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わたしの日本語教師物語14~養成講座の担当になる!

2003年の年末、私はS子先生に呼ばれました。何だろうと思って伺ってみると「ねえ、なかやまさん、こんど養成講座をやってくださらない?」と。それまでも養成講座で中級の実習などの授業を担当していましたが、そうではなく養成講座自体を担当せよと。わ、わたしで務まるでしょうか?との不安もありましたが、S子先生のご用命とあればお断りすることはできません。
実は、それまで養成講座を担当されていた方が辞めることになり、担当者が必要になったのです。私一人で担当するわけではなく、もう一人の専任の先生と一緒ということでした。(私もその頃は半分専任のような形で働いていました。)

その頃、S校では420時間の養成講座半年コースが実施されていて、翌年3月まではすでにスケジュールも決まっています。ですから私たちには2004年の4月からの講座のカリキュラムを考えよということでした。更に校長先生から、420時間なんて、けち臭いことは言わず、(とはおっしゃいませんでした、まあそんなニュアンス)ドーンと1年間800時間のコースで、即現場に立てる教師を養成してくれ!と。
は、はぁ~。承知いたしましたーーー。

それから一緒に担当になったK先生と私の勉強開始。ちょうど日本語教育能力検定試験のシラバスも変わり、試験範囲が大幅に増えた時期で、前任者が作ったカリキュラムを基にしながら、どこを拡充していけばいいのかいろいろ調べ、他校のカリキュラムも参考に(^^)。そのシラバスに合わせて、大学からいらしている先生方にさらに講義をお願いしたんです。また、校長の先見の明というか、今から20年近くも前ですが、校長の指示でカリキュラムの中にIT関連の内容を入れました。ホームページの作り方などはウェブデザイナーの方に講師をお願いしました。今の養成講座なら当たり前なんだろうか?その当時はオンライン授業のやり方なんて科目はなかったけど、今担当するなら入れなきゃね。
コースとしては前期が大学の先生などの主に座学、後期が初級から上級、ビジネスクラスに至るまでのきめ細かな教え方の指導と実習でした。その当時の思い出っていうか愚痴だけど、大学の先生方、なかなかメールのお返事を下さらず、講座のスケジュールが組めない~(涙)ってことがありました。

そうやって新しくなった800時間のコースで最初の受講生15名が4月に入学したときは、嬉しかったなあ。その養成講座の第1期の受講生が今や教務主任ですから。私もトシをとるはずよね。

そして、私自身、日本語教育能力検定試験を受けたのは10年以上前のことなので、試験を知るためにも(新シラバスになってることだし)、ここはひとつ受験せねば~ってことで日本語の授業と養成講座の授業も抱えつつ、試験勉強に励むことになったのよ。子どもはまだ4歳。勉強を始めたのは確か5月ぐらいからだったと思いますが、初めはそれぞれの分野の参考書を1冊ずつ読み、ノートにまとめ、各分野の概要を理解したら、練習問題を解いていくスタイル。その後アルクの「合格するための本」をガッツリと。(ヒューマンの赤本はまだございません。今のようなわかりやすいYouTubeもなかった)通勤電車の往復はずっと勉強。家では子どもが寝てから勉強。試験直前の9月は音声を集中的に。
試験の範囲も内容も、私が受けた1990年の検定試験とは全然違っていたので、大変だったけど勉強は面白かったですね。1990年の時は「日本語を英訳しなさい」なんて問題もあったのよ~。

とにかく、養成講座の受講生も受けるので、K先生も私も担当者として落ちるわけにはいきません。そのプレッシャーが結構ありました。受験会場の東大では、養成講座の受講生に会っちゃうし(汗)あー、お昼に何食べたのかな~覚えてないな。前の方に座ってた人がカレー食べてたのは覚えてるけど。

でも、まあ無事合格しました。今でも覚えているのは試験Ⅰに出ていた上野直樹「仕事の中での学習―状況論的アプローチ」の文章がめっちゃ難しくて、ワケワカ~(涙)だったことでおます。
あれ以来、試験は受けていませんが(自腹なので痛い)、一応養成講座の担当者として、毎年の試験問題のデータは作るようにしました。どんな問題が出されているかとかね。このジャンルは数年おきに出ているよとか。こんな出題傾向があるよ~とか。

もう一つ、このS校で、養成講座を修了した後の研修制度も担当しました。これももちろん校長先生の要請ですが。この学校の養成講座は修了生がほとんど同校で教えることになります。その時、800時間の講座を終えた後でも、まだ独り立ちは心もとないということで、授業見学や、教案チェックを受ける研修期間を設けたのです。一人の研修生に一人の指導担当者がついて、丁寧に指導しました。毎月自分の授業を振り返るレポートと授業見学レポートを提出、指導教師の細かいチェックシートとともに、各人のポートフォリオを作りました。指導教師は1か月に1回、研修生の授業を見て、たっぷりフィードバック。あとは自分の研究テーマを持ってもらい、先輩教師の前で発表してもらったことも。
新人教師を育てるのに、結構よいシステムだったと思うのですが、まあまあ規模の大きい学校で余裕があるのでできたことですかね。現在のようにコロナ禍で日本語学校がどこも本当に厳しい状態になってしまうと難しいでしょうか。でも、教師養成ってそのぐらい丁寧にやった方がよいと、個人的には思っているのですよね。

私はその時は指導する立場になっていましたが、養成講座受講生や研修生の授業もね、結構面白いものがありましたよ。あ、これ、いいアイデアだなとか。ほとんどの研修生の授業を見学したので、今思い出してもクスっとしちゃうことも。教師を見ている学生の目もキラキラしてて、それが普通の日本語学校ですよと世間の皆様には言いたいのです。(ネットで日本語学校について酷い書かれようをしていたので、怒っている)

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