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都心だからこそみられる紅葉の風景①旧古川庭園、小石川後楽園

11月も下旬になり、都心まで紅葉前線が南下してきた。青山や丸の内の木々も晩秋の色合いを魅せている。もともと、紅葉を見に行く習慣はないものの、たまには見に行ってみようということで、今月は数か所の庭園に行って紅葉を見てきた。

(1)旧古河庭園

駒込駅から王子方面へ10分ほど歩いたところにあり、急傾斜地をうまく活かした庭園づくりがなされている。崖の上には洋館とバラ園(洋風庭園)、下には和風庭園が広がっている。

行った時は11月中旬になろうかという時期であったこともあり、紅葉そのものはまだまだ始まったばかりであった。むしろ、色とりどりのバラが咲き誇る、そんな様子であった。それでも、ハンノキだけは鮮やかな朱に染まっており、和風庭園を賑わせていた。

旧古川庭園と言えば、やはりジョサイア・コンドル設計の洋館だ。追加料金はかかるものの、中に入らない手はない。細部までこだわった装飾がなされた1階を巡っていると、和のテイストがないように見える。庭は洋風庭園、洋間を彩る装飾もバラを中心とした洋風のデザインになっているのだ。

しかし、2階に上がると風景は変わる。和のテイストがふんだんに盛り込まれているのだ。行った時には蔵にあたる部分であろうか、そこでコンドルの著書2冊に記載されたスケッチが紹介されていたり、別の部屋では浮世絵が展示されていた。2階はあまり自由に見られる場所は多くないが、おそらくここからは和風庭園が見えるだろう。和と洋、それぞれのテイストを上手に住み分けさせた面白い庭園、そして建築であった。

(2)小石川後楽園

水戸徳川家の中屋敷に造られた庭園であり、水戸黄門でおなじみの水戸光圀の時代に完成した。きれいに晴れ渡った昼下がりに飯田橋駅側の入口から庭園へ入ると、まさにここでしか見られない風景が広がっていた。

借景が東京ドーム、良いかどうかは別として、このような雰囲気の借景はここ以外では見られない。まさに現代の小石川後楽園を象徴する場所であろう。

園内には石造アーチ橋としては国内で最も古い部類に入る円月橋、そして、そこを流れる小川が都心を流れる渓流となって、池に水を送っている。渓流沿いは赤く色づいた葉が陽光を浴びて透き通るような色合いを出していた。奥にビルが見えなければ…」と何度も言いたくなるが、ここは都心のど真ん中。むしろこんなに良い雰囲気の庭園が広々と残っていることを喜ぼう。

池へ行くと、水辺では多くの鴨が水と戯れたり、陸に上がって休憩したりしていたが、陸では庭園を見て回っている人がちの足音が響くのだろう。人が通るたびに池に向かってダイブする鴨が続出していた。彼らのような住人にとっては見学者は異邦人。恐怖の対象でしかないのだろう。あまりピリピリさせるのもかわいそうなので、静かに横切ることにした。

右上にある小道を人が歩くたびに陸から池へ鴨がダイブ

和風の庭園と言えば、やはりを中心にしつつ、その周囲にある木々の色合いを見ておきたい。何より、池に反射する木々、その風景が良いのだ。当日は風が穏やかな日ではあったものの、どの位置から撮っても、水に反射する紅葉をうまく写真に納められない。水鳥などが多く生息しているこの庭園ではどうしても微細な波が立ち続けるのだ。きれいに反射しない反面、水面に写る木々や雲の情景はまるで印象派の絵画のようでもある。これはこれでアリ。動植物のコラボレーションが織りなす風景。飽きの来ない良い風景であった。

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