場公園内にある。つまり、前田家の所有地だった頃はおそらく敷地内にこの門があったのだろう。敷地内に門構え。俄かには想像がつかない。

和館に入ると、部屋がとにかく広い。20畳くらいの部屋が2間続きなのだ。廊下も幅が1.5畳ほど。大広間の広さはともかく、この廊下だけでも、十分に一部屋になりそうな幅だ。だが、落ち着いた空間だ。装飾も豪奢ではあるが、主張はあまりない。よくよく見れば欄間のデザインなど、非常に手が込んでいる。それでもギラギラした感じはしない。むしろ縁側から見える日本庭園の風情を見ると、ここで「ちょっとお茶を一服でも」なんてあったら、さぞいいだろうと思える雰囲気のいい建物だ。

洋館は住居・仕事場・賓客のもてなし、全てを兼ね備えていたようだ。和館は一見質素に見える造りの中にあるスケールの大きさに驚かされるのに対して、贅の極みともいうべき設えだ。部屋の天井の高さ、壁材の重厚さ、東京にいるとは思えない窓、そして、結婚式場か劇場かと思えるようなエントランス。どれをとっても生活感を感じられるものではない。

生活空間であることを除けば、賓客をもてなすには絶好だろう。どれもこれも選りすぐられた品々が並ぶ。食堂から見える光景もさぞ素晴らしいものだっただろう。現代では数百人が花見やバドミントン、その他の遊びに興ずることができるだけの十分な広さの芝生が広がっていた。

ちょっとばかり面白いのが、長女の居室だ。そこだけ、壁紙に蝶が描かれているし、全体的にポップなのだ。どれもこれも贅を尽くした環境にふと華やかでありながらも、落ち着ける生活空間のような場所が広がっている。もっとも、建物そのものの構造は変わらないので、天井の高さや窓の大きさ、壁紙以外の設えは落ち着くには程遠いレベルの豪奢さなのだけれども。

公園になる前の豪邸と呼ぶのも申し訳ないくらいの豪邸に住んだり、働いていた人々、そこを訪れた賓客たちのことを思いながら、様々な部屋を見て回れた。加賀百万石おそるべし。

そして、これだけの邸宅を維持管理しながらも、見学者を入館料を取ることなく迎え入れてくれる。見学が終わった後は芝生でのんびりしても良いし、公園内を散策しても良い。面白い公園だ。

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