スポーツ観戦雑記録―ゴール「目前」での悪夢ー

北京オリンピック、色々なトラブルはあるものの、世界記録にどんでん返し、多くのドラマを魅せてくれている。個人的にはクロスカントリーやスピードスケートなど、国内でW杯を観戦するのが困難な競技を観られるちょうどよい機会なので、かなり観戦している。大体以下の通りだ。

・ノルディックスキー(ジャンプ・複合・クロスカントリー)
・スピードスケート
・スキー、スノーボードクロス

国内の選手が出ている競技だと印象的なのは女子パシュート・女子マススタートかもしれない。ゴール直前での転倒。出来事としては仕方ないが、それまでの準備の過程を考えるとご本人にとっては大変な悪夢であっただろう。だが、観戦した一個人としては素晴らしい白熱したレースであったように思う。そうでなければ、あのようなドラマがあっても印象には残らない。

最終周回、それも最終コーナーでのドラマは人々の印象に残る。たとえば、2002年のショートトラックではApollo Anton Ohnoらの転倒により、オーストラリアのSteven Bradburyが勝利。南半球に初めての金メダルがもたらされた。中継は見ていなかったものの、テレビで繰り返し放送されるだけでなく、冬のオリンピックの名場面の1つになっている。もっとも、あの後ショートトラックはルール変更が行われ、あのシーンの再現はもう見られない(リスタートになる)らしい。

オリンピック以外では、2012年のIndy500(アメリカの自動車レース)でのJ. R. Hildebrandの最終コーナーで勝利を逃すクラッシュが似たような場面で思い出される。Indy500といえばアメリカでは5月最大のイベントとも言い切っても良い、それくらいのイベントだ。2.5マイル(約4km)のオーバルサーキットを200周する。アクセルは基本全開。予選では1周あたり230マイル/h(約370km/h)ほどの時速でマシンが走行する。レース中も220マイル/h前後であり、この速度を上回るレースはドラッグレースくらいだろう。とにかく速い。新人ドライバーが勝てる機会は少なく、過去50年で3回しかない。

2011年のHildebrandは新人ドライバーでありながら、最終週をトップで入り、勝利目前であった。しかも、2位のDan Weldonとの差も十分であったので、すごい瞬間が見られそうであった。だが、最終コーナー、ターン4で外に膨らみ、クラッシュ。Weldonに抜かれ、2位フィニッシュ。誰もが予想だにしない結末を見た瞬間であった。Weldonは個人的に好きなドライバーだったが、その年のIndy500はその出来事ばかりが記憶に残っている。

これらの出来事は当事者にとっては悲劇だろう。だが、いずれも全開を超越したところでの極限状態でのプレー中だ。何が起きても不思議ではない。そのプレーそのものがファンを魅了し、その舞台に立ちたいという子供たちの夢につながるのだろう。結果的に敗者となってしまったかもしれないが、最大級の賛辞を贈りたい。現役選手の場合は、その選手たちの勝利を願いたいものである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?